公式/非公式を交えた箱根アフロディーテ50周年がブームの様相を呈してきたPINK FLOYD。そんな“1971年”を一層ディープに味わえるアップグレード・マスターが新発掘。
【初来日の直後に実現した初めての南半球ショウ】そんな本作に吹き込まれているのは、伝説の初来日が実現した直後。「1971年8月13日メルボルン公演」のオーディエンス録音です。現在の音楽業界では日本とオセアニアはセットで考えるのが常識化していますが、その常識が成立する前の1971年でも地球の地理は同じ。PINK FLOYDは初来日を計画すると同時に、オーストラリア大陸へも初上陸も実行したのです。しかも、この時がロジャー・ウォーターズ在籍時代で唯一の南半球公演でもありました。その辺の事情をイメージするため、ここでPINK FLOYDによる「日本&オセアニア」公演を整理してみましょう。
1971年:原子心母ツアー・8月6日ー9日:日本#1(3公演)・8月13日+15日:豪州#1(2公演)←★ココ★ 1972年:狂気ツアー・3月6日ー13日:日本#2(6公演)1988年:鬱ツアー・1月22日:ニュージーランド(1公演)・1月27日ー2月24日:豪州#2(21公演)・3月2日ー11日:日本#3(8公演)
以上、全41公演。大半を占める1988年の“鬱ツアー”はさておくとして、日本には70年代に二度訪れましたが、オセアニアには1971年の2公演だけ。1971年には欧州/北米ツアーもあったわけですが、「日本+豪州」の前後には1ヶ月以上の間が空いていた。つまり「豪州」は常に日本公演とセットの存在だったわけです。本作のメルボルン公演は、そんな「豪州#1」の初日。PINK FLOYDが初めて赤道を超えて行ったステージなのです。
【最高峰サウンドを更新する新発掘マスター】本稿に目を留められた方ならご存知かも知れませんが、このショウは歴史的なだけでなく、名録音が残された事で以前から知られており、当店でもギフト盤『PLANETS MEETING DOWN UNDER』などが好評を賜ってきました。本作はその伝統録音のアップグレード盤。それもリマスター等の加工による向上ではなく、最近になって発掘され、世界のマニアが「ベスト更新!」と色めき立っている新マスターなのです。実際、本作は紛れもなく過去最高。録音自体は従来と同一なので「神秘」が6分弱でカットアウトしてしまうのも同じですが、全編を貫くサウンドはまったく違う。今回のマスターはお馴染みneonknightによるトランスファーで、「karmamaniaの1stジェネ」からコピーされた2ndジェネ。従来盤よりも輪郭がグッと鮮やかで音抜けも良くなり、ダイナミズムも向上している。もともと力強い芯にグイグイと前に出る突進力が宿り、録音ポジションが十数メートル前になったような感覚なのです。ここで「あれ? 2ndジャネ?」と思われる方もいらっしゃるかも知れません。そう、これまでメルボルン公演のベスト・マスターは「karmamaniaの1stジェネ」から直接デジタル化されたもの。当店の『PLANETS MEETING DOWN UNDER』も1stジェネでした。それに対して、本作は1世代落ちるはずなのですが、実際の音は本作の方が優れているのです。ここからは推察なのですが、ジェネが高いのにヒスが増えていないのは、恐らくメタル・カセットが使用されていたからかも知れません。ヴィンテージ録音に精通している方なら経験があると思いますが、サウンドの保存力はジェネだけでは決定しない。ダビングの経路や使用されたテープ、保存状態、トランスファー環境など数々の要素が折り重なってサウンドを伝えている。もちろん、大多数の場合はジェネが大きく左右しますが、このメルボルン録音に関しては例外。そして、例外だからこそ世界中のマニアも流れ出てきたサウンドに驚いているのです。ともあれ、最高峰を更新した歴史的ショウは実に素晴らしい。初めての国の初日ということもあってか、アンサンブルはやや硬く「原子心母」「エコーズ」ではリックがミスするなど万全とは言えない。しかし、だからこそミスをリカバーするような派手さも引き出され、静から動に鮮やかに変わる「ユージン、斧に気をつけろ」も実に素晴らしいのです。そして何より、このショウをスペシャルにしているのが「グリーン・イズ・ザ・カラー」。日本に続いてメルボルンでも演奏されているわけですが、この曲が確認されたのはこの日が最後。その歴史的なラスト・パフォーマンスを最高峰更新クオリティで味わえるのです。半世紀の時空を超えて人々を魅了している箱根の神話。しかし、あの奇跡には「続き」があったのです。常に日本公演とセットになってきたオセアニアでも、歴史的な初日を最高峰サウンドで味わえるライヴアルバムなのです。箱根に光が当てられている今だからこそ、さらに一歩踏み込むのに最高の新発掘マスター。伝説の初来日の直後に実現した初の豪州公演。「1971年8月13日メルボルン公演」のオーディエンス録音です。以前から知られてきた伝統録音のアップグレード盤で、2ndジェネのメタル・カセットからデジタル化された最新マスター。従来盤よりも輪郭がグッと鮮やかで音抜けも良くなり、ダイナミズムも向上。もともと力強い芯にグイグイと前に出る突進力が宿り、録音ポジションが十数メートル前になったような感覚です。ショウは初来日を思わせつつ、この日が最後になった「Green Is The Colour」も歴史的。半世紀を超えて箱根の神話が人々を魅了していますが、その「続篇」ともなる過去最高峰クオリティのライヴアルバムです。
Festival Hall, Melbourne, Australia 13th August 1971 PERFECT SOUND(UPGRADE)
Disc 1 (55:53) 1. Intro 2. Atom Heart Mother 3. Green Is The Colour 4. Careful With That Axe, Eugene 5. Echoes Disc 2 (34:25) 1. Set The Controls For The Heart Of The Sun 2. Cymbaline 3. A Saucerful Of Secrets