スティーブ・ジョーダンの参加によって1960年代のナンバー、つまりブライアン期の楽曲が息を吹き返したことをミックやキースもはっきりと認識したのでしょう。LAのSoFiスタジアムの初日では、遂に「Let’s Spend The Night Together」から幕を開けるというオープニングが実現。案の定、何ともエキサイティングなスタートになっており、そのライブ映え感が半端ない。そこからの「19th Nervous Breakdown」という、今までになかったブライアン期オープニングというパターンが実に新鮮。何より「Let’s Spend~」がライブのオープニングを務めるのはストーンズのライブ史上において今回が初めて。このオープニングだけでも聞きどころだと断言できるほどのインパクトを放っているのですが、今回のツアーでは欠かせないチャーリー追悼コメントから雪崩れ込んだのが本ツアー初登場の「Rocks Off」。これまたスティーブのドラミングによってオリジナルの攻撃的な演奏の勢いが見事に蘇っており、これもまた息を吹き返したレパートリーだと言えるでしょう。この曲が披露されたことで喜びを抑えきれなかったのでしょう、思わずテーパーが小声で歌っています(爆笑)。それでも演奏が圧倒的にアグレッシブなので聞いていてほとんど気になりません。そんな勢いはなおも続き、これまた今回のツアーでは初登場となる「Get Off of My Cloud」。これもまたスティーブのドラミングとの相性は抜群で、ここでも彼のドラミングがブライアン期レパートリーを蘇らせる…という法則が。そんなLA初日のセットリストにおけるブライアン期祭りはまたしてもツアー初登場の「Ruby Tuesday」で締めくくり。ライブ前半でこれほどまとまってブライアン期の曲が披露されるということは今までなかっただけに、やはりミックやキースがスティーブのポテンシャルを把握し始めたことの証かと。また先ほど聞かれた「Rocks Off」でのテーパーシンギングよりも本曲を皮切りに次の「Tumbling Dice」、そして「You Can't Always Get What You Want」に「Honky Tonk Women」といった具合で周期的にテーパーがよそを向いて音が遠くなってしまう箇所があるという問題の方が惜しまれます。とはいえ、そこから戻ると改めて今回の録音の迫力ある音像を実感させてくれるのだから皮肉なもの。というのも今回リリースされる音源が間違いなく本ツアートップのクオリティを確信させてくれる見事な音質だから。この日のオーディエンス録音に関しては二種類の音源が登場しており、最初に現れたのはTJというテーパーによるもので、今回の音源が続いて現れました。こちらはPITから敢行された録音ということでミックの歌声を始めとしたオンな音像が実に素晴らしい。それ故にテーパーがたまに動いて先のような不安定な個所が生じてしまった訳ですが、こうした問題を差し置いても圧倒的にオンで迫力満点な録音状態はマニアでなくとも楽しめるレベルでしょう。何しろ高音質ですので、スティーブを配した新生ストーンズの演奏がどんどん良くなっている様子がはっきり伝わってくるのが嬉しい。ナッシュビルでの初披露が大成功に終わったキースの歌う「Connection」はこの日も素晴らしい演奏ぶり。この日は同曲に「Ruby Tuesday」そしてオープニングの「Let’s Spend The Night Together」と来て実質的に「BETWEEN THE BUTTONS」ナイトだと呼びたくなってしまいます。この日で惜しい演奏が唯一あるとすれば、それは「Midnight Rambler」。これまでのスティーブはチャーリーほど絶妙な演奏の盛り上げが出来なくとも彼なりに煽ってくれていた訳ですが、この日に関してはピークを掴めないまま何となく演奏が終わってしまいました。もっともブライアン期のナンバーであれほどまでの冴えを見せていただけに、新入りスティーブがすべてを完ぺきにこなすのは無理な話というもの。全体的にはスティーブのドラムがひっぱる形で非常にテンションの高い演奏が繰り広げられており、それに応えるかごとくミックが張り切る様子が見事な音像で捉えられているのがお見事。時折生じる音の揺れもなんのその。それを補ってあまりある迫力の音像と白熱の演奏。新生ストーンズのライブを捉えたオーディエンス・アルバムの中でも「まずはこれ」という一枚が誕生!SoFi Stadium, Inglewood, CA, USA 14th October 2021 TRULY PERFECT SOUND
Disc 1 (69:37) 1. Intro 2. Let's Spend the Night Together 3. 19th Nervous Breakdown 4. Words For Charlie 5. Rocks Off 6. Get Off of My Cloud 7. Tumbling Dice 8. Ruby Tuesday 9. You Can't Always Get What You Want 10. Living in a Ghost Town 11. Start Me Up 12. Honky Tonk Women
13. Band Introductions 14. Connection 15. Slipping Away
Disc 2 (64:44) 1. Miss You2. Midnight Rambler 3. Paint It Black 4. Sympathy for the Devil 5. Jumping Jack Flash 6. Gimme Shelter 7. Satisfaction