マニアだけが知る「隠れた充実期」だった1999年のDEEP PURPLE。その秘境を詳らかにする超極上ライヴアルバムが登場です。そんな本作に本作に吹き込まれているのは「1999年7月24日マドリード公演」。その一部始終を真空パックした超絶級オーディエンス録音です。本作最大のポイントは、サウンドボード/オーディエンスの区別を無意味にする強烈なクオリティと、他のどの時代とも違う個性的なショウ。その内容に触れる前に、まずはショウのポジション。1999年と言えば『ABANDON』時代にあたり、公式ライヴ盤『AUSTRALIA '99』『IN CONCERT WITH THE LONDON SYMPHONY ORCHESTRA』が残された他、当店の『PARIS 1998』が好評を賜ったのも記憶に新しい。その諸々を整理するためにも、当時の日程から紐解いてみましょう。1998年・1月28日-2月8日:北米#1/中米(8公演)《6月2日『ABANDON』発売》・6月1日-7月12日:欧州#1(27公演)←※PARIS 1998・8月4日-30日:北米#2(20公演)
・9月15日-11月28日:欧州#2(39公演)1999年・3月19日-4月4日:南米(12公演)・4月16日-5月1日:豪州/マレーシア(10公演)←※AUSTRALIA '99(公式)・6月4日-7月31日:欧州#3/韓国(31公演) ←★ココ★・9月25日+26日:ロンドン(2公演)
←※WITH THE LONDON SYMPHONY ORCHESTRA(公式)
【形容を超えた異次元の超絶サウンド】これが1998年/1999年のDEEP PURPLE。本作のマドリード公演は、2つの公式ライヴ作の間。「欧州#3」の27公演目にあたるコンサートでした。そんなショウで記録された本作は、まさに「超」付きの極上録音。それも「超々々……」とズラズラ並べたくなるヤツです。とにかく「まるでサウンドボード」を地で行くタイプで、極太・ド密着・超繊細……うーん、こんな言葉で伝わるんでしょうか。言葉を尽くそうとしても、美辞麗句を国語辞書のように思いつく限り並べる事になってしまう。「オフィシャル作品でも歴史的名盤級」とでも言えばいいでしょうか。それほどのサウンドを実現した要因はよく分かりませんが、会場にも秘密があるのかも知れません。現場となった“Cubierta de Leganes”でして、寡聞にして知りませんでしたが、天井が開閉式になっている現代の闘技場(!)。この日は恐らく天井が開いてオープンスペースになっていたのでしょう。ホール鳴りもほとんど感じられないタイト感が絶大で、ヘッドフォンで耳を澄ませても大歓声が遠く遠く離れた海のうねりのようにしか感じられない。ともあれ、こんな音で録れる会場が地球上に存在したという事実自体が驚き。世界中のバンドは今すぐマドリードに飛び、この会場でオーディエンス録音を残すべき……などとワケの分からない世迷い事を吐きたくなる未体験サウンドなのです。
【ド肝を抜かれるオープニングと大充実のフルショウ】そんな奇跡の音で描かれるのは心身共に充実した円熟の演奏と、個性的なセット。前述のように公式盤『TOTAL ABANDON: AUSTRALIA '99』の約3ヶ月後でもありますので、比較しながら整理しておきましょう。
70年代クラシックス(8曲)・マシンヘッド:Pictures of Home/Space Truckin’(★)/Lazy/Smoke on the Water/Highway Star・その他:Speed King/Strange Kind of Woman/Woman From Tokyo 再結成後(4曲+α)・パーフェクト・ストレンジャーズ:Perfect Strangers
・紫の証:Vavoom: Ted the Mechanic/Sometimes I Feel Like Screaming・アバンダン:'69(★)・その他:The Boys Are Back In Town(★)※注:「★」印は公式盤『TOTAL ABANDON: AUSTRALIA '99』では聴けない曲。……と、このようになっています。『ABANDON』の「'69」も珍しいですが、極めつけなのはオープニング。メンバーが登場しておもむろに演奏されるのは、なんとTHIN LIZZYの「The Boys Are Back In Town」! 真の開演ナンバーは「Pictures of Home」で、そのイントロ的に1分半ほど演奏するだけなのですが、思いっきり意表を突かれるのです。この時期は「Hush」や「Woman from Tokyo」など、いろいろな趣向で開演していましたが、このインパクトは絶大。あのリフが鳴るだけでも「え?」という感じですし、「Burn」さえ拒絶するギランがまさか後輩バンドの代表曲を絶叫するとは。後にも先にも1999年だけ、それも「欧州#3/韓国」だけで演奏されたアレンジなのです。もちろん、その後の定番たちも素晴らしい。インプロヴィゼーションも非常に多彩でカラフルですし、アンサンブル自体が極めてスムーズで円滑。精神的に安定していると言いますか、王者の余裕と言いますか、とにかく倦怠感が微塵もなく、心から演奏を楽しんでいる感じ。1996年ー2000年は来日の間隔が開いていたこともあってかあまり印象が強くないのですが、残された記録を聴く限りパープル史でも類い希なる充実期だった事がよく分かる。本作は、そんな「隠れた黄金時代」を超絶サウンドで味わえる奇跡のライヴアルバムなのです。とにもかくにもオープニングに驚き、超絶なサウンドに驚き、余裕と円熟のショウに驚くライヴアルバムです。誰もが注目するセンセーションとは無縁だからこそ、知る人だけが知っている大充実時代。その現場を超絶体験できる奇跡の1本。Cubierta de Leganes, Madrid, Spain 24th July 1999 ULTIMATE SOUND
Disc 1 (60:40) 1. The Boys Are Back In Town ★ 2. Pictures of Home 3. Vavoom: Ted the Mechanic 4. Strange Kind of Woman 5. '69 6. Woman From Tokyo 7. Sometimes I Feel Like Screaming 8. Space Truckin' 9. Guitar Solo 10. Lazy
Disc:2 (44:37) 1. Steve Morse Riff Parade 2. Smoke on the Water 3. Keyboard Solo 4. Perfect Strangers 5. Speed King 6. Highway Star Ian Gillan - Vocals Steve Morse - Guitar Roger Glover - Bass Jon Lord - Keyboards Ian Paice - Drums