ボブ・ディランがザ・バンドを従えて行った通称「ツアー74」は彼の久々のライブツアーという事から全米で社会現象的な盛り上がりを見せた結果、オーディエンス録音で音質の優れた音源が極端に少ないという現象が見受けられます。要はテーパーが録音に際して良好なポジションを確保することが極めって困難だったということ。一方でオフィシャル「偉大なる復活」はツアー終盤の録音であり、ディランとバンドのパフォーマンス完成形を収めてはいたものの、ツアー前半にあったセットリストやレパートリーの変化といった攻めの姿勢からはかけ離れていたのも事実。そしてこのツアーのトレードマークとなったディランの力んだ歌いっぷりが「大げさ」の域にまで達してしまっていたのも事実であり、時としてそれが滑稽に聞こえた感が否めません。そしてザ・バンドの演奏は持ち前のアットホームな雰囲気が「偉大なる復活」の頃にはすっかり薄れてしまっており、これもまたツアー前半の方が彼ららしいサウンドをステージから鳴らしていたものでした。あらゆる意味で「偉大なる復活」とは違った雰囲気をステージから放っていたツアー前半の記録はマニアにとってもっとも聞き込みたい時期でありながら、それでいて先の理由から良質な音源に恵まれなかった。そんなマニアの留飲を下げるべくリリースされた名盤が現在もベストセラー続行中である「PHILADELPHIA 1974 1ST SHOW」でしょう。同タイトルがツアー最初期かつ攻めの姿勢に富んだ時期を捉えていたのですが、日程を消化して演奏が盤石の域へと到達しつつあり、それでもなお攻めの姿勢を残していたという絶妙な時期における別格の良質音源としてリリースされた名盤が「HOLLYWOOD SPORTATORIUM 1974」。先の理由から何かと良質なオーディエンス録音に恵まれないツアーの中にあって、正に別格とも言えるクオリティを誇った音源を収録してツアー40周年であった2014年にリリースされた後に完売となってしまった名盤です。はっきり言ってツアーの中でもベスト3に入る高音質を誇るレベル。広がりのあるステレオである上に演奏の音像やディランの歌声も驚くほどオン。もちろん「まるでサウンドボード」と形容されるような域ではないのですが、それでも「ツアー74」の前半ステージがこれほどまでのクオリティで捉えられていたということは驚きを禁じえません。おまけにマイルドな音質、これぞ「理想的なビンテージ・オーディエンス」と形容したくなるアナログ感がもたらす聞き心地も見事なもの。当然ながら再リリースの声が多く寄せられていたのですが、あのリリースから7年の歳月を経て遂にニューバージョンがリリースが決定しました。この音源、非常に良好な音質を誇るステレオ・オーディエンス録音であったものの、演奏の音像が左に寄ったバランスであった。そこで「HOLLYWOOD SPORTATORIUM 1974」のリリース(以降、既発盤と称します)時にも定位の修正を試みたものの、当時のテクノロジーの限界から直し切れていなかった。今回は7年の歳月を経過したおかげでこの問題を完全にアジャスト。あの広がりのある音像はそのままに演奏やディランの歌声がしっかりセンターにどっしり構えてくれたのです。7年前のリリースをお持ちの方は是非ともヘッドフォンにてこの違いを聞き比べていただきたい。それ以上に2014年のリリース時になかった処理としては、アナログ・ビンテージ音源にありがちなパチパチと入るノイズを徹底的に削除。もちろんこれらは微弱なものですが、ヘッドフォンで聞くと気になる個所があったのは事実。そしてピッチも若干ながらアジャストするなど、単なる再発ではなく元音源に遡っての入念なレストアを敢行。ちょうど昨日ネット上で同じ音源が久しぶりにリシードされましたが、そこではザ・バンドのパートがカットされたバージョンだったのに対し、こちらはちゃんと彼らのセットも入ったコンプリートです。そして今回のリリースではボーナストラックまで完全に入れ替え。前回は「ツアー74」のレア・レパートリーであった「Wedding Song」のビフォー&アフターをボーナスにてドキュメントしていましたが、今回はツアー初日の1月3日のシカゴ・スタジアムからオープニングに演奏されてオーディエンスをフリーズさせた(笑)未発表曲「Hero Blues」とアルバム「PLANET WAVES」収録曲でありながらアルバムのリリース前に演奏されなくなってしまった「Tough Mama」を収録。どちらもB級モノラル・オーディエンスで「ツアー74」のコンピレーション「PHANTOMS OF MY YOUTH」などに収録済な音源ですが、カセット・トレードの時代にリリースされたそれよりはずっと聞きやすく、なおかつピッチも正確に収録。もう一つのボーナスはハリウッド・スポータトリアムから四日後のメンフィスで演奏された激レア・レパートリーを収録。