ロック界随一の個性派ギタリスト、ブライアン・メイ。彼の貴重な廃盤オフィシャル映像が復刻です。その映像とは教則ビデオ『STAR LICKS』。その日本盤VHSをDVD化した傑作映像です。教則ビデオというとギタリスト御用達のマニアックな内容のようですが、本作はギターを弾かない方にも面白い傑作。もちろん、機材の解説や名曲のソロやフレーズを本人が演奏する王道スタイルではあるのですが、そこで語られる内容には制作裏話やブライアンだからこそのユーモアが滲む。しかも、本作は日本盤VHSのため、日本語字幕付き。実のところ、この映像自体はブライアンの公式チャンネルで公開されてもいるのですが、この字幕があるのとないのとでは、面白さが100倍違うのです。気になる内容の前に、まずは概要から。このビデオが作られたのは1984年のこと(公式チャンネルでは1983年となっていますが、「It's A Hard Life」も取り上げているので1984年です)。教則ビデオ・シリーズ“MASTER SESSIONS”の1本としてリリースされました。このシリーズには他にもスティーブ・ルカサー、トニー・アイオミ、アルバート・リー、リック・エメット、ブラッド・ギルス、ナンシー・ウィルソン、果てはトニー・マカパインやマイケル・アンジェロに至るまで、多彩なギタリストがラインナップされていました。その後も欧米で何度か再発されたものの、正式なDVD化はなし。日本盤もVHSのみで、90年代に一度リリースされただけでした。本作は、国内のコアマニアが秘蔵していたVHSから精緻にデジタル化されたもの。テープの最後数分にわずかな歪みがあるので完全無欠とまでは言えませんが、断言はできないという程度。そこに至るまでのほとんどのシーンは美麗でノイズもなく、流通そのものが圧倒的に少ない教則ビデオにしては奇跡的なクオリティでデジタル化されています。さて、そんな本作を再生するとブライアンにまず脱力する。ラフなトレーナー姿で座ってつま弾くのですが、その胸にデカデカと描かれているのは「クイーン日本公演旅行1982」の文字。「QUEEN JAPAN TOUR 1982」ではありません。明朝体のカナ漢字。このビデオは当初欧米のみのリリースだったわけで、日本向けのサービスで着ているわけではない。外人にとってはエキゾチックなのでしょうが……。公式のツアーグッズだったのか、ファンのプレゼントだったのか分かりませんが、濃紺の下地に白抜き文字という配色のせいもあってほとんど温泉宿の暖簾です。そして、まずは教則定番の機材解説が始まる。ここもなかなかに微妙。ブライアンと言えば、お手製のRED SPECIAL&6ペンス・コインがトレード・マーク。普通であればギタリスト以外にはピンと来ないシーンなのですが、本作はむしろ逆。ブライアンは「このギターは若干手が加えられているものの基本的に他と同じだ」と、まるで市販ギターを改造したかのような言い訳(?)をしていますが、ギタリストの参考と言うよりは、伝説ギターの生音こそが美味しい。当時はコピーモデルも手に入らなかったらしく「こういうギターのコピーものもそのうち出回るようになるはずだ」「このギターと同じ音が出せるなら僕は非常に助かる」と語るブライアン。思わず、“だったら何の為に解説してんのさ?”ともツッコミたくなりますが、それは彼も分かっているようで「まあとにかく、君達がこのビデオから何かを学んで欲しいと思うよ」と本音が透けるのです。もちろん、これは当時の話であり、現在ではコピーモデルも簡単に手に入る。QUEENサウンドを追及するギタリスト諸氏にも興味深い話が連発。内容はブースターやコーラス・エフェクター、ディレイのセッティングと具体的になっていき、結婚行進曲を弾いても、20世紀FOXのテーマを弾いても一発で「QUEENだ!」となるサウンドの秘密がつまびらかになっていきます。機材やセッティングの話が終わると、いよいよ奏法。まずは普通のテンポで弾き、ゆっくりと弾き直すというお約束の流れでQUEENの名ソロ・フレーズを目の前で実演してくれます。そのラインナップは実に多彩。デビュー作の「Liar」から『THE WORKS』の「It's A Hard Life」まで全18曲の20フレーズに及び、サイド・プロジェクトの「Star Fleet」まで披露してくれます。ここでやらかしているのは日本語字幕の訳者。「Liar」を「Lie」、「Modern Times Rock 'n' Roll」を「Roger's Rocker」、「Father To Son」が「A Little Things from Father to Son」と意味不明なことになっている。しかし、それさえもが大らかだった昭和の薫りなのです。