ロックファンは“夢”を追ってしまう性を背負ってる。「あのバンドの全盛期がもう一度見たい」「あのギターとあのリズム隊が組んだらきっと凄いぞ」等々、誰しもが思うもの。四半世紀前、この日本までその“夢”を届けてくれたバンドのひとつがANDERSON BRUFORD WAKEMAN HOWEでした。1990年の日本で繰り広げられた“夢”の一夜を甦らせるサウンドボード・アルバムが3枚組CDで登場です!本作は、ABWH日本公演の5日目となる「3月7日横浜文化体育館公演」を収めたサウンドボード音源です。この録音は、以前から「THE MEETING IN YOKOHAMA 」「GONE BUT NOT FORGOTTEN」としてリリースされていましたが、本作はそのリマスターではなく、近年になってネットを介して発掘された新マスター。ヒスリダクションの強かった既発よりも明らかに鮮度が良く、収録時間も長いアップグレード版です! 既発をお持ちの方は「長い? じゃあ既発のカットもなくなってるのか!」と思われるかも知れませんが、残念ながら録音時からのカットだったらしく本作も完全録音ではありません。しかし、今回はカットポイント(「And You And I」の6分台と「Brother Of Mine」の2分台後半)を同じ日本ツアーのSBD「3月4日NHKホール公演」で補い、ライヴアルバムとして一気に聴ききれるように仕上げました。音の輪郭もよりハッキリとして、遙かに自然になったサウンドで繰り広げられるのは、1990年の春に見たあの音そのまま。「Time And A Word」のアルペジオに導かれて歌い出されるジョン・アンダーソンの声の瑞々しさ、ショウのオープニングにして涙が出そう……。この感動は、単にメロディの美しさを超えている。そう、あの日感じた「ついに、この4人が!」の感動です。その気持ちに応えるかのように、ハウ、ウェイクマン、ブラフォード……とソロを繋いでメンバー1人ひとりを確認していくショウ。とてもじゃありませんが、ライヴの前半とは思えない大胆な構成も、「こわれもの」を創った“あの4人”らしくて嬉しかった。歓声がほとんどないサウンドボードは臨場感には欠けますが、細部まで鮮やかな演奏は目も覚めるよう。ピッキングのニュアンスまで耳を澄ませ、ウェイクマンの指先まで目を凝らそうとしたあの日。音の鮮度が格段にアップしたからこそ、あの光景が甦ってくるのです。そして、ショウの中盤には、ついに“夢”が叶った瞬間が訪れます。レコーディング終了と共に脱退し、ライヴで「危機」の曲を演奏することがなかったビル。彼本人が叩く「And You And I」と「Close To The Edge」です! 「イエスソングス」でもビルのトラックは「Perpetual Change」「Long Distance Runaround/The Fish」だけ。あの繊細なドラミングを聴いては思い描いた、“ビルの生『危機』”が目の前に実現した瞬間……。オフィシャル・ライヴ盤もあるABWHですが、本作のテイクは今も忘れない、あの日の演奏です。特に「Close To The Edge」は、代表曲中の代表曲でありながら、日本で披露されたのは初来日以来の17年ぶり。次の機会は今年の「危機/完全再現ライヴ」まで24年間も待たなければならなかったのです。まるで金環日食か彗星のような次元でしか出会えなかった生の超名曲。小鳥のさえずりに目眩を覚えるなか聴いた、ジョンの噛みしめるような「Close、To、The……Edge!」のコール。それがアップグレードしたサウンドボードの耳元サウンドで聞こえてくる……。そして、本作に収められたもうひとつの“夢”、それは5番目の男トニー・レヴィンです。オフィシャル盤「AN EVENING OF YES MUSIC PLUS」のジェフ・バーリンも素晴らしいですが、やはり“夢”に相応しいのはレヴィンでしょう。ビルとのリズム隊は、まさに英国プログレ最強。KING CRIMSONでの2人のコンビネーションはもとより、方やGENESISのスツールに座ったドラマーであり、方やPETER GABRIELの相棒にもなったスティックマンでさえある。その2人がショウを一気に染め変える「Levin/Bruford Duet」が鮮やかなサウンドボードで聴ける。この6分半は、「Close To The Edge」にも劣らぬ本作の目玉です。収録時間が延び、2枚組に収まらなくなった本作は、豪華な3CD仕様。さらに「3月4日NHKホール公演」のサウンドボード音源からクライマックス・パートをボーナスとして収録しています。当時、ビルは「日本で『Close To The Edge』を演奏するなんてあり得ないと思っていたよ」と語っていました。あれから24年、当時は想像だにできなかった“「危機」の完全再現”などという“夢”が叶いました。その2014年に、黄金期の再現どころか、全盛期でも望めなかったビルによる代表曲も甦った。つい1ヶ月前の来日公演と四半世紀前の光景がオーバーラップするメモリアルな決定盤。
Live at Yokohama Bunka Taiikukan, Yokohama, Japan 7th March 1990 STEREO SBD(UPGRADE)
Disc 1 (64:15) 1. The Young Persons Guide To The Orchestra 2. Time And A Word/Owner Of A Lonely Heart/Teakbois 3. Clap 4. Mood For A Day 5. Wakeman Solo(Madrigal/Gone But Not Forgotten/Catherin Parr/Merlin The Magician)
6. Long Distance Runaround 7. Bruford Solo 8. Birthright 9. And You And I 10. Themes 11. Levin/Bruford Duet
Disc 2 (61:38) 1. Close To The Edge 2. Zoh-San 3. The Meeting 4. Brother Of Mine 5. Heart Of The Sunrise 6. Order Of The Universe
Disc 3(72:30) 1. Roundabout 2. Starship Trooper incl. Soon Bonus Tracks NHK Hall, Tokyo, Japan 4th March 1990 3. Close To The Edge 4. Brother Of Mine 5. Heart Of The Sunrise 6. Order Of The Universe STEREO SOUNDBOARD RECORDING