ジャック・ブルースは1987年に日本人ギタリストとのセッション・ライブ企画で初来日してからというもの終生セッション企画で日本を訪れていたのでした。1992年に実現した来日も正にそのパターンであり、この時はサイモン・フィリップスに加えて懐かしのメタル系ギタリスト、ブルース・サラセノという布陣。この時の来日公演では川崎の模様が過去にリリースされていた実績がありましたが、いわゆる地方公演が初登場のDATオーディエンス・マスターにて今回リリース。特筆すべきは抜群の音質。そもそもライブハウス級の会場ですので音像が極めてオン、それどころか各楽器がほんのりステレオ的な分離を見せるほどの高音質。ジャックが亡くなってしまった今となっては、プレスのディスクでリリースされたとしても何ら遜色のないレベルかと。後にポイズンのようなメタル・バンドで代役を務めたサラセノがギタリストという事で一見ミスマッチにも映りかねないこの時の布陣ですが、実は神童ギタリストとして何と17歳の時にはジャックとジンジャーが一緒に活動していた時のバンドに加入していたという実績を持っていたのです。それにサラセノが92年にリリースしたソロ・アルバム「PLAID」ではクリームもカバーしていた「Cat's Squirrel」取り上げるなど、実はクリームをルーツとしていたことが明白なギタリストでした。それだけに基本的なトーンこそサラセノ節なメタリックな調子ではあるものの、それでも一聴して解るほどにクリーム時代のクラプトンをリスペクトしたプレイで違和感どころかむしろ聞き入ってしまいそうなほど見事にジャックと渡り合っています。そこに名手サイモン・フィリップスも加わり、なおかつ音像が極めて近いことからジャックが思う存分に自身を発揮している様子が克明に伝わってくるのです。それにこの時のジャックはまだ50前ということもありフットワークが軽い軽い。むしろ現役バリバリなプレイヤーだと言っていいほど。一方で1992年という時代が功を奏してか、各人ともインタープレイが長ったらしい展開に陥ることなく、あくまで凝縮したプレイを聞かせてくれるのが実にとっつきやすい。この時の来日公演は基本的にクリーム時代のレパートリーをメインとしていて、それがまたこの時の布陣にマッチした構成となっているのですが、そんな中で異彩を放つのはサイモンのドラムソロ(これがまた程よい尺)からメドレーされた「One Word」。ジャックがジャズドラマー、トニー・ウイリアムズのユニット、ライフタイムに短期間在籍した時に出された曲で、彼がボーカルを取った歌モノという事から当時シングルだけでリリースされたアルバム未収録曲だったのです。一方1990年代のステージでジャックが好んで歌っていたレパートリーであり、今ではライフタイムのアルバム「TURN IT OVER」のCDボーナストラックとして収録されていますが、当時の日本では入手困難音源。めくるめくようなクリーム・ナンバーが続いたライブの終盤で突如歌われた本曲に「???」となってしまった人が多かったのではないでしょうか。しかし今となってはこれも超貴重なライブ披露の記録となってしまった。そして何より今まで川崎の音源しか存在しなかったジャック92年の来日公演から衝撃の発掘かつ、物凄い極上音質で聞けるオーディエンス・アルバム。すべての音楽ファンに自信を持って推します。Live at The Bottom Line, Nagoya, Japan 18th March 1992 TRULY PERFECT SOUND(from Original Masters)
Disc 1 (58:28) 1. Intro 2. Life on Earth 3. White Room 4. Band Introductions 5. City of Gold 6. Born Under a Bad Sign 7. Make Love (Part II) 8. Grease the Wheels 9. Theme for an Imaginary Western 10. Guitar Solo 11. Keep It Down
Disc 2 (52:15) 1. Rollin' and Tumblin' 2. Sitting on Top of the World 3. Drum Solo 4. One Word 5. Politician 6. Sunshine of Your Love Jack Bruce - Bass, Vocal Blues Saraceno - Guitar Simon Phillips - Drums