スラッシュメタル両巨頭の初来日から30周年だった2017年。アニバーサリー・イヤーのカップリング来日を永久保存した超・極上ライヴアルバムがリリース決定です。そんな本作に刻まれているのは「2017年5月17日Zepp大阪ベイサイド公演」。その超絶級オーディエンス録音です。もう5年前になるわけですが、この来日公演は極めてメモリアルでした。ANTHRAXが初来日を果たしたのは1987年3月で、MEGADETHはその翌月。それからちょうど30年、“本物のスラッシュメタル”を日本に届けてくれた両雄がカップリングツアーを行ったのですから。特にヘッドラインのMEGADETHは、このところフェス来日ばかり。オマケの単独公演もなくはなかったものの、堂々の主役ツアーは2007年の“UNITED ABOMNATIONS JAPAN TOUR”以来、10年ぶり。そして、現在に至るまで最後の来日公演でもあるのです。まずは、そんな記念碑的な来日スケジュールから振り返ってみましょう。・5月17日:Zepp Osaka Bayside ←★本作★・5月18日:Zepp DiverCity Tokyo・5月19日:Zepp DiverCity Tokyo【強力サウンドのスーパー・ライヴアルバム】以上、全3公演。本作の大阪公演は初日にあたるショウでした。そんな本作の最大のポイントは、30周年の感慨……ではありません。それさえも吹っ飛ぶ凄まじいクオリティ! 何しろ、本作をモノにしたのは当代きっての名録音家“西日本最強テーパー”氏。その彼のコレクションでも特上の逸品なのです。現場となった“Zepp Osaka Bayside”は、ライヴの3ヶ月前に誕生したばかりの新会場だったのですが、“最強”氏はすでに攻略済み。現在は銘打ての録音家の方々もまだ音響を把握し切れていないというのに、スティーヴン・タイラーの超傑作『OSAKA 2017』で「まるでサウンドボード」「現場より良い音」を実現してしまったのです。本作もまた、“最強”氏しか知らない必勝の方程式が炸裂しているのです。実際、本作のサウンドは迷いなく「まるでサウンドボード」の言葉を捧げられるもの。冒頭、ANTHRAXの開演を告げる「Can't Turn You Loose(映画『BLUES BROTHERS』でお馴染み)」からしてウルトラ・クリア。それこそ、サウンドボードどころか公式ライヴアルバム級のサウンドが一気に広がるのです。すべての楽音が強烈なのですが、特に素晴らしいのはシンバルとヴォーカル。鋭いシンバルの残響ゼロっぷりは、本当にドラムにマイクをセッティングしたんじゃないかと思うほど。そして、精緻なギターとベースがリフの壁を作る中、それをぶち破るヴォーカルも超鮮明です。さらにオフィシャル風なのが大歓声。クリアな「Can't Turn You Loose」に「うぉー!」の大声援が巻き上がるのですが、このバランスが本当にオフィシャル盤かのよう。1人の声が飛び抜けるようなことなく、群衆ならではのきめ細やかな喝采が立ち上る。それをねじ伏せるように轟くスラッシュ・メタル……。このバランスは“最強”氏の入念な機材選びとセッティングの賜ですが、さらに加えてポジションの力も大きい。今回はほぼ満員の大盛況だったそうですが、2階席の最前席をご友人たちとキープ。1階席からサーファーも大暴れする大熱狂が湯気のように立ち上りつつ、間近にはオーディエンス・ノイズが皆無なのです。そして、2階最前だからこそ真っ直ぐに遮蔽物ゼロの楽音が飛び込み、距離感は機材セッティングで相殺。現場を体験された方からは「結構ダンゴだった」とうかがっているのですが、本作のサウンドからはそうは思えない。まさに「現場より良い音」というヤツなのでしょう……。その凄味がさらに炸裂するのがヘッドラインのMEGADETH。ANTHRAXも凄まじいサウンドでしたが、MEGADETHはさらにグイッとクリア。ANTHRAXのリフが“壁”だったのに対し、MEGADETHは1音1音が弾丸となって連射される感覚です。念のために申し上げておきますが、ANTHRAXのサウンドが劣っているわけではありません。この違いは現場PAによるものでして、言わば「バンドが出すサウンドの個性」。それを忠実、克明に描ききっているのです。【ベスト選曲ANTHRAX vs 大復活MEGADETH】そんなサウンドで描かれる両雄の素晴らしい事……。まず、ANTHRAXは、豪華極まるグレイテスト・ヒッツ。しかも、その大代表曲の猛ラッシュを演奏っぷりに揺るぎなし。とにかくリズムが凄い。凄すぎる! 