意外と言えば意外ですが、マイク・ミラードとグレイトフル・デッドは縁遠い存在であるように思えました。何しろ彼らには膨大な数のテーパーが付いており、わざわざミラードほどの人が録音に向かうようには思えなかったのです。しかしアルバム「イン・ザ・ダーク」の大ヒット後、アメリカを代表するスタジアム・バンドにまでのし上がった1991年にミラードが彼らのコンサートを録音していた事実が先週明らかになったのは、マニアの間でちょっとした話題を呼びました。しかもそこはマイク・ミラード。彼らの習慣にのっとってテーパーズ・セクションから録音するようなマネはせず、ここでもスタジアムの前列に向かって録音してくれたのです。さすがは孤高のテーパー。ただでさえ音源が豊富なバンドの音源が豊富な時期であり、この日に関してはステレオ・サウンドボード録音さえトレーダー間に出回っています。そんな日だからこそ、むしろミラードの卓越したオーディエンス録音ぶりを見せつける結果とりました。この日のPAアウトのサウンドボードはデジタル時代の録音ということもって、ただでさえ希薄な臨場感がいよいよ伝わって来ない。これがテーパーズ・セクションからの録音であれば臨場感は申し分ないでしょうが、今度は音像に距離感が生じる。そこでミラードはテーパーズ・セクションではなくスタジアムの前方まで突進してくれたのです。これによって音像がオンになっただけでなく、テーパーズ・セクションからの録音やPAアウトのサウンドボードでは到底捉えられないであろう、デッドのコンサート本来の盛り上がりをちゃんと捉えている。彼らのコンサートの客席前方はそれこそデッドヘッズが大いに盛り上がりを見せていた訳で、ミラードが録音を前方の席から敢行してくれた意義は非常に大きい。確かに盛り上がっている分、周囲の会話も拾っているのですが、むしろそれがデッドのコンサートらしくて楽しいのです。だからこそミラードも開き直ったのか、いくつかの曲間では同行した友人と喋っているのがまた面白い。この友人こそ、最近のミラード音源の公開に際してエピソードを明らかにしてくれているロブという人物その人。アンコール前では彼とミラードが談笑する場面まで捉えられているのも貴重かと。そしてロブ自身、今回の音源に関して周囲の音も拾いつつも、それでいてテーパーズ・セクションから録音やサウンドボードよりもはるかに楽しめる…と絶賛しています。となれば初のグレイトフル・デッド音源のリリースとしてこれほど相応しいものはないでしょう。このショーは一昨年オフィシャルでリリースされたジャイアンツ・スタジアムの二週間前ということもあり、演奏内容も素晴らしい。一年前にキーボードのブレント・ミッドランドがコカイン中毒で急死したのを機に、ジェリー・ガルシア以外のメンバーがクリーンになった成果の表れか、デッド往年のイメージと違ってライブ演奏が非常にタイト。彼らと言えば「サイケでルーズ」というイメージが好き嫌いを分けがちですが、そんなイメージを抱いてる人にこそ聞いていただきたい傑作録音。おまけにミッドランドの後任として、懐かしのブルース・ホーンズビーがサポートでキーボードを弾いていた時期ですので、それもまた演奏の親しみやすさが増しています。そして随所でデッドヘッズの合唱が起こる場面を捉えているのがミラード録音ならではの素晴らしさで、アンコール前に披露されたバディ・ホリーのクラシック「Not Fade Away」の後半では見事な観客との掛け合いの盛り上がりが最高。そのリアルな盛り上がりはサウンドボードやPAアウトのサウンドボードの比ではありません。ミラードはデッドを録ってもさすがのクオリティ!Los Angeles Memorial Coliseum, Los Angeles, CA, USA 1st June 1991 TRULY PERFECT SOUND
Disc 1 (68:18) 1. Intro 2. Shakedown Street 3. Walkin' Blues 4. Bertha 5. Greatest Story Ever Told 6. Candyman 7. Queen Jane Approximately 8. Deal Disc 2 (44:04) 1. Intro 2. Picasso Moon 3. Foolish Heart 4. Playing In The Band 5. Uncle John's Band
Disc 3 (61:00) 1. Drums 2. Space 3. I Need A Miracle 4. Black Peter 5. Throwing Stones 6. Not Fade Away 7. One More Saturday Night Jerry Garcia - lead guitar, vocals Bob Weir - rhythm guitar, vocals Vince Welnick - keyboards, vocals Phil Lesh - bass, vocals Bill Kreutzmann - drums
Mickey Hart - drums Bruce Hornsby - keyboards, vocals