一方、大阪二日目はサウンドボードの流出がなかったこともあり、現在では1996年ジャパン・ツアーの中においてはアイテムのリリース的にも見過ごされた感が否めません。それが「NAGOYA 1996 DAT MASTER」や今回の「OSAKA 1996 1ST NIGHT: DAT MASTER」と同じテーパーによるハイクオリティ・オーディエンスとなれば、それだけでも世界中マニアから注目を浴びるであろう驚きの発掘。その名古屋や大阪初日は凄まじいクオリティだった訳ですが、その期待は裏切られません。オープニングBGMからして音像が近いであろうことを予感させ、いざ演奏が始まるとそれはもう凄まじい。他の二公演と同じようにサウンドボードまがいな音圧というのはもちろん、ジミーを始めとした各メンバーの奏でる音の生々しいこと。ただ音が奇麗に振り分けられただけの、いわゆる「下手なサウンドボード」よりもはるかに演奏の勢いや場の空気が伝わってくるというもの。もし1996年当時に今回の音源がリリースされていたとしたら、大変なことになっていたかもしれません。名古屋の時もそうでしたが、本当にこれほどまでの極上録音が今まで眠っていたなんて。何しろ演奏の音像が近く、それでいて大阪初日と同じようにチャーリー・ジョーンズのベースラインの粒立ちが際立っている。ペイジ・プラントのようなバンドを捉えたオーディエンス録音の場合、リズム隊の音がしっかり聞こえないと鑑賞面において大きなストレスとなってしまう…というかお話にならない訳ですが、これだけしっかり彼らの音を捉えてくれているというだけでもいかに別格のクオリティであるかを実感してもらえることでしょう。レアめなレパートリーが続いた前二回の公演と比べるとセットリスト的なサプライズはなかった日なのですが、反対に今までやり慣れたレパートリーだけで構成されたことでジミー以下バンド全体が実にのびのびと演奏している様子がはっきり伝わってくるのもこの音源ならでは。中でもマイケル・リーのドラミングはライブ全編を通して縦横無尽に暴れまわっており、前二日間の実験的なレパートリーやアコースティックな曲がない分、なおさら叩きまくってくれているように映ります。解りやすい例としては「What Is and What Should Never Be」。大阪初日ではちょっとタメすぎではないかと思えるほどもったいぶった調子で演奏されていたのに対し、この日は物凄い疾走感。初日と比べてあまりにもテンポが違い、駆け抜ける様がまるで別のバンドであるかのよう。もちろん主人公はリーのドラム。ボンゾの模倣に陥ることなく、それでいて彼をリスペクトしたかのようなプレイこそ、ペイジ・プラントのライブ・サウンドの立役者であったのだと思い知らされます。また東京行程の途中からブルース・コーナーで「Tea For One」がステージ・デビューを果たし、むしろレギュラーと化した感すらあったのですが、この日は久々に従来の「Since I've Been Loving You」が演奏されたことも吉と出たように思えます。おかげでジミーはやり慣れた曲に戻った分、思う存分弾きまくっている。同じことは「The Song Remains The Same」にも当てはまり、これもまた疾走感に溢れた素晴らしい演奏でした。それに大阪初日の和やかさと違い、この日はかなりアツい盛り上がりを見せた点もプレイヤーたちのスイッチが入ったのかもしれません。ライブが後半に差し掛かると「Whole Lotta Love」から「Dazed and Confused」へと移る長い展開ではロバートが主導権を握り、ボビー・ウーマック(というよりローリング・ストーンズのと言った方が解りやすいですよね)の「It’s All Over Now」をおどろおどろしい雰囲気で歌い出すという。そして「In the Evening」はジミーとリーが相乗効果で盛り上げたライブ終盤のハイライト。こうしてレパートリー的な冒険を避けた分、やり慣れたレパートリーが功を奏して各人がプレイに没頭できたからこその96年ジャパン・ツアー後半に生み出された名演。それが今回の極上オーディエンスのおかげで、まるで目の前で演奏しているかの如く迫ってきます!Live at Osaka-Jo Hall, Osaka, Japan 19th February 1996 ULTIMATE SOUND(from Original Masters)
Disc 1 (71:08) 1. Intro 2. Egyptian Intro. 3. Celebration Day 4. Bring It On Home 5. Heartbreaker 6. What Is and What Should Never Be 7. Tangerine 8. Thank You 9. Hurdy-Gurdy Solo 10. Gallows Pole 11. Nobody's Fault but Mine 12. The Song Remains the Same
13. Since I've Been Loving You 14. Band Introductions 15. Whole Lotta Love incl. It's All Over Now, Break On Through (to the Other Side), Dazed and Confused
Disc 2 (57:55) 1. MC 2. Dancing Days 3. Egyptian Intro 4. In the Evening 5. Four Sticks 6. Kashmir 7. Black Dog 8. Rock and Roll