要のチャーリー・ベナンテは巧者・カリスマひしめくスラッシュ・ドラマー界でも未だに随一ですし、スコット・イアンもフランク・ベロも然り。単に速いのではなく、単に正確なのでもなく、単にパワー押しでもない。グルーヴ感がたっぷりとまぶされ、それが柔軟に変化してドライヴ感にもなっていく。この自在にして鉄壁のリズム・モンスターぶりは、(音楽はかけ離れていますが)AC/DCクラスでしょう。そんなベスト選曲のANTHRAXに対し、ヘッドラインのMEGADETHは再び返り咲いた黄金期の輝きが眩しい。もちろん、MEGADETHも『PEACE SELLS… BUT WHO’S BUYING』から『CRIPTIC WRITINGS』までの大代表曲を満遍なく並べていますが、それと同時に最新作『DYSTOPIA』を大フィーチュアし、実に全18曲中7曲という大盤振る舞い。近年は新曲を入れてもせいぜい2-3曲というパターンだっただけに、これは強烈です。そして、それに相応しいほど新曲が素晴らしい。全米3位&グラミー賞獲得というだけでなく、曲自体が恐ろしくカッコ良く、重戦車の如き“ヘヴィMEGADETH”のド迫力が凄まじい。新加入のダーク・ヴェルビューレンは元SOILWORKの名手ですし、キコ・ルーレイロは言わずもがなの天才ギタリスト。スター両名が大成功ツアーを重ねることでMEGADETHにも馴染み、まさに黄金期の輝きで魅せてくれる。そして肝心要のデイヴ・ムステインも素晴らしい。かつてのキーとは違うものの、だからこそ滲むヘヴィネスに相応しいドス声の凄味。一時はそれでも声が出なくて苦しんでいましたが、本作では見事に復活してくれました。いまだ衰えず、長いキャリアに裏打ちされた堂々のライヴを見せつけるANTHRAX。その名バンドを従え、新たなる黄金期を満喫していたMEGADETH。単に“初来日30周年カップリング”というだけでなく、それぞれに凄まじくメタリックなショウを叩きつけてくれるライヴアルバムです。 Live at Zepp Osaka Bayside, Osaka, Japan 17th May 2017 TRULY PERFECT SOUND(from Original Masters)
Disc 1 ANTHRAX (62:43) 1. Can't Turn You Loose 2. Among the Living 3. Caught in a Mosh 4. Madhouse 5. Fight 'Em 'Til You Can't 6. Breathing Lightning 7. Efilnikufesin (N.F.L.) 8. Blood Eagle Wings 9. Antisocial 10. Indians 11. Long Live Rock 'n' Roll (Outro.)
Joey Belladonna - Lead Vocals Scott Ian - Rhythm Guitar, Backing Vocals Jonathan Donais - Lead Guitar Frank Bello - Bass, Backing Vocals Charlie Benante - Drums
MEGADETH Disc 2(54:57) 1. Prince of Darkness 2. Hangar 18 3. Wake Up Dead 4. In My Darkest Hour 5. The Threat Is Real 6. Sweating Bullets 7. She-Wolf 8. Conquer or Die! 9. Lying in State 10. Trust 11. Poisonous Shadows 12. Fatal Illusion
Disc 3(47:14) 1. A Tout Le Monde 2. Tornado of Souls 3. Post American World 4. Dystopia 5. Symphony of Destruction 6. Peace Sells 7. MC 8. Holy Wars... The Punishment Due 9. Silent Scorn
Dave Mustaine - Lead Vocals, Guitar David Ellefson - Bass Guitar, Backing Vocals Kiko Loureiro - Guitar, Backing Vocals Dirk Verbeuren - Drums