「観客の密録」と「プロ収録」。それぞれに違う魅力の録音法の“美味しいどこ取り”をしたライヴ・アルバム、聴いてみたいと思いませんか? 近年ではIEMsによるマトリクス盤が真っ先に浮かぶでしょうが、それより遙か以前から「プロフェッショナルなオーディエンス録音」とでも呼べる音源が(ごく希にですが)あるのです。本作は、名盤「黙示録」時代のTHE MICHAEL SCHENKER GROUPを、そんな“美味しいどこ取りサウンド”で捉えたライヴ・アルバム。本作は大ヒット作「ROCK YOU TO THE GROUND」を最新リマスターで蘇らせた1枚です!「プロフェッショナルなオーディエンス録音」とはどんなものか? 放送局によるマイク録音、ステージ床に貼り付けたマイク録音、メンバーによるミーティング用録音などなど……実は、さまざまなタイプがあります。そんな中で、本作の録音法は「PA卓に置かれたアンビエントマイク録音」。PA卓と言えば、エンジニアが全体の音響をコントロールする“音響の要”です。もっとも音響が良く、バンドの全演奏はおろか、その会場の特性までも一番的確に把握できるポジション。ライヴの本質に迫りながら誰よりも素晴らしいサウンドを独占できる、そんな「会場No.1の座席」のサウンドがギュウ詰めになったのが本作なのです!分類上「オーディエンス録音」とされる本作ではありますが、そのサウンドのクリアさ、全楽器の詳細・克明な鳴りは、客席録音とは一線を画した素晴らしさ。アンプからの出力音がどう会場に響き、観客に届くのか、世界中のテーパーが血眼になって捉えようとするサウンドが、いとも簡単に録音されている。マイク収録の味わい、リアリティを持ちながら、関係者流出の凄味に溢れた録音なのです。そうは言っても、マイクで一発録音されたマスター。マイクの向きがズレたり、音の揺らぐシーンも多少はありました。そういったマスターが持つ欠点もデジタル・リマスターで克服し決定盤に仕上げたのが本作なのです。そんな「客席録音」ならぬ「スタッフ席録音」で完全収録されているのは、全盛期のマイケル・シェンカー。絶妙なタイム感は冴えに冴え渡り、泣きのトーンも繊細を極めている。スタープレイヤーのいないバンド編成は、コージー・パウエル在籍時のようなバトルこそ期待できませんが、そもそもマイケルは外的な“対決”よりも内的な“没入”で輝くギタリスト。「主役は誰なのか」をきっちりと把握し、彼を輝かせる術を知り尽くしているメンバーに囲まれていることが何よりも大事です。特に「UFOよりもMSG」に拘る方なら、この意味を実感していただけるのではないでしょうか。そして、「UFOよりMSG」のもうひとつのポイントは「曲」。グルーヴィなロックロールからシェンカー・メロディが沸き立つUFOも素晴らしいですが、構築感とダイナミズムに特化したMSGの曲は、シェンカー・メロディをダイレクトに主役に据えている。それが次から次へと畳み掛けてくるショウ。これだからMSGのライヴは格別なのです! そして“黙示録ツアー”というのが、またスペシャル。「限りなき戦い」のツアーもMSGの総決算として人気ですが、そこにはいくばくか「陽のメロディ」も含まれています。ところが、“黙示録ツアー”は、徹頭徹尾「陰の真髄」だけがたっぷりと聴ける。すべての曲がキリリと引き締まった構築感と陰の泣きを湛えたショウであり、それが一切の欠けなく溢れて出てくるのです。かの天才ギタリストの全キャリアの中でも、バラエティ豊かな曲をそろえながら深く泣くライヴは類を見ません。しかも、それが「プロフェッショナルなオーディエンス録音」なる極めて特殊な記録法で残された。もちろん、この味わいや真価が分かるのは、シェンカー・メロディに心奪われる感性を持ち、音源マニアの業を背負われた方だけかも知れません。なればこそ、そんな方々は是が非でも聴いていただきたい。
Live at the Gaumont, Southampton, UK 22nd November 1982 PERFECT/TRULY PERFECT SOUND(from Original Masters)
Disc 1 1. Intro 2. Opening SE 3. Ulcer 4. Cry For The Nations 5. Rock You To The Ground 6. Attack Of The Mad Axe Man 7. Feels Like A Good Thing 8. Member Introduction 9. Into The Arena 10. Let Sleeping Dogs Lie 11. Desert Song
Disc 2 1. Courvoisier Concerto 2. Lost Horizons 3. Armed And Ready 4. Doctor Doctor 5. Are You Ready To Rock 6. Rock Bottom Michael Schenker - Guitar Gary Barden - Vocal Chris Glen - Bass Ted McKenna - Drums Andy Nye - Keyboard