マイク・ミラードやスティーブ・ホプキンスといったアメリカのオーディエンス録音仕事師が登場する前から様々なアーティストのステージを記録していたジョー・マロニーが1970年にクロスビー・スティルス・ナッシュ・アンド・ヤングのショーまで録音していたことは意外と知られていません。彼が録音を敢行してくれたのは5月29日のボストン公演。当然ライブアルバム「4 WAY STREET」の収録が行われたツアーな訳ですが、それ用の録音が開始されたのは6月以降のステージであり、マロニーが捉えたのはツアーの最初期ということになります。よってセットリスト全体は6月以降のステージと同一なのですが、ステージの雰囲気はまるで違う。そもそもCSNYは5月に一度デンバーでショーを行っていたのですが、準備不足やメンバーの意見がまとまらないまま決行されてしまった結果、散々な一日となってしまいました。そこで改めて仕切り直しで行われたのがこのボストン。ところがそれ以上にこの日が重要なのはCSNY不朽の名作「Ohio」が初めて披露されたという歴史的な一日なのです。この曲が書かれるきっかけとなったケント州大学での発砲事件が起きたのは5月4日ですが、アメリカ中に広まったのは先のデンバー公演の後というタイミングであり、ニール・ヤングによって作曲され、手早く録音されたのもデンバーの後。そこでこのボストンがライブ初披露となった訳ですが、デンバーの一件でバラバラになりかけていたグループの結束を再び高まらせたほどの名曲。その演奏が非常に真剣な面持ちであったことが、この音源から伝わってきます。何しろニールはイントロをなかなか弾き始めず、何度もリフを確認しているところからも、この曲にかける思いがはっきり伝わってくる。クロスビーによる曲の紹介も力が入っている様子がありありと伝わってきますが、まだ発売直前という段階ですので、対照的に観客の反応は意外なほど鈍い。CSNYのファンでなくとも70年代ロックのクラシックとして愛されてきた「Ohio」がこんなに初々しく披露されていた様子を捉えてくれたマロニーには感謝しかありません。音質自体は典型的なモノラルのビンテージ・オーディエンスなのですが、オープニング「Suite: Judy Blue Eyes」の途中から意外なほど演奏が近くなり、また今回のリリースに際してピッチをアジャストしましたので、過去にリリースされた本音源のタイトルよりも格段に聞きやすい状態へと生まれ変わっています。Boston Garden, Boston, MA, USA USA May 29th 1970 TRULY AMAZING SOUND
Disc 1 (61:41) 1. Suite: Judy Blue Eyes 2. On the Way Home 3. Teach Your Children 4. Tell Me Why 5. Triad 6. Guinnevere 7. Simple Man 8. Man in the Mirror 9. Don't Let It Bring You Down 10. Only Love Can Break Your Heart 11. Black Queen 12. 49 Bye-Byes / America's Children
Disc 2 (58:14) 1. Love the One You're With 2. Pre-Road Downs 3. Long Time Gone 4. Helplessly Hoping 5. Ohio 6. As I Come of Age 7. Southern Man 8. Carry On 9. Find the Cost of Freedom