トニー・マーティン時代のBLACK SABBATHが、コージー・パウエルを迎えてその真価を発揮した「HEADLESS CROSS」は、リリースから25年近くを経た今なお、ファンの間では高い支持を受けています。そのアルバムに伴うツアーでは、タイトル曲の 「Headless Cross」と「When Death Calls」の2曲が常に演奏され、その後'90年代のSABBATHライヴや、近年トニー・マーティンが行っているソロライヴでも定番曲として取り上げ られています。しかし「HEADLESS CROSS」における楽曲は、その2曲以外も名曲ぞろい。優れたクオリティに満ちた内容は、ファンに「他の曲も聴きたい」と思わせます。本作「CALL OF THE WILD」は、「HEADLESS CROSS」ツアー3公演目の1989年6月4日、サウスカロライナ州コロンビアの"メリウェザー・ポスト・パビリオン"公演を、高音質オーディエンス録 音で全編収録。このツアー序盤のみのレアナンバーである「Call Of The Wild」や、ファンの人気が高い「Devil And Daughter」といった名曲を、安定したオーディエンス・サウンドで楽しめます。ステージとテーパーの間には若干の距離がるものの、ライヴの全編を通じて音の見通しは優れており、目立った割れや歪みも無い、聴き易いサウンドが実現し ています。さらに各人のプレイもしっかりした分離感で聴き分ける事ができ、ツアー序盤のセットリストをストレス無く楽しめます。さらに演奏が優れているのが本作の良いところ。「SABBATHの名に恥じないライヴをしよう」というメンバーの意気込みを感じる好演が展開されてお り、冒頭の「Headless Cross」から、新加入のコージーとニール・マーレイのリズムセクションは強固なプレイを披露。本録音ではコージーのドラミングも一音単位でしっかりと 聴き取れます。アイオミの安定したギター・プレイはもはや言わずもがな。「Neon Knights」に「Children Of The Sea」では充実したソロを披露し、マーティンのヴォーカルともども、メロディアスなサウンドが神秘的な世界観を堪能させます。本作の大きな聴き所は、タイトルどおり「Call Of The Wild」です。この曲はコーラス部分の歌詞にあるように、元は「Hero」というタイトルでしたが、OZZY OSBOURNEが同時期のアルバム「NO REST FOR THE WICKED」に同名の楽曲を収録していたため、曲名が差し替えになったという、いわくつきの曲。しかし本録音で聴ける演奏は、そのような"背景"を忘れ させる素晴らしさ。コージーとニールが固めるリズム上で、マーティンのメロウなヴォーカルがしなやかに流れる曲想は、聴き手も思わず耳を惹き付けられるで しょう。この曲がほんの数公演でセット落ちしてしまったのは残念と言う他ありません。ライヴ中盤は「The Mob Rules」からの「When Death Calls」および「War Pigs」、さらにディスク2冒頭の「Die Young」そして「Black Sabbath」と展開。曲の緩急だけでなく、叙情性とヘヴィネスの対比も見事で、ライヴの流れにメリハリを与えています。そして後半の聴き所は、これも同年ツアーのみの演奏となった「Devil And Daughter」。本録音で聴けるテイクは、マーティンのヴォーカルが好調なうえに、音質も聴き易いとあって、ファンを喜ばせる内容になっています。ライヴ終盤は「Iron Man」と「Children Of The Grave」のメドレーに、「Heaven And Hell」と「Paranoid」の組曲がドラマティックに繰り広げられ、ライヴを劇的に締めくくります。この年の北米ツアーは「HEADLESSIN AGORA」に収録されたクリーヴランド公演で終了し、秋以降はヨーロッパから日本へとサーキットします。SABBATHが9年ぶりの来日公演を実現した 時のセットでは、すでに「Devil And Daughter」も外れていましたが、代わりに「The Shining」を加えたベスト選曲のショウを披露してくれました。そのセットリストはファンの期待に沿う素晴らしいものですが、「HEADLESS CROSS」のプロモーション・ライヴとしての内容で言えば、本録音のセットのほうが、むしろ優れていると言えるでしょう。貴重な楽曲を優れたサウンドで 堪能させる本作は、文句なしに全てのSABBATHファン必聴の一本。
Live at Merriweather Post Pavilion, Columbia, USA 4th June 1989 GREAT SOUND
Disc 1 1. Ave Satani/The Gates Of Hell 2. Headless Cross 3. Neon Knights 4. Children Of The Sea 5. Call Of The Wild 6. The Mob Rules 7. When Death Calls 8. War Pigs
Disc 2 1. Die Young 2. Black Sabbath 3. Devil & Daughter 4. Iron Man 5. Children Of The Grave 6. Heaven And Hell 7. Paranoid/Heaven And Hell Tony Iommi - Lead Guitar Tony Martin - Lead Vocals Neil Murray - Bass Cozy Powell - Drums Geoff Nicholls - Keyboards