史上最高キーボード・トリオの終焉となった“WORKS Tour”。その新たなるマスター・ピースが新発掘。そんな本作に吹き込まれているのは「1977年8月6日オークランド公演」。その絶品オーディエンス録音です。“WORKS Tour”と言えば、オーケストラとの共演コンサートが実現した事でも有名なわけですが、ほとんどのショウはトリオだけでもありました。共演公演か否かで記録の意味合いが丸っきり変わってしまいますので、まずは当時のスケジュールを振り返り、ショウのポジションを確認してみましょう。1977年《3月17日『四部作』発売》*5月24日ー6月12日:オケ共演(11公演+トリオ2公演)・6月16日ー7月5日:トリオ#1(15公演)*7月7日ー9日:オケ共演(MSG3公演)・7月10日ー8月23日:トリオ#2(34公演) ←★本作★*8月26日:オケ共演(モントリオール)・10月15日ー11月30日:トリオ#3(35公演)《11月1日『作品第2番』発売》1978年・1月16日ー3月13日:トリオ#4(48公演)《『ラヴ・ビーチ』制作→EL&P解散へ》※注:「*」印はオーケストラとの共演で、「・」印はトリオだけの日程。これが1977年/1978年のEL&P。オーケストラとの共演は15公演ほどあり、その大半がツアー序盤に集中。その後はトリオ公演の合間に数回再演するスタイル。本作のオークランド公演はそんな「トリオ#2」の19公演目にあたるコンサートでした。また、このショウは知る人ぞ知るツアー屈指の名録音が残された事でも知られていました。とは言っても、大定番として君臨していたわけではありません。録音者の意志だったのか、テープ自体はほとんど出回らず、コアなトレーダーのリストにだけ記載。その音質評価によって「これは凄そうだ」と噂と憶測を呼んできたのです。しかし、待てど暮らせど録音は出回らない。いつしか熱望していたコレクター達も「単なる噂」「日付間違いか何かだろう」と存在を忘れるようになっていったのです。そして、時は2021年。その噂の真実が明かされる日が来た。限られたコレクターだけが秘蔵していたマスターが新発掘、最新トランスファーで公開された。それが本作なのです。そのサウンドは、まさに噂を体現するもの。何と言っても素晴らしいのは、澄み渡るクリアな空気感とシャープで詳細なエッジ。さすがにサウンドボードと間違えるような力強さまでは望めませんが、微細部まで繊細なディテールは間違えてもおかしくありません。しかも、距離感がない。音色にはオーディエンスらしさが刻まれているものの、ヘッドフォンで聴いてもホール鳴りの成分がほとんど感じ取れず、曇りは濁りが起きない。現場となった“オークランド・アラメダ・カウンティ・コロシアム・アリーナ”は屋内競技場のハズなのですが、本作から流れ出るサウンドは、まるで野外。その結果、芯がタイムラグなく耳に届き、距離感にならないのです。さらに付け加えるなら、マスター鮮度も素晴らしい。ダビング痕ゼロというわけではないのですが、歪みやブレがほとんどない。1音1音が綺麗に伸び、虚空を飛び交う高音のエッジも恐ろしくシャープ。そんなサウンドで描かれるのは、「史上最高のキーボード・トリオ」が熟し切っていながら腐り始めてはいない円熟のショウ。これまで何度も語られてきましたが、活動の全盛期は1974年までだったとしても、演奏家集団としてのポテンシャルがピークを迎えたのは“WORKS Tour”だった。完全に血肉となったクラシックスを凄まじいテンポで繰り出し、多彩なジャンルを飛び交う新曲群はショウを凄まじくカラフルに彩っている。やや躁的でもあるアンサンブルとショウ運びは、そもそもEL&Pの真骨頂であり、その極地を体現するショウでもあるのです。また、本作だけのちょっと面白いシーンが「Knife Edge」。冒頭1分ほどが録音漏れになっていますが、むしろ面白いのは終演後。オルガンの調子が悪くなったのですが、次はイントロからオルガン大活躍の「展覧会の絵」。なんとかその場で修復しようといろいろ試している様子も超クリア・サウンドで体験できるのです。ギターよりも打音鋭く、オーケストレーションにも秀でているキーボード。誤解を恐れずに言うならキーボード・トリオとは全員が打楽器であり、ビート音楽である「ロック」に最適なはずでした。しかし、ロックの本流とはならなかった。あえて偏った暴論を吐くなら、極北に達したEL&Pがあまりに革新的だったからではないでしょうか。少しでも影響を受けようものなら「あぁ、EL&Pのマネか」とならざるを得ないほど極めた超個性ロック。本作は、その最終到着点でもあった“WORKS Tour”を極上体験できる新たなる文化遺産なのです。ロックが秘めていた可能性の1つを突き詰めた音楽世界。WORKS Tourでもトリオ公演だった「1977年8月6日オークランド」の絶品オーディエンス録音。コアなトレーダーが秘蔵していた新発掘マスターで、何と言っても素晴らしいのは、澄み渡るクリアな空気感とシャープで詳細なエッジや微細部まで繊細なディテール。しかも、距離感がない。ホール鳴り成分がほとんど感じ取れず、曇りは濁りが起きない。芯がタイムラグなく耳に届き、距離感にならないのです。史上最高キーボード・トリオの演奏力がピークに達したWORKS Tourを極上体験できる文化遺産アルバムです。Oakland-Alameda County Coliseum Arena, Oakland, CA, USA 6th August 1977 TRULY PERFECT SOUND
Disc 1 (62:12) 1. Karn Evil 9 1st Impression Part 2 2. Hoedown 3. Tarkus 4. Take a Pebble 5. Piano Concerto No.1 1st Movement 6. Take a Pebble (reprise) 7. C'est La Vie 8. Knife Edge ★オルガンのトラブル修復トライ(面白い)9. Pictures at an Exhibition
Disc 2 (51:36) 1. Still...You Turn Me On 2. Lucky Man 3. Tank incl. Drum Solo 4. Nutrocker 5. Pirates 6. Fanfare for the Common Man / Rondo 7. Finale