1974年6月3日のスイスはベルン公演を約78分に渡って高音質オーディエンス録音で完全収録。録音者は ELPの1971年ゾーフィンゲン、1972年ヴェツィコン、1973年と1974年チューリッヒと(それぞれ「DEVELOPING STORY」「YOU NEVER HEARD A WORD」「REAL BLADE OF GRASS」で音盤化)を発表したテーパーによるもので、本盤も安定した優良なサウンドで、貴重なショウを記録しています。1970年のナイス解散後、ベーシストのリー・ジャクソンはジャクソン・ハイツというバンドを結成し、ドラマーのブライアン・デヴィソンはエブリ・ウィッチ・ウェイを結成するものの、商業的な成功は得られず、それぞれのバンドは解散。その後、2人は「ナイスの夢よ、もう一度」とばかりに、1973年10月にスイス人のキーボード・プレイヤー、パトリック・モラーツとともにキーボード・トリオ「レフュジー」を結成し、翌1974年4月にカリスマレーベルより唯一のアルバムを発表しています。(母国スイスでは映画音楽を手掛けていたモラーツは、1971年に渡英、「メインホース」という4人組バンドを結成し、ポリドールから唯一のアルバムをリリースしています。当時はバレエ団のバックバンドとして来日もしているとのことです。)モラーツの加入のきっかけは、リーがジャクソン・ハイツで活動していた際に、モラーツがセッションとして参加し、「キース・エマーソン以上の才能がある」と感じたためであると言われてますが、このライブ盤でも聴ける通り、シンセやメロトロンといったマルチキーボードを巧みに操り、シンフォニックで華麗な音宇宙を構築するモラツの演奏は絶品で、スタジオアルバムだけでは掴みづらい、オリジナリティ溢れるプレイの数々をたっぷりと堪能することができます。全編を通して、シンセを多用している分、そのサウンドはナイス以上にカラフルであり、強烈な色彩感を感じさせる高品質なライブはまさに絶品。この時期、ここまで高品質に弾きまくることのできるロック・キーボーディストは限られており、リック・ウェイクマンの脱退で困り果てていたマネージメントがモラーツに白羽の矢を立て、半ば強引に説得に入ったというのも納得の凄まじいばかりの演奏を聴くことができます。超技巧集団のイエスでは音の壁に埋もれてしまい、若干正体の掴みづらい(実力が発揮しきれていない?)部分もあったモラーツですが、逆にレフュジーでは「天才がやりたいようにやっている」感が伝わってきて、非常に気持ち良く、プレイの数々に聴き入ることができます。大曲のアレンジはかなり洗練されており、楽曲的にも、器楽的にも聴き応えは満点。時にELP、イエス、そしてムーディブルースを感じさせる独特の感触に満ちたオリジナルなサウンドは、モラーツ・ファンならずとも一聴の価値があります。セットはアルバム収録曲に加え、ナイス時代の「The Diamond Hard Blues Apples Of The Moon」や「She Belongs To Me」も演奏しており、キース・エマーソンとの対比も興味深い演奏が聴けます。特にキースへのリスペクトの感じられる「She Belongs To Me」での強烈な切れ味鋭いオルガンプレイは圧巻で、後半の「タルカス」ばりのプレイは強烈なシンセも含め、聴きごたえ満点!!モラーツにとっても母国スイスでの凱旋ライブは、気合いの入ったコンサートとなったのではないでしょうか。短命に終わった悲運のバンド「レフュジー」ですが、ライブにおいては、ナイス、イエスとは違う、実にオリジナルな音世界をポジティブなムードいっぱいにクリエイトしていたことが判る、大変重要かつ魅力的な一枚です。プログレファンは勿論、全てのブリティッシュ・ロック・ファンに聴いて頂きたい、貴重かつ高品質なタイトルです。Live at Festhalle, Bern, Switzerland 3rd June 1974 TRULY AMAZING/PERFECT SOUND
1. Credo a. Prelude b. I Believe, Pt. 1 c. Credo Theme d. Credo Toccata & Song e. Agitato f. I Believe, Pt. 2 g. Variation h. Main Theme & Finale 2. The Diamond Hard Blues Apples Of The Moon 3. Papillon 4. Someday 5. She Belongs To Me 6. Grand Canyon Suite a. The Source b. Theme For The Canyon c. The Journey d. Rapids e. The Mighty Colorado Lee Jackson - Bass, Vocals Brian Davison - Drums Patrick Moraz - Keyboards