本作が記録されたのは「1980年10月14日ヒルフェルスム」。オランダの公共放送局“KRO”で収録されたサウンドボード録音です。このステージは本編解説の「欧州#1」の30公演目にあたりますが、通常コンサートではなく放送用のスタジオライヴでした。さらに重要なのは、初めての大陸ライヴだった事。U2のライヴ活動は1976年からスタートしていますが、それまでは母国アイルランドかイギリスだけでした。しかし、『BOY』のリリースを機に世界進出を開始。アルバム発売を一週間後に控えたタイミングで海峡を渡り、大陸侵攻の第一歩として臨んだのがヒルフェルスムでのラジオ収録……つまり、本作なのです。その歴史的な番組を伝える本作は、過去最高を更新する銘品。同じく既発録音が存在するわけですが、研究家が厳選したベスト・マスターなのです。そのサウンドは「オフィシャル級」と呼んで差し替えないもの。生演奏が無加工で丸出しになったミックスですし、厳密に言いますと極わずかなヨレが数カ所ある。そのため「完全」オフィシャル級とは呼びづらいのですが、それはヘッドフォンで顕微鏡的に聴き込んだ場合の話。聴いて愉しむ分にはオフィシャル作品と大差なく、むしろ昨今の発掘オフィシャル系ならこれくらいは珍しくない。そんな絶品サウンドで繰り広げられるのは、世界を駆ける最初の羽ばたき。セットは本編プレスCDとも異なりますので、比較しながら整理しておきましょう。ボーイ(8曲)・I Will Follow/An Cat Dubh/Into the Heart/A Day Without Me(★)/Twilight/The Electric Co./Stories For Boys/Out of Control その他(3曲)・Touch/Boy/Girl(★)/11 O'clock Tick Tock※注:「★」印は『DEN HAAG 1981』で聴けない曲。……と、このようになっています。『BOY』を軸としたバランス感覚は本編プレスCDと共通しているものの、そこでは聴けない「A Day Without Me」も披露され、さらにアイルランド限定をだった『THREE』の「Boy/Girl」までサウンドボードで楽しめるのです。そして、そんなセットを綴るパフォーマンスこそが必聴。緊張しているのか堅さも感じられ、それを振り払おうと思い切りよく叫ぶボノの歌声も初々しい。曲間の語りも歔欷丸出しでして、「Twilight」の前には「来週リリースされる『BOY』ってアルバムの曲」と紹介する。レア曲だけでなく、お馴染みのレパートリーでもまるで違って聞こえるのです。まさに「駆け出しの若造」だったU2。その息づかいまでもが脳みそに流し込まれる貴重サウンドボード・アルバムです。クオリティ/曲数面では及ばないものの、初々しい黎明の醍醐味では上回ってさえいる傑作です。そんな貴重ライヴアルバムの最高峰版。KRO Studios Hilversum, Netherlands 14th October 1980 SBD (43:05)
1. I Will Follow 2. Touch 3. An Cat Dubh 4. Into The Heart 5. A Day Without Me 6. Twilight 7. The Electric Co. 8. Stories for Boys 9. Boy/Girl 10. Out of Control 11. 11 O'Clock Tick Tock FM RADIO BROADCAST