王者IRON MAIDENの歴史でも絶頂を極めていた一大全盛期“WORLD SLAVERY TOUR”。その栄光に充ち満ちた現場をリアル体験できるライヴアルバムが登場です。そんな本作に吹き込まれているのは「1984年11月14日バーゼル公演」。その傑作オーディエンス録音です。“WORLD SLAVERY TOUR”と言えば、『死霊復活』のメインとなったロングビーチ・アリーナが有名ですが、さらに『SLAVERY MASTER』『STOCKHOLM 1984』『NEWCASTLE 1984 2ND NIGHT』といった決定的な名盤もご紹介してきました。それらの位置関係を知る意味でも、まずは当時のスケジュールからおさらいしてみましょう。1984年・8月9日ー9月1日:欧州#1(15公演)《9月3日『POWERSLAVE』発売》・9月3日ー11月14日:欧州#2(51公演)←★ココ★・11月24日ー12月21日:北米#1a(20公演)←※SLAVERY MASTER 1985年・1月3日ー7日:北米#1b(5公演)・1月11日:ROCK IN RIO出演・1月14日ー3月31日:北米#2(50公演)←※死霊復活(A-C面)・4月14日ー5月10日:日本/豪州(15公演)・5月23日ー7月5日:北米#3(31公演)《10月14日『LIVE AFTER DEATH』発売》 これが1984年/1985年のIRON MAIDEN。本作のバーゼル公演は、その序盤。『POWERSLAVE』リリース前後の行われた「欧州#1」の最終日にあたるコンサートでした。『NEWCASTLE 1984 2ND NIGHT』『STOCKHOLM 1984』もこの「欧州#1」のライヴアルバムで、本作は前者の約2ヶ月後、後者の12日後でもありました。そんなショウを真空パックした本作は、瑞々しくも端正な美録音。プレス化されていないことからも「これぞツアーNo.1!」と喧伝するタイプではないのはご理解いただけると思いますが、爆音・轟音の類では(まったく!)なく、ボケボケ・ボワボワでも(完全に!!)ない。ホール鳴りも吸い込んではいますが、それがディテールを隠さず、むしろ芯に厚みとダイナミズムを添加するタイプ。しかも、その鳴りがきめ細かいために艶やかな美しさを湛えており、そして芯自体が鳴りを突き破るほど力強いために遠さにもなっていない。この感覚を日本で喩えるなら、名門キニーが近い。「サウンドボード代わり」を目指すのではなく、あくまでも「オーディエンスだからこその美」を湛え、それを追及したような美音なのです。そして、本作はその最高峰盤でもある。実のところ原音はピッチが遅く、最近になって「補正板!」としてネットにも登場しました。ところが、公開した人物の補正が甘く、今度は後半のピッチを上げすぎていた。本作は、そんなピッチをビシッと揃えているだけでなく、さらにメリハリも向上。「美しいけれど、やや厚すぎ」という感じだった鳴りをスッキリと聴きやすく整えました。そんなベスト・バージョンで描かれるのは、ツアー最初の山場を見事に制覇したブリリアントなフルショウ。セットはプレス名盤でもお馴染みのモノですが、改めて整理しておきましょう。パワースレイヴ(5曲)・Aces High/2 Minutes To Midnight/Rime Of The Ancient Mariner/Losfer Words (Big 'Orra)(★▼)/Powerslave クラシックス(10曲)・鋼鉄の処女:Iron Maiden/Running Free/Sanctuary(★)・魔力の刻印:The Number Of The Beast/Hallowed Be Thy Name/22 Acacia Avenue(▼)/Run To The Hills・頭脳改革:The Trooper/Revelations/Flight Of Icarus ※注:「★」印は『死霊復活』のライヴアルバム版で、「▼」は映像版で聴けない曲。……と、このようになっています。そして、このセットを綴るパフォーマンスこそが聞き物。「欧州#1」はわずか3ヶ月あまりで全66公演という苛烈なツアーだったわけですが、本作はその最終日。達成感と開放感が爆発するようなテンションが凄まじく、明日の調子を心配する必要のない思い切りの良さも全開。アリス・クーパーは夏休み前の終業式の心理を「School's Out」で歌っていましたが、本作はショウ丸ごとそのテンションが貫かれているのです。その一方で勢いが余ったのか、ツアー疲れが出てしまったのか、完璧なショウというわけでもない。その代表例が「The Number Of The Beast」。ここではブルース・ディッキンソンが崩れまくり、歌詞が出なくなっています。突如として頭が真っ白になったのか、(観客など)他のことに気を取られたのか。理由は判然としませんが、半インスト状態な「The Number Of The Beast」のトホホ感が面白かったりもします。何公演聴いても全盛のド迫力に圧倒される“WORLD SLAVERY TOUR”。そのフルショウを端正サウンドで体験できるライヴアルバムの新名盤です。時間を戻せるならもう一度味わいたい、あの現場。「1984年11月14日バーゼル公演」の傑作オーディエンス録音。瑞々しくも端正な美録音で、ホール鳴りもディテールを隠さず、むしろ芯に厚みとダイナミズムを添加するタイプ。その原音を細心マスタリング磨き込んだ最高峰更新盤です。全66公演に及ぶ欧州レッグの最終日で、達成感・開放感が溢れ出すテンションが素晴らしく、その一方でブルースの歌詞が飛んでしまう「The Number Of The Beast」も面白い。全盛の現場をリアル体験できる新名盤です。St Jacob Sporthalle, Basel, Switzerland 14th November 1984 PERFECT SOUND Disc 1 (56:17) 1. Churchill's Speech 2. Aces High 3. 2 Minutes To Midnight 4. The Trooper 5. Revelations 6. Flight Of Icarus 7. Rime Of The Ancient Mariner 8. Losfer Words (Big 'Orra) 9. Powerslave 10. Guitar Solo
Disc 2 (43:01) 1. The Number Of The Beast 2. Hallowed Be Thy Name 3. 22 Acacia Avenue 4. Iron Maiden 5. Run To The Hills 6. Band Introductions 7. Running Free 8. Sanctuary