レッド・ツェッペリン1972年アメリカ・ツアーの初日を飾ったデトロイト公演は長いこと音源が存在しないベールに包まれた存在でしたが、2019年に突如として発掘された音源によって遂に公演の一部が「DETROIT 1972」によって垣間見られるようになったのは記憶に新しいところ。アコースティック・コーナー「Bron-Yr-Aur Stomp」からショー中盤以降の収録という点が惜しまれましたが、それでも今まで秘匿されていた音源としては驚くほど聞きやすく、オフィシャル「HOW THE WEST WAS WON」の収録の舞台となったツアーがどのように幕を開けていたかということを知らしめるには十分すぎるくらいのドキュメントでした。その発掘からまだ2年も経っていない中、今度はデトロイトの別録音がこれまた突如としてネット上に現れたのだからびっくり。発掘してくれたのは数か月前の69年アトランタなどでおなじみ“The Dogs of Doom Liberation Series”の一環。その発掘音源ですが、残念なことに2年前の「recorder 1」よりも収録時間が短い。そこで聞けなかった曲が多数収録されている点は大きなメリットなのですが、それでも録音の始まった「Black Dog」は演奏の終盤部分からとなっていて、その他「Stairway To Heaven」に「That’s The Way」、そして「Tangerine」なども演奏の後半部分からの収録という点が惜しまれます。それでもなお特筆すべき点は、何と言っても「recorder 1」より音質が良いということ。そちらは典型的なビンテージ・オーディエンス的な質感の録音でしたが、今回の音源は距離感のある音像ながらも驚くほどクリアーな音質で鮮度も素晴らしい(これでライブ全編を捉えてくれていたら大衝撃音源だったのですが)。それに今回の音源のおかげで非常にレアな展開を見せていた「Dazed And Confused」の大半をよりクリアーな音質で聞かれるようになったのです。つまり、ロバート・プラントがグレイトフル・デッドのカバーなどで有名なボビー・ブランドの「Turn On Your Love Light」を「Dazed And~」の最中に歌い出すという超レアな展開も「recorder 1」以上にクリアーな音質で楽しめるということにもなる。今回の音源で改めて聞いてみてもボンゾのリズムが猛り狂う中、72年では恒例の「The Crunge」に行かず、代わりにプラントが同曲を歌い始める展開は本当に珍しかった。ちなみにこの展開の途中で今回の音源は録音が終わってしまったことから、残りは「recorder 1」、つまり「DETROIT 1972」で聞かれたパートとなります。それに断片的な録音であっても、それでもなお「Stairway To Heaven」などの演奏が素晴らしいことは十分に垣間見られるもので、何と言ってもプラント調子がいい。結果的に72年アメリカ・ツアーは彼がデビュー当時からの鋭い声を保った最期だった訳ですが、それがツアー初日ともなると、さらに顕著。この日のプラントがみせたイキのいい歌いっぷりから、LAフォーラムとロングビーチ初日における「HOW THE WEST WAS WON」の高みにまで上り詰めたのだと思うと、なおさらツアー初日の音源が出土したありがたみを思い知らされます。今回の発掘をもってしても1972年デトロイト完全再現とはなりませんでしたが、それでもこの日ならではのとんがった演奏ぶりが存分に楽しめるマニア驚きの新音源。やはり72年アメリカ・ツアーは特別です!Live at Cobo Hall, Detroit, Michigan, USA 6th June 1972
Disc 1 (39:09) 1. Black Dog 2. Stairway To Heaven 3. That's The Way 4. Tangerine 5. Bron-Y-Aur Stomp 6. Dazed And Confused Disc 2 (47:04) 1. What Is And What Should Never Be 2. Moby Dick 3. Whole Lotta Love 4. Rock And Roll