1980年代前半のアメリカにおける様々なアーティストのステージを捉えた「Two Of Us Master」シリーズの最新作はデヴィッド・ボウイ1983年7月20日のフィラデルフィア・スペクトラム。83年のシリアス・ムーンライト・ツアーにおいて同アリーナでの公演は都合三回行われ、初日がやはり「Two Of Us Master」チームによって録音された音源が昨年の夏に公開されていましたが、今回は最終日である20日が登場。音質が非常に素晴らしく、ボウイの声を中心としてかなり大きな音像で捉えられている。そこに輪をかけて魅力となっているのが、嫌味のないバランスで捉えられたこの日の凄まじい盛り上がり。とにかくオープニングから盛り上がりまくっており、まるで三日連続で行われたスペクトラムでの日々をフィラデルフィアの人たちが心から惜しんでいるかのようですらある。奇跡的なのは、それだけ会場がフィーバーしておきながら、「Two Of Us Master」チームの周辺で奇声を上げる観客が皆無であったという。シリアス・ムーンライト・ツアーと言えばそれまでのボウイ過去のナンバー以上に大ヒット・アルバム「LET’S DANCE」収録曲での盛り上がりが印象的だったのですが、この日など正に同アルバム収録曲、タイトル曲に「China Girl」、そしてフィナーレ「Modern Love」で迎える盛り上がりが凄まじく、いかに83年のボウイが熱狂的な人気を誇っていたのかリアルに伝えてくれるドキュメント。それに三日連続で行われた公演の最終日であり、初日は「Modern Love」ミュージック・ビデオ用の撮影などもこなした後ということから、文字通り解き放たれたかのようなボウイの熱唱ぶりが「Cat People (Cat People)」でありありと伝わってくる。そもそもフィラデルフィアの前にシリアス・ムーンライト・ツアー7月のアメリカン・レグ永遠の定番であるモントリオールをこなした後ですので、バンドやボウイのコンディションが悪いはずがない。惜しむらくはこの日の「Two Of Us Master」チームがテープの節約を踏まえて一時停止ボタンを押しながら録音していたこと。おかげでタイミングを逃してしまった「Life On Mars」に「Fame」などでは録音開始がイントロや歌い出しに食い込んでしまいましたし、「Golden Years」ではアリーナのおしくらまんじゅう状態の中で誤って一時停止ボタンに触れてしまったようなカットも生じてしまった。当然ながら曲間のカットも頻繁に起きている。逆にそれらの問題に目をつぶっても聞き応えのある音源だということ。モントリオールやフィリー初日のような映像収録という目的がない分、ボウイがのびのびとパフォーム出来ているのが音からだけでもはっきりと伝わってくるという。ライブ終盤「Stay」における白熱した盛り上がりは筆舌に尽くしがたいほどで、掛け値なしにシリアス・ムーンライト・ツアー7月の中でも屈指の名演だと断言いたしましょう。他にも名盤に君臨している7月後半のデトロイト「SERIOUS MOONLIGHT TOUR IN DETROIT」など音源にも恵まれた時期である訳ですが、そうした中でも先に触れた録音のトラブルに目をつぶって余りある内容と音質を誇るオーディエンス・アルバム。ボウイの熱演と凄まじい熱狂が包み込むようなバランスで捉えられた傑作録音!The Spectrum, Philadelphia, PA, USA 20th July 1983 TRULY PERFECT SOUND
Disc 1 (54:36) 1. The Jean Genie Intro 2. Star 3. "Heroes" 4. What In The World? 5. Golden Years 6. Fashion 7. Let's Dance 8. Breaking Glass 9. Life On Mars 10. Sorrow 11. Cat People (Cat People) 12. China Girl 13. Scary Monsters (And Super Creeps) 14. Rebel Rebel
15. White Light, White Heat
Disc 2 (52:30) 1. Station To Station 2. Cracked Actor 3. Ashes To Ashes 4. Space Oddity 5. Band Introductions 6. Young Americans 7. Fame 8. TVC15 9. Stay 10. The Jean Genie 11. Modern Love
David Bowie - Vocals, Guitar, Saxophone Carlos Alomar - Guitar Earl Slick - Guitar Carmine Rojas - Bass Steve Elson - Saxophone Lenny Pickett - Saxophone Stan Harrison - Saxophone Dave Lebolt - Keyboards Frank Simms - Backing Vocals George Simms - Backing Vocals
Tony Thompson - Drums