2020年/2021年にわたって新型コロナ禍に喘ぐ世界中のコレクターを支えてくれた、ミラードのマスター発掘事業。その中でも飛びっきりの大迷盤がリリース決定です。
【ミラード・コレクション随一の迷盤E.P.】そんな本作の主役は、THE PRETENDERS。『PRETENDERS II』発売の約3週間後だった「1981年9月5日パサデナ公演」の超極上オーディエンス録音です。早速、当時のスケジュールからショウのポジション……は、今回は止めておきましょう。と言うのも、今回の超個性は「短さ」にある。これまでも惜しいところでショウの完全版とならなかった録音はありましたが、本作はそうではなくたった3曲。アンコールだけでショウに18分のオーディンス・アルバム……いや、「オーディエンスE.P.」なのです。「なんだ失敗録音かよ」と思われるかも知れませんが、その理由が結構面白いから侮れない。そう、ミラードが捕まってしまったショウなのです。彼は捕まった経緯を話さなかったようで詳細は不明。ショウの序盤で見つかってアンコールだけ再挑戦したのか、それとも終演後に捕まって没収され、2本目のテープだけ何とか隠し通したのか。実のところ、ミラードは2年前のパサデナでもスティーヴィ・ワンダー(1979年12月18日?)を録音しようとしたのですが、失敗。持ち込む段階で機材を没収されてしまった事があります。まさか、その時の警備員がミラードの事を覚えていて捕まえた……というのは出来すぎた妄想かも知れませんが。
【流石のクオリティで豪華共演も楽しめるから侮れない】ともあれ、残されたのはアンコールの3曲のみ。デビュー作の「Brass In Pocket」「Mystery Achievement」と、ジャッキー・ウィルソンのカバー「(Your Love Keeps Lifting Me) Higher And Higher」だけでした。しかし、これがまた単なる3曲ではない。実は、この日の「(Your Love Keeps Lifting Me) Higher And Higher」では、ブルース・スプリングスティーンが飛び入り参加。豪華共演を聴かせてくれるのです。ここでマニアの方ならピンと来たかも知れませんが、先日大好評となったスプリングスティーンの『LOS ANGELES 1981 3RD NIGHT』にボーナス収録されていたのが、本作のテイク。ミラード本人がダビングしてテープの最後に追加していたのです。あのアルバムでは共演1曲だけでしたが、ここではアンコール全景の3曲フルが新発掘されたわけです。サウンドに関しては多くを語るまでもないでしょう。当然の事ながら「超」付きの極上。さすがミラードの銘品です。そのサウンドが素晴らしいからこそ「フルで聴きたかった」という想いにも駆られますが、同時に絶対名手でも失敗するという事実自体に心が掻き立てられる。まさに「弘法にも筆の誤り」「千慮の一失」「Even Homer sometimes nods」のオーディエンス録音版「ミラードのパサデナ」なのです
Perkins Palace, Pasadena, CA, USA 5th September 1981 TRULY PERFECT SOUND (17:55)
1. Brass In Pocket 2. Mystery Achievement 3. Introduction of Bruce Springsteen 4. (Your Love Keeps Lifting Me) Higher And Higher (★with Bruce Springsteen)
Chrissie Hynde — lead vocals, guitar James Honeyman-Scott — lguitar, backing vocals Pete Farndon — bass, backing vocals Martin Chambers — drums, backing vocals