ミラード・マスターはまたまた驚きのジョー・コッカー。しかもミラードが録音してくれたのは1991年の彼のステージという、これまた意外な時期。それは公開してくれたJEMSにとっても同じだったようで、珍しく録音に関するエピソードが短く済まされているという(笑)。しかしミラードが録音してくれたのは面白い時期で、前年には1989年のステージを収めらライブアルバム「JOE COCKER LIVE」がリリースされ、この年はニューアルバム「NIGHT CALLS」がリリースを控えていたという時期。ただしアメリカで同アルバムがリリースされるのは少し先のこと。よって大まかな構成は同ライブアルバムに沿ったものでありながら、既に「Love Is Alive」やブラインド・フェイスのカバー「Can't Find My Way Home」といった「NIGHT CALLS」収録曲が演奏されているという攻めの構成が今となっては新鮮。その上、大ヒット曲「愛と青春の旅立ち」はライブ前半でサラッと歌われるという意外な扱い。これが日本のステージだとしたら大盛り上がりなのでしょうが、ここコスタ・メサではむしろ懐かしの映画「ナインハーフ」に使われた「You Can Leave Your Hat On」、それ以上にレイ・チャールズの「Unchain My Heart」でより大きな盛り上がりを見せているところがお国柄。そして何と言っても抜群の音質で、今回もオーディエンス録音の最高峰たるミラード・クオリティが炸裂。音像は極めてオンであり、コッカーの熱唱ぶりだけでなく豪華メンバーによるバックの演奏もサウンドボードチックに味わえる。 おまけに「JOE COCKER LIVE」の時と違い、このツアーではロックファンにジミー・ペイジのバンドでボーカリストを務めたことで知られるジョン・マイルズ(昨年亡くなられました)がギターにキーボード、そしてバックコーラスに大活躍。これは彼が「NIGHT CALLS」のレコーディングに参加した縁から実現したのでしょう。ピアノに関してはコッカーと付き合いの長いクリス・ステイントンがいますので、シンセの方は主にマイルズが担当。その音色が何とも時代を感じさせる懐かしさなのですが、これもまたミラード録音ならではの生々しさ。さらにバックバンドは元ウイングスのスティーブ・ホリーにベーシストがTMスティーブンスという豪華なリズム隊でして、フィナーレ「High Time We Went」では彼らのソロ回しもたっぷりフィーチャー。この展開は「JOE COCKER LIVE」でも見られたものですが、そこではライブアルバム制作時にスティーブンスのベースソロがバッサリとカットされてしまっており、ここでは10分にも及ぶ演奏や各メンバーの見せ場もしっかりコンプリート。そして有能なミュージシャンに支えられてコッカーは実に気持ち良さそうに歌い上げる。「JOE COCKER LIVE」に負けじと彼のキャリアを総ざらいしたような名曲満載のセットリストはもちろん、そこに驚異のミラード・クオリティが合わさった最高のオーディエンス・ライブアルバムと呼んでも過言ではない。何より「愛と青春の旅立ち」のライブバージョンが極上音質のミラード録音で楽しめるだなんて!流石ミラード。驚愕の超高音質です。
Live at Pacific Amphitheatre, Costa Mesa, CA, USA 23rd July 1991 ULTIMATE SOUND
Disc 1 (52:13) 1. Intro 2. Cry Me A River 3. Feelin' Alright? 4. Hitchcock Railway 5. Can't Find My Way Home 6. Up Where We Belong 7. Shelter Me 8. Just To Keep From Drowning 9. Guilty 10. Lonely Avenue 11. You Can Leave Your Hat On 12. Band Introductions 13. When The Night Comes
Disc 2 (40:54) 1. Love Is Alive 2. Unchain My Heart 3. With A Little Help From My Friends 4. You Are So Beautiful 5. The Letter 6. High Time We Went
Joe Cocker - vocals Chris Stainton - keyboards John Miles - keyboard, guitar, vocals Phil Grande - guitar Steve Holley - drums T. M. Stevens - bass Deric Dyer - saxophone Sydney Davies - backing vocals Maxine Sharp - backing vocals