かつてジョン・ウィザードが録音していた音源の公開は今年のビンテージ音源発掘のメインストリームになりつつありますが、今回アップロードされたのは1978年のエルヴィス・コステロ&アトラクションズ。この年の彼らはアメリカをツアーしまくって人気を確固たるものとし、プロモーションを兼ねて多くのライブがラジオで放送された印象が強い年。挙句の果てにはオフィシャルでもエル・モカンボにワシントンといった具合でライブ音源の充実した印象を与える時期かと。ところが本当にラッキーなことに、ジョンが録音してくれたのは正にレアなセットリストの一日。基本78年のライブはコステロ最初の二枚の収録曲がメインであり、その構成でアメリカをくまなく回ることで上半期だけでも大きな人気を獲得できたほど。そこでコステロはサードアルバム「ARMED FORCES」に収められる新曲をこの年二度目のアメリカ・ツアーから徐々に投入し始めます。そうした中で一気に同アルバム用の新曲を演奏してみせたのがジョンの録音してくれた今回のサンタモニカでした。そもそもライブの二曲目で早くも「Pump It Up」を披露してしまうのがこの時期ならではの展開ですが、同曲がシングルで出された際のカップリングだった「Big Tears」など、リリースされて間もない新曲を連発。その波に乗って最初に披露された「ARMED FORCES」収録曲が「Living In Paradise」。既に前年からステージで試されていた曲ですが、ここに来ていよいよ同アルバムのアレンジで披露されている点に注目。一方で一週間後のハリウッドのオフィシャル「LIVE AT HOLYWOOD HIGH」で聞かれた同曲と比べるとより初々しい演奏ぶり。それ以上に驚かされたのが「Busy Bodies」。こちらはなんとライブ初演。やはり「ARMED FORCES」のアレンジが完成しつつ、それでいて非常に慎重な演奏ぶり。本曲はライブ演奏自体が希少であり、そうした中でジョンが極めて貴重な初演を捉えてくれたのはラッキーだったとしか言いようがありません。そしてもう一つの新曲「Goon Squad」も4月から徐々に演奏され始めたレパートリーで、これまたアレンジが固まってきた様子が解ります。このようにリリース前の新曲が大胆に投入されたことで非常にバラエティに富んだセットリストへとバージョンアップした貴重な一日のドキュメントであり、全体を通して突っ走り過ぎず丁寧に演奏しているのも印象的。もっとも当時のジョンはイギリス、アメリカ問わずニューウェーブなアーティストを録ることにご執心で、コステロのレアなギグを録ったという意識はまるでなかったはず。それどころか、この音源が当時の供給先であったVICKY VINYLからリリースされた形跡はなく何と40年以上お蔵入りしたままだったのです。しかし今回日の目を見た音源は劣化感がまるでなく、これまで公開されてきたジョンの録音と同じように鮮度は抜群。奥行きを感じさせる独特の音像も魅力的。確かに「まるでサウンドボード」と形容される類のオーディエンス録音ではありませんが、それでも実に聞きやすい音質であり、何故78年当時にリリースされなかったのか?と首をかしげてしまいたくなるレベル。何よりサウンドボード、オーディエンス録音の両方で音源に恵まれている一年の中でも、極めてレアなセットリストの一日(フィナーレが「You Belong To Me」というパターンもレア!)をこの音質で愉しめる至福。後に「ARMED FORCES」に収録される楽曲の初々しい演奏ぶりを聞き心地抜群の音質でお楽しみください。Civic Auditorium, Santa Monica, CA, USA 30th May 1978 TRULY AMAZING/PERFECT SOUND(62:41)
1. Mystery Dance 2. Pump It Up 3. Lip Service 4. Big Tears 5. Living In Paradise 6. Busy Bodies 7. (The Angels Wanna Wear My) Red Shoes 8. Allison 9. Goon Squad 10. This Year's Girl 11. No Action 12. (I Don't Want To Go To) Chelsea 13. Party Girl 14. Lipstick Vogue
15. Watching the Detectives 16. You Belong to Me Elvis Costello - vocals, guitar Steve Nieve - keyboards Bruce Thomas - bass Pete Thomas - drums