盟友クリス・ホルムズが復帰し、超・過激盤『KILL FUCK DIE』で本来の凶暴サウンドを取り戻した1997年のW.A.S.P.。その灼熱の現場を極上体験できるライヴアルバムが登場です。そんな本作に吹き込まれているのは「1997年5月21日チューリッヒ公演」。その強力オーディエンス録音です。先日は“THE CRIMSON IDOL Tour”のライヴアルバム『BONN 1992』をご紹介しましたが、そのツアー終了後にブラッキー・ローレスはソロ体制第2弾となる『STILL NOT BLACK ENOUGH』を発表。しかし、ツアーは行われずに活動は沈黙し、1995年8月にクリスの復帰が実現します。そして、それから1年半。1997年になって満を持して本格的な活動を再開。その狼煙となったのが『KILL FUCK DIE』のリリースであり、5年ぶりのツアーでした。まずは、そんな”再始動の1年”を振り返り、ショウのポジションを確かめてみましょう。・1月27日ー2月7日:欧州#1(7公演)・4月24日ー27日:欧州#2a(4公演)《4月29日『KILL FUCK DIE』発売》・4月30日ー5月30日:欧州#2b(23公演)←★ココ★・6月8日ー7月11日:北米(20公演)・9月17日ー21日:日本(4公演)これが1997年のW.A.S.P.。本格復帰の第一歩はアルバム・リリースと前後してヨーロッパ・ツアーだったわけですが、本作チューリッヒ公演は、その「欧州#2」20公演目。このツアーでは来日公演も思い出深いところですが、本作はその4ヶ月前にあたります。そんなショウで記録された本作は、目も醒めるクリア・サウンド。スネアの鳴り等に空間感覚も感じられはするのですが、真っ直ぐに届く芯はレーザー光線のように鮮やかで鋭く、ディテールもすこぶる繊細。もちろん、鮮やかすぎて耳に痛いサウンドでは意味がありませんが、本作にその心配はナシ。めちゃくちゃナチュラルな上にピークでも微塵も歪まない鮮度が絶大で、ブラッキーが囁くように歌っても、バンド全体でド迫力に迫っても機微まで極めて美しい。この感覚を日本録音に喩えるなら「まるで名門キニー」と呼びたい。サウンドボード的な密着感よりもクリアさを最重視し、「オーディエンスならではの美」を追究したサウンド。もちろん、あくまで喩えであって本作はキニー録音ではないのですが、あの美音の世界がどうしようもなく甦ってくるクリスタル・クリアな銘品なのです。そんな輝きのサウンドで描かれるのは、音の美しさとは真逆な暴虐のショウ。『THE HEADLESS CHILDREN』『THE CRIMSON IDOL』では正道ヘヴィメタルのドラマティシズムを極めていたブラッキーですが、復活に際して暴虐路線に回帰。「Snuff Rock(ぶっ殺しロック?)」を自称し、デビュー当時のショックロックを上回る攻撃的なステージを展開していました。その一方で、セットは代表曲がズラリと並んだグレイテスト・ヒッツでもあった。ここでその内容も整理しておきましょう。オープニング・メドレー・魔人伝:On Your knees/Hellion・エレクトリック・サーカス:I Don't Need No Doctor・クリムゾン・アイドル:Chainsaw Charlie (Murders In The New Morgue) その他・魔人伝:Animal (Fuck Like A Beast)/L.O.V.E. Machine/I Wanna Be Somebody・ラスト・コマンド:Wild Child/Blind In Texas・ヘッドレス・チルドレン:The Real Me・キル・ファック・ダイ:Killahead/U/Kill Your Pretty Face/The Horror ……と、このようになっています。ぶっちゃけた話が同じツアーの公式ライヴ盤『DOUBLE LIVE ASSASSINS』のDISC 1に、アンコールの「Blind In Texas」を追加したスタイルです。オープニングから約10分のメドレーでいきなりハイライトのような盛り上がりを作りだし、その後は各時代の代表曲を交えつつ、2本軸『W.A.S.P.』→『KILL FUCK DIE』をズラしていく感じ。徐々にアグレッションが増していくショウです。そんな中で暴虐一辺倒のように思えた『KILL FUCK DIE』の新曲たちも意外な表情を聴かせてくれる。アルバムでは冷徹インダストリアルなサウンドだったわけですが、ステージではいかにも生演奏らしい肉感が宿り、意外なほどクラシックスと馴染んでいる。もちろん、その旨みは『DOUBLE LIVE ASSASSINS』でも感じられましたが、オーディエンス録音の本作ではより一層生々しく感じられるのです。その後、2001年の『UNHOLY TERROR』をもって再び袂を別ってしまうブラッキー&クリス。しかし、この2人はやはり特別でした。そんな名コンビ復活の現場を超クリアな極上サウンドで立ち会える新発掘ライヴアルバム「1997年5月21日チューリッヒ公演」の強力オーディエンス録音。目も醒めるクリアな名録音で、真っ直ぐに届く芯はレーザー光線のように鮮やかで鋭く、ディテールもすこぶる繊細。もちろん、耳に痛いサウンドでは意味がありませんが、本作はめちゃくちゃナチュラルな上にピークでも微塵も歪まない鮮度が絶大。「オーディエンスならではの美」を追究したサウンドです。盟友クリス・ホルムズが復帰したばかりのフルショウを極上体験できる新発掘ライヴアルバムです。Volkshaus, Zurich, Switzerland 21st May 1997 ULTIMATE SOUND (77:07)
1. The End (Intro) 2. On Your Knees 3. I Don't Need No Doctor 4. Hellion 5. Chainsaw Charlie (Murders In The New Morgue) 6. Wild Child 7. Animal (Fuck Like A Beast) 8. L.O.V.E. Machine 9. Killahead 10. I Wanna Be Somebody 11. U 12. The Real Me 13. Kill Your Pretty Face 14. The Horror
Encore: 15. Blind In Texas Blackie Lawless - lead vocals, rhythm guitar Chris Holmes - lead guitar Mike Duda - bass, backing vocals Stet Howland - drums, backing vocals