ディランの「Fourth Time Around」はこれまた「PHANTOMS OF MY YOUTH」に収録済みでしたが、こちらも正確なピッチかつはるかにクリアーな状態にて収録。それ以上に特筆すべきはメンフィスということでこの日に限ってザ・バンドが特別に演奏したチャック・ベリーのカバー「Back To Memphis」。ディランとは対照的に彼らはこのツアーではほとんどレパートリー固定だっただけに、この演奏は極めて貴重ですし、この日だけ演奏していた事実を知らなかったマニアが大半なのではないかと。こうして本編のレストアはもちろん、今回はボーナスにも徹底的なこだわりをみせたマニア待望のニューバージョン。メインのハリウッド・スポータトリアムでも「Leopard-Skin Pill-Box Hat」というたった三回しか披露されなかったレア・レパートリーが披露されており、しかも高音質で聞けるという魅力。またショー開演前には伝説のプロモーター、ビル・グレアムが直々にステージに上がって「ディランは弾き語りも披露してくれるから、彼の気が散るようなことはしないでね」と語り掛ける場面まで捉えた「ツアー74」最高のオーディエンス・ドキュメント・アルバム!位相修正。前回よりは若干演奏がセンター寄りになったと思います(主にDisc1部分)。ピッチ0.5%下げ 波形は潰さずリマスター 今回リミッターは殆ど掛けてません。EQ若干調整全般
終始散見されたパチプチとしたノイズをなるべく除去 *多分1000箇所以上 Live at Hollywood Sportatorium , Hollywood, Florida, USA 19th January 1974 Afternoon Show TRULY AMAZING/PERFECT SOUND(UPGRADE)
Disc 1 (64:03) 01. Bill Graham Intro 02. Most Likely You Go Your Way (And I'll Go Mine) 03. Lay Lady Lay 04. Just Like Tom Thumb's Blues 05. Leopard-Skin Pill-Box Hat 06. It Ain't Me, Babe 07. Ballad Of A Thin Man 08. Stage Fright 09. The Night They Drove Old Dixie Down
10. King Harvest (Has Surely Come) 11. This Wheel's On Fire 12. I Shall Be Released 13. Up On Cripple Creek 14. All Along The Watchtower 15. Ballad Of Hollis Brown 16. Knockin' On Heaven's Door
Disc 2 (78:32) 01. The Times They Are A-Changin' 02. Don't Think Twice, It's All Right 03. Gates Of Eden 04. Just Like A Woman 05. It's Alright, Ma (I'm Only Bleeding) 06. Rag Mama Rag 07. Loving You Is Sweeter Than Ever 08. The Shape I'm In 09. The Weight 10. Forever Young
11. Something There Is About You 12. Like A Rolling Stone 13. Most Likely You Go Your Way (And I'll Go Mine) Bonus Tracks ★ボーナスは全て新規で前回とは別のライブ Live at Chicago Stadium, Chicago, Illinois, USA 3rd January 1974 14. Hero Blues 15. Tough Mama
Live at Mid-South Coliseum, Memphis, Tennessee, USA 23rd January 1974 16. Back To Memphis 17. Fourth Time Around
Bob Dylan - vocal, guitar, harmonica Robbie Robertson - guitar Garth Hudson - organ, piano, clavinette Richard Manual - keyboards Danko - bass Levon Helm - drums