本作に吹き込まれているのは「1974年2月10日バーミンガム公演」。そのヴィンテージ・オーディエンス録音です。「ゲイリー+THIN LIZZY」というと超名盤『BLACK ROSE』が浮かぶかも知れませんが、それはずっと後年。三度目に加入した時の作品でした。本作の1974年はそうではなく、エリック・ベル脱退直後。まだツインギター体制になっていない時期のTHIN LIZZYでした。その辺の状況を整理するためにも、ここで当時の歩みを紐解いてみましょう。《1月:ゲイリー・ムーア加入》*1月4日ー17日:アイルランド(11公演)*2月1日ー3月16日:英国#1(25公演)←★ココ★*3月28日ー4月27日:英国#2(8公演)《4月:ゲイリー離脱→ジョン・デュ・カン/アンディー・ジー加入》・5月11日ー22日:ドイツ(9公演)《6月:ジョン/アンディー離脱→Bロバートソン/Sゴーハム加入》・6月21日ー8月24日:英国#3(18公演)・9月28日ー12月31日:欧州(42公演)《11月:ゲイリーがCOLOSSEUM IIに参画》
※注:「*」印はゲイリー入りの公演で、「・」印はゲイリー脱退後。これが1974年のTHIN LIZZY&ゲイリー・ムーア。本編の日程を併せてみると分かりますが、1973年末までTHE GARY MOORE BANDのライヴがあり、その5日後にはTHIN LIZZYの一員としてステージに立っていたわけです。その後、シングル『Little Darling/Sitamoia』や『NIGHTLIFE』に収録される「Still in Love with You」等を録音しつつ、ライヴ活動も実施。本作のバーミンガム公演は、そんな一幕。「英国#2」の7公演目にあたるコンサートでした。そんなショウを記録した本作は「ゲイリー入りのトリオLIZZY」を代表する名録音。さすがに貴重音源らしいヴィンテージ・サウンドではありますが、かと言ってゴワゴワ/モコモコに耐えるようなサウンドでは(まったく)なく、ノイズの向こうに演奏を探すようなタイプでも(決して)ない。クラブ規模の密着感が美味しく、力強い芯が間近に迫る。特にギターは極太でして、サウンドボード級の密着感で機微の機微まで目の前感覚で味わえるのです。そのダイレクト・サウンドで描かれるのは、シングル・ギター時代のレア曲たっぷりのステージ。ここでその内容も整理しておきましょう。シングル・Little Darlin'/Showdown/Black Boys On The Corner/Whisky In The Jar/Sitamoia その他・西洋無頼:Little Girl In Bloom/My Baby Doesn't Love Me (Slow Blues)/The Rocker・その他:Things Ain't Working Out Down At The Farm/Crowlin'/Suicide/Hard Drivin' Man ……と、このようになっています。ゲイリー自身が「俺のスタイルはCOLOSSEUM II」で確立したと語っているように、ここではまだ「ギター・クレイジー」と呼ばれた暴れっぷりには至っていない。しかし、その極太なトーンはすでに鱗片を見せており、印象的なフレーズ・センスも情熱が滾る弾きっぷりも凡百のギタリストとはまったく違う次元にいる。エリック・ベルトは比較にならない厚い極太ギターで生まれ変わったトリオ時代の名曲群がたっぷりと楽しめるのです。上記のスケジュールをご覧の通り、わずか4ヶ月でTHIN LIZZYを去ったゲイリーは、ジョン・ハイズマンと出逢ってCOLOSSEUM IIを結成。シーンを震撼させるギター・クレイジーが誕生しました。本作は、そんな覚醒直前のゲイリー・ムーアが楽しめるライヴアルバムであり、ライノット/ムーア・コレクション的にもSKID ROWと『BLACK ROSE』の間を繋ぐ必須のミッシングリンクです。踏み込めば踏み込むほど興味深く味わい深い1枚。Live at Barbarella's, Birmingham, UK 10th February 1974 TRULY AMAZING/PERFECT SOUND (72:42)
1. Things Ain't Working Out Down At The Farm 2. Little Darlin' 3. Crawlin' 4. Little Girl In Bloom 5. Showdown 6. Suicide 7. My Baby Doesn't Love Me 8. Black Boys On The Corner 9. Whisky In The Jar 10. Sitamoia 11. The Rocker 12. Hard Drivin' Man
Philip Lynott - Vocals, Bass Gary Moore - Guitar, Vocals Brian Downey - Drums