ボブ・ディランがビッグ・バンドを結成して行われた1978年のワールド・ツアーは日本を皮切りに始まり、そのままオーストラリアを回ったのがファースト・レグでした。その後アルバム「STREET LEAGAL」のレコーディングを挟んでヨーロッパを回るセカンド・レグが始まりますが、その皮切りとなったのはロンドンのアールズ・コート。そう、ZEPやフロイドを始めとした錚々たるアーティストがコンサートを開いたあの会場です。ディランも1966年以来のイギリスでのコンサートを開くにあたり、この会場を選択しました。しかもアールズ・コートでの公演は六夜連続というもので、イギリスのファンを大いに熱狂させました。これらの公演からは最終日6月20日の公演がその名も「EARL'S COURT」というタイトルのLPが速攻で当時リリースされたことがよく知られています。しかしその他はCDを含めても18日の公演が「TALES OF YANKEE POWER」としてリリースされただけ。由緒ある会場で大規模な連続公演が行われた割には不遇の扱いだとしか言いようがありません。この後に行われたパリ公演の方が音源に恵まれていることもあり、いくつものアイテムがリリースされていたのと比べて何とも対照的な状況が現在まで続いていました。そこで今回、完全初登場であるアールズ・コート6月19日公演の音源のリリースが実現します。ZEPの録音などを聴かれた方でしたらば解るかと思いますが、この会場でのオーディエンス録音は一歩間違えると深いエコーに包まれた状態へと陥ってしまう場合があります。しかしこの録音は驚くほどのクリアネスとオンな音圧で演奏の迫力をしっかりと伝えてくれる素晴らしいもの。それほどの極上音源がこれまで音盤化されなかったのには、マスターの経年劣化から引き起こされたステレオ録音の揺れが原因だったのだと推測されます。その状態を今回はレストアし、元の音源の状態をクリーンアップしています。元々クリアネスが抜群の録音ですので、モノラルに変換すると揺れはすべて解消されますが、その代わりに豊かなクリアネスが一気に狭められてしまいます。そこで大きな乱れがある個所をレストア、ステレオのままで出来る限り安定した状態へと補正しています。最も大きなダメージがあった「Just Like A Woman」2分50秒辺りでのドロップアウト以外はかなりの修復を遂げてみせました。そんなクリアネスでプレイバックされた78年アールズ・コートにおけるディランのステージは実に素晴らしい!78年ツアーに関してよく指摘されることですが、オフィシャル・ライブ・アルバム「AT BUDOKAN」よりも、ヨーロッパ・ツアー以降でディランの意図したビッグ・バンドの本領が発揮されたのは明らか。それはオープニングに演奏されたブルース「Love With Her Feeling」のカバーを聴くだけでもはっきりと感じられるはず。日本とオーストラリアを回ったバンドがさらなるまとまりをみせ、勢いと余裕のある演奏を聴かせてくれるのです。それに加えてレコーディングしたばかりの「STREET LEAGAL」から早くも「Baby Stop Crying」と「Senor (Tales Of Yankee Power)」もレパートリーに加えられています。どちらの演奏も丁寧ながらフレッシュな雰囲気に溢れた演奏であり、アルバム・リリース前ならではのものでしょう。そしてこのツアーと言えばディランがビッグ・バンドを従えて歌うというエンターテイメント路線が前面に押し出されたもの。ディランも「Just Like A Woman」では演歌ばりに(笑)こぶしを聴かせてくれるほどに歌い上げてくれます。そんなエンターテイナー・ステージの完成形がアールズ・コートで披露されたことから、ロンドンの観客は大熱狂。アンコールの合間では興奮した女性による「we want Dylan!」の叫びが何度も繰り返されるという場面も登場。あまりにも耳に残る場面ですのでそこもトラックの一つとしてクレジットしました。Live at Earls Court, London, England 19th June 1978 TRULY AMAZING/PERFECT SOUND
Disc 1 (63:58) 1. Introduction 2. A Hard Rain's A-Gonna Fall (inst) 3. Love Her With a Feeling 4. Baby Stop Crying 5. Mr. Tambourine Man 6. Shelter From the Storm 7. Love Minus Zero / No limit 8. Tangled Up In Blue 9. Ballad of A Thin Man 10. Maggies Farm 11. I Don't Believe You
12. Like A Rolling Stone 13. I Shall be Released 14. Going, Going Gone
Disc 2 (70:32) 1. Rainy Day Women #12&35 (inst) 2. One of Us Must Know (Sooner or Later) 3. You're A Big Girl Now 4. One More Cup of Coffee (Valley Below) 5. Blowin' In The Wind 6. I Want You 7. Senor (Tales of Yankee Power) 8. Masters Of War 9. Just Like A Woman
10. To Ramona 11. All Along The Watchtower 12. All I Really Want To Do 13. Band Introductions 14. It's Alright Ma (I'm Only Bleeding) 15. Forever Young 16. “We Want Dylan!” 17. The Times They Are A-Changin'
Bob Dylan - Vocals & Guitar Billy Cross - Guitar Alan Pasqua - Keyboards Steven Soles - Guitar & Backing Vocals David Mansfield - Violin & Mandolin Steve Douglas - Horns Jerry Scheff - Bass Bobbye Hall - Percussion Ian Wallace - Drums
Helena Springs - Backing Vocals Jo Ann Harris - Backing Vocals Carolyn Dennis - Backing Vocals