今も継続されているJEMSによるマイク・ミラード・マスター公開の中において、1990年以降に彼が録音した音源は驚きのアーティストやコンサートが多く含まれている傾向があります。今週もその典型と呼べる1991年のライブの録音が公開されました。それがニール・ヤング&クレイジー・ホース91年の「SMELL THE HORSE」ツアー。ニールをして「最高のツアーの一つ」だと自伝で言わしめたと同時に、ライブアルバム「WELD」がツアー終了から半年足らずでリリースされたことでファンの間にも伝説的なツアーの一つとして浸透したものです。そうした恵まれたリリース状況に加え、何より大会場ばかりを回るツアーであったことが災いし、音質の良いオーディエンス録音が皆無という状況になってしまい、アンダーグラウンドなアイテムや音源もまた皆無…という状況でした。こうした中において、驚くほど良好な音質のオーディエンス録音をリリースしてみせたのがUXBRIDGEレーベルの名盤「HARTFORD 1991」。まさか、今になって「SMELL THE HORSE」ツアーのオーディエンス録音がリリースされるだなんて…と玄人受けしたリリースとして高い評価を受けています。そして今回発掘されたミラード録音による、まさかの91年ツアー録音なる訳ですが、彼とて同ツアーで好ポジションを確保することは叶わず、ミラード録音としては少し距離感のある状態(ミラード晩年の録音はアーティスト選択の意外さと比例してこうした状態の音源が多く見られますね)となっている。もっともそれは、あくまで「ミラード録音としては」という但し書きであって、これが大会場オンリーの「SMELL THE HORSE」ツアー全体からすればトップ・レベルに君臨出来てしまうクオリティで「HARTFORD 1991」をも凌ぎます。確かにライブ開始直後は会場の出音が慣れていないこともあって、距離感を覚えるのですが、このツアーを象徴するボブ・ディラン「Blowin’ In The Wind」のカバーからはグッと出音マシマシで音圧も向上。マニアでなくとも余裕で楽しめるクオリティであると同時に、こうした録音環境ですら周囲の音を拾うレベルが低くて聞きやすいのがさすがのミラードの面目躍如といったところ。そして彼が録音してくれたのは大変に重要な一日でもあった。というのも「SMELL THE HORSE」ツアーの最終日であり、アルバム「WELD」で2テイクだけ採用された日の全貌を解き明かしてくれたからです。当時「Godfather of Grunge」とまで称された重量級かつ轟音のサウンドが伝説となったツアーの最終日ということもあり、正に盤石とも言うべきクレイジー・ホースの演奏をバックに、ニールは思う存分インタープレイに没頭。それに必殺「Like A Hurricane」が始まる際に会場で響き渡った轟音の迫力や生々しさを捉えてくれているのもミラード録音ならでは。実のところ、アルバム「WELD」はクレイジー・ホースのバックコーラスがほぼほぼ録り直されていた上、それがエフェクトで小奇麗にまとめられていた。これを今聞くと違和感でしかない訳で、実際のライブならではの演奏状態を記録してくれているのがまたオーディエンスの面目躍如。それにツアー前半の記録であった「HARTFORD 1991」と聞き比べれば、どのように演奏が進化したのか手に取るように分かる。こうしてまさかのミラード録音で日の目を見た「SMELL THE HORSE」ツアーの最終日、その全貌と重量級サウンドの生々しさを心ゆくまで味わえる初登場ミラード音源、これはもうアナザー・サイド・オブ「WELD」!Sports Arena, Los Angeles, CA, USA 27th April 1991 PERFECT SOUND
Disc 1 (54:04) 1. Hey Hey, My My (Into The Black) 2. Crime In The City (Sixty To Zero, Part 1) 3. Blowin' In The Wind 4. Love To Burn 5. Cinnamon Girl 6. Mansion On The Hill 7. Fuckin' Up
Disc 2 (59:30) 1. Cortez The Killer 2. Powderfinger 3. Love And Only Love 4. Rockin' In The Free World 5. Like A Hurricane 6. Roll Another Number (For The Road) Neil Young - guitar, vocals Ralph Molina - drums, vocals Frank "Poncho" Sampedro - guitar, synthesizer, vocals
Billy Talbot - bass and vocals