ボニー・レイット「THE CHRISTIC INSTITUTE BENEFIT CONCERT 1990 DAY 2: MIKE MILLARD MASTER TAPES」を皮切りとして、JEMSチームのミラード・マスター公開は五週連続で女性アーティストのステージを捉えた彼の録音を公開してくれるとのこと。その第二弾は懐かしのトレイシー・チャップマン。チャップマンと言えばシンセポップ最盛期の1988年にシンプルな弾き語りサウンドを引っ提げ、自身の名前を冠したファースト・アルバムが大当たり。シンセや打ち込みが当たり前だった時代に文字通りの涼風を吹かせてくれたのでした。そのアルバムは大ヒットを受けて一躍時代の寵児となった彼女は88年の後半に行われた複数アーティスト参加のアムネスティ主催による「HUMAN RIGHTS NOW」ツアーの一員に。このパッケージ・ツアーはブルース・スプリングスティーンにスティング、そしてピーター・ガブリエルといった当時のスター達が一堂に会したツアーとして大きな話題を呼んだのですが、人権を掲げた本ツアーに黒人女性トレイシーの参加は理にかなったもの。ミラードとしてはスプリングスティーン(彼の音源は公開済み)やピーター・ガブリエル(将来マスターが公開されるとのこと)目当てだったことでしょうが、そんな彼ですら無視できないほど脚光を浴びていたのが他ならぬトレイシーだったのです。大スターたちの前に新進気鋭たるトレイシーはいかにも彼女らしくソロの弾き語りステージを披露。イベント・ツアーということからこの日はLAコロシアムのような大会場が使われていますが、そこでも臆することなく彼女はシンプルなステージで通します。それどころか「Behind The Wall」はアカペラで歌い通すほどの自信を見せつけてくれました。翌年にはグラミー賞の栄誉に輝く「Fast Car」もコロシアムのステージでサラリと演奏してみせ、何より懐かしい名曲でしょう。アコギ一本でスターを待ちわびる会場を暖めてみせる彼女の頼もしいこと。そして今回のミラード音源ですが、発見されたファースト・ジェネレーション・マスターは何かしらの不具合が生じていたのでしょう。モノラル化された状態で公開されています。ところがどっこい、このモノラル音質がトレイシーの弾き語りステージに上手くハマっている。それでいてミラード録音らしく音像はあくまでオン。彼がトレイシー・チャップマンまで録音してくれていたとは本当に驚きですが、そのクオリティは今回も素晴らしい。むしろ上昇気流に乗った絶頂期の彼女のステージの記録として世界中から注目を浴びることでしょう。Los Angeles Memorial Coliseum, Los Angeles, CA, USA 21st September 1988 TRULY PERFECT SOUND Human Rights Now! Amnesty International 1988 (36:25)
01 Across The Lines 02 She's Got Her Ticket 03 Behind The Wall 04 Fast Car 05 Freedom Now 06 Baby Can I Hold You 07 Mountains O' Things 08 Talkin' 'Bout A Revolution 09 Why?