1980年代初め~半ばにかけてWEA(ワーナー・エレクトラ・アトランティック ※現在のワーナーミュージック)によってリリースされたCDのことをターゲットCDと呼びます。このCDの多くはアメリカでまだCDの国内生産がされる前に西ドイツか日本で作られましたが、中にはアメリカやフランスで作られたものもあります。「ターゲット」という名前はこのCDのデザインが銃の照準線や的に似ていることから来ているそうです。またラベルの非常に目を引く色合いですぐそれとわかるのも特徴です。現在のCDに比べるとノイズキャンセレーションなどを行っていない、言ってみればオリジナルにより近い音質であること、多くがコピーではなくオリジナル音源であること、初期のコンパクトディスクはこういうものだったんだという歴史を振り返るという意味でも価値があることが、特徴のようです。今回、このコーナーでご紹介するのがツェッペリンの5枚目アルバム「聖なる館」のターゲットCD。勿論、現在、このCDの音を試聴するのは不可能であり、そこに本企画の意味があるといって良いでしょう。現行のリマスター版、ないしは過去のCDやレコードの音声と比較すると、確かに、過剰なリマスターやイコライズ感のないサウンドで、それが独特の魅力を感じさせてくれます。ただし、先週ギフトリリースされた、4枚目のターゲットCDを聴いたときのフラットな印象は本盤ではあまり感じられません。元々、カラフルな色彩感と特異な音像をもった本作は、過剰なリマスターを施すとよりアクの強いサウンドになってしまいますが、本盤の「あるがままのHOUSES OF THE HOLY」の音は多くの洋楽ファンを魅了すること間違いありません。押しつけがましくない全体に調和した、The Song Remains The Sameのベースノートは、このくらいの響きがベストであることは一聴してすぐに判断が付きます。重ねと詰め込みが、当時の録音技術の限界を超えているのは容易に判断が付く音ですので、地味でも派手でもない、このフラットでクリアーなマスターサウンドが5枚目には合っているのでは・・・と感じられる一枚です。これもまた、音の鮮度は良いが地味と感じる人もいるかと思いますが、押し付け過剰なプロダクションに辟易している人には間違いなくお薦めの一枚です。
Taken from the original German Target CD(Atlantic 19130-2) (41:02)
1 The Song Remains The Same 2 The Rain Song 3 Over The Hills And Far Away 4 The Crunge
5 Dancing Days 6 D'yer Mak'er 7 No Quarter 8 The Ocean