TIME TRIP」シリーズを皮切りとしてマニアには昔からおなじみ、グリン・ジョンズがローリング・ストーンズのアルバム収録曲のミックス過程を捉えたリール・テープにして、サザビーズのオークションに出品された音源を今年に入ってマニアがリマスターしたもの。とは言っても元から音質は非常に良好な音源ですし、当然ながら新音源ではまったくない。それでも非常にクリアーな音質に仕上げられていることは事実ですので、マニアの間でちょっと話題を呼んでいる音源をお試し…という文字通りの手ごろ。こちらの音源ですが基本ミックスの制作過程を捉えた音源ですので、大きな違いのあるバージョンというのは少ない。完全別テイクと呼べるのは「Dear Doctor」に「No Expectations」、そして「Sister Morphine」だけ。それぞれアレンジが違っており、これらはパッと聞いただけでも楽しめるレベル。一応「Loving Cup」も別テイクではあるのですが、今や「ならず者デラックス」にて日の目を見ています(もちろんミックスは違いますが)。よって今も昔も音質の良さとは裏腹に、マニア向けという感は否めません。そういう点でもギフトにて試すというのが打ってつけと言えるのでは。その反面、マニアックながら確かに楽しめる別ミックスというのもいくつかありまして、昔から有名だった「Gimme Shelter」をキースが歌って「You Got The Silver」をミックが歌うというボーカル別テイクが最高音質で楽しめるのは聞きどころの一つ。後者のミック・ボーカルに関してはレコーディング時にバンドの演奏をバックにミックがライブで歌っていたもの。そのせいでリリース版においても他の楽器のマイクが歌声を拾ってしまっていたことから、キースの歌の向こうに残響が残ってしまっていたのですが、そのミックの声本体がここで聞けるという訳です。またバックコーラスやスチール・ギターが加えられておらず、キースとテイラーのアコギ二本とオフ気味にミックスされたチャーリーのドラムという三人だけの伴奏をバックにミックが歌う「Wild Horses」の非常にベーシックでシンプルな段階(Track 8の方)などは、非常に生々しい状態となっており、これぞラフ・ミックスならではの魅力。ちなみに同曲Track 17の方はピアノが加わりましたが、未だにバックコーラスやスチール・ギターが入っていません。「Brown Sugar」も2トラックほど収録されていますが、特に冒頭を飾るバージョンの方は一聴して解るほど装飾の少ない、なおかつ生っぽい状態で、サックス・ソロがない代わりに間奏からずっとリードギターが目立つという違いの分かりやすい段階のもの。このように元来マニア向けな別ミックス集ではあったのですが、2021年の最新技術を駆使して今まで以上にすっきりクリアーな音質に仕上げられている点も魅力ですし、違いが分かりずらいバージョンや断片的な失敗ミックスなどを省いて解りやすくまとめてくれている点もマニア向け音源のハードルを下げてくれている。 THE ROLLING STONES - AUCTION MASTERS (CD) (78:30)
01. Brown Sugar (early mix) 02. Gimme Shelter (alt vocals) 03. Angie (rough mix) 04. Factory Girl (alt mix) 05. Wild Horses (acoustic mix) 06. Prodigal Son (alt mix) 07. Dear Doctor (alt take) 08. Bitch (alt mix) 09. No Expectations (alt take) 10. Parachute Woman (alt mix)
11. Loving Cup (alt take) 12. Dead Flowers (alt vocals) 13. Winter (rough mix) 14. You Got The Silver (alt vocals) 15. Sister Morphine (alt take) 16. Brown Sugar (alt mix) 17. Wild Horses (alt mix) 18. You Can't Always Get What You Want (alt mix)