マイク・ミラードがその卓越したオーディエンス録音技術を確立した1975年の三大名レコーディングの一つが7月のLAフォーラムにおけるローリング・ストーンズ一連のショー。中でも13日はZEP「エディ」と並んで彼の名声を世界中のマニアに知らしめた名録音だと言っても過言ではありません。それだけにJEMSチームによるミラード・マスターの発掘が始まってからというもの、その公開が渇望されていた録音でもある。ところが、今や13日はライブアルバムが、12日はライブビデオがそれぞれにオフィシャルリリースされたせいで公開しずらくなってしまった。さらに言えば10日は残念なことにミラードが参戦していなかった。それでもJEMSチームは昨年後半からストーンズのLAフォーラム75ミラード・マスターはもちろん公開するプランがある…と仄めかしてくれていたものです。遂にその先陣を切ってくれたのが7月11日。おなじみdimeにて公開されたのが昨年の12月25日だったことから、文字通り世界中のマニアにとってクリスマス・プレゼントだとも。またライブビデオがリリースされた際にそれまでの定説が覆され、11日と12日のデータがひっくり返ってしまった訳ですが、今回のミラード・マスターの公開に際してもJEMSチームは「オフィシャルが正しい」とし、以前は12日として流通していた音源を11日と正しています。これはフロイドのアフロディーテ状態だと例えてもよいのでは。それにオフィシャルが存在する以上、問題なくマスターをdimeで公開できるのはそうしたリリースが存在しない日となる。なるほど11日の音源がその先陣を切ったという訳です。そんな11日のミラード音源ですが、彼による一連のストーンズ75LAフォーラム録音の中において唯一、不完全収録として知られていました。この日に限ってどうしてそのような結果となってしまったのかも今回の公開で新事実が発覚しています。この音源はキースのギターの音が大きなバランスで捉えていたのですが、実際の現場においても彼の音量が相当なものだったらしく、ミラードがこりゃだめだ…と諦めてしまったということ。それ以上に深刻だったのは周囲の観客が騒ぎ始めてしまったことで、それに嫌気がさしたことが録音を止める最後の一撃となってしまったそう。何より後に彼自身を苦しめることになる繊細さが録音をストップさせる原因となってしまったのでした。それでもなおミラード録音ということから、過去にEV「WHORES, COCAINE AND A BOTTLE OF JACK」、VGP「THE LOST MILLARD MASTERS」といった彼の音源の集大成的アイテムに収められた実績がありました。もっともそれらのリリースは20年近くまえであり、彼による75年LAフォーラム録音の中では珍しく入手がしずらい日となっていたものです。今となっては聞いたことがないマニアの方が多いかもしれません。今回はそれら以来となるリリースというだけでも画期的なのですが、それ以上に衝撃的なアップグレード感を伴っているのです。実をいうと、先に挙げた過去のアイテムはすべてモノラルにダウングレードした状態で収録されていたのですが、何と今回は初めてステレオにて収録が実現したのです!何せトレードに関しては偏屈な姿勢であり続けたミラード、自身からすれば気に入っていないであろう音源を流通させるに当たってモノ化させるぐらいの可能性は十分に考えられますし、それ以上にカセット・トレードの時代で出回ってゆく内にモノラルへとダウングレードしてしまったという可能性はさらに強いかと。それ故に過去のアイテムではレンジの狭くなったモノラルのせいで「キースばかり目立つバランスの悪さ」という印象が強く、おまけに不完全収録だったせいでミラード録音なのにマニア向け的な感が否めない日でしたが、まずステレオへとバージョンアップしたことで聞きやすさ、音の鮮度などが飛躍的に向上。それに拍車をかけたのが、JEMSチームが微調整ながらもキース以外の音のバランスもアップさせて公開してくれたということ。これなど現在だからこそ実現できたというもの。こうした好条件が重なった結果、以前のバージョンとは比べ物にならないほどのアッパー感が実現。これまで数多く公開されてきたミラード・マスターの中でも、ここまで飛躍的な音質の向上を遂げた音源は随一だと断言いたしましょう。ここで問題になるのが未収録部分なのですが、幸いにもJEMSチームは同時に別音源も公開。さらに彼らはこの音源をパッチした状態でミラード・マスターを公開してくれたのですが、ここがアメリカ人らしいというか…その編集が何とも雑でして(苦笑)。これまた幸いなことに、彼らはその音源の全長版を公開してくれており、今回のリリースに際してはそちらの音源に遡って改めてパッチ。先のバージョンとは比べ物にならないほどなめらかにアジャスト。もっともこちらの別音源、本体のミラード音源には遠く及ばないモノラルのビンテージ・オーディエンスで、フィナーレ「Sympathy For The Devil」の終盤では録音が止まっておしまいという問題も抱えています。とはいえ「THE LOST MILLARD MASTERS」に使われていた同日の別音源はステレオながら音像が遠く、なおかつ周囲が騒がしかったもので、それよりは今回の方が聞きやすいクオリティなのは確か。75年のモノラル・オーディエンスとしては十分に聞けるもの。それにしても本編ミラード・マスターのアッパー感は鮮烈。このクリアーな音質ですとキースの音が張り出たバランスも迫力満点。むしろ、どの曲でも彼が曲を支える絶妙なフレーズを生々しく楽しめてしまう感触は格別。この時代ならではの安定感抜群なバッキング・プレイはもとより「Star Star」での十八番チャックベリー・フレーズもキレッキレ。それでいて全体のバランスも調整されたことで、75年ならではの荒々しさもしっかり楽しめる。そして別音源パートのおかげで75年名物オーティス・レディング「Fa-Fa-Fa-Fa-Fa (Sad Song)」をミックが口ずさむという場面が初めて登場。彼の歌にバンドが合わせ、そこからすかさず「Wild Horses」へと展開する様は鳥肌モノ!衝撃のミラード・マスター!! 何と今回は初めてステレオにて収録!!!これぞアップ・グレード!!!The Forum, Inglewood, CA, USA 11th July 1975 TRULY PERFECT SOUND (UPGRADE)
Disc 1 (73:26) 1. Fanfare For The Common Man 2. Honky Tonk Women 3. All Down The Line 4. If You Can't Rock Me / Get Off Of My Cloud 5. Star Star 6. Gimme Shelter 7. Ain't Too Proud To Beg 8. You Gotta Move 9. You Can't Always Get What You Want ★0:00 - 3:25 Ed F recording
10. Happy ★1:23以降、Disc2最後まで Ed F recording 11. Tumbling Dice 12. It's Only Rock'n Roll 13. Band Introductions 14. Doo Doo Doo Doo Doo (Heartbreaker)
Disc 2 (69:18) 1. Fingerprint File 2. Angie 3. Wild Horses 4. That's Life 5. Outa Space 6. Brown Sugar 7. Midnight Rambler 8. Rip This Joint 9. Street Fighting Man 10. Jumping Jack Flash 11. Sympathy for the Devil