もちろん、ブライアン自身のコメントも面白い。例えば、ライトハンドを披露する「It's Late」。この曲が発表されたのは1977年でVAN HALEN革命よりも前だったわけですが「ここではハンマリング・オンを使ってる。僕はとことんこれを追及したことはないけど、エディ・ヴァン・ヘイレンなんかは深く追及して違ったものを作り上げたよね。でも当時は僕にとっても面白く感じられたことなんだ」と、親交の深いエディに配慮しつつ、俺もやってたぞとさり気ないアピールが微笑ましい。極めつけは「It's A Hard Life」でしょうか。「フレディはボーカルについていく感じでやってほしいと言うので、ボーカルと溶け合うようにやった」と制作時の様子を語りつつ、「でも僕はむしと逆らう感じでやりたかったんだ。だからここではそちらを弾こう」と別バージョンで弾くのです。できることならギター・カラオケの上で弾いて欲しい……そんな“名曲の別の可能性”まで垣間見えるのです。そんな教則ビデオは「Star Fleet」をバックにエンドロールが流れますが、本作はさらにボーナス映像を追加収録。レアな「Star Fleet」のビデオ・クリップです。この曲は日本の特撮人形劇『Xボンバー』の英国版主題歌。ブライアンの息子が大ファンだったことでカバーされ、ブライアンの他エディ・ヴァン・ヘイレンやロジャー・テイラー、『THE WORKS』にも参加したフレッド・マンデル、ROD STEWART BANDのフィル・チェン、REO SPEEDWAGONのアラン・グラッツァと、錚々たるメンツによる豪華共演していました。ただし、クリップに登場するのはブライアンだけで『Xボンバー』の名シーンがたっぷりとフィーチュア。ジャケットにもなったビッグダイXの戦闘シーンがカッコ良くも懐かしく、そこに「Bohemian Rhapsody」ばりに歌うブライアンが乗る。『フラッシュ・ゴードン』にも匹敵する傑作クリップです。本作はブライアンの人となりに寄り添い、QUEENの裏話まで飛び出す傑作。しかも、その内容をビビッドに感じられる日本語字幕付きだから誰が見ても面白い。これほどの映像が期間限定のギフトではもったいない。★Brianサイドが公式にyoutubeにアップしてるが、こちらは日本盤で、対訳が入ると百倍楽しめる。(曲名ミスは昭和の大らかさが出ててこれはこれで良い。ギターの対訳は大変上手い。)ラストのプロモもばっちり
★ブライアンの着てるXLサイズの「クイーン 日本公演旅行 1982」と大きく書かれたトレーナーは一体何処で入手したのでしょうか・・・
Taken from the original Japanese VHS "Star Licks : Master Sessions with Brian May" Recorded at Sarm West, London, UK 1984
1. Introduction 2. The Red Special guitar & pick-up settings 3. Treble boosters & Amplifier 4. Boss Pedal 5. Delay Boxes 6. Tuning 7. Liar ★訳者が間違えて曲名を「Lie」と訳してる 8. Modern Times Rock 'n' Roll ★訳者が間違えて「Roger's Rocker」と訳してる
9. Jesus 10. Father To Son★訳者が間違えて「A Little Things from Father to Son」と訳してる 11. The March Of The Black Queen (solo I) 12. The March Of The Black Queen (solo II) 13. Brighton Rock 14. Bohemian Rhapsody 15. Tie Your Mother Down 16. Somebody To Love
17. It's Late 18. Dead On Time (solo I) 19. Dead On Time (solo II) 20. Dragon Attack 21. Put Out The Fire 22. It's A Hard Life 23. Star Fleet 24. Love Of My Life 25. Keep Yourself Alive 26. Crazy Little Thing Called Love 27. Demonstrating Harmonies & Delay Effects
Bonus Track 28. Star Fleet(Promo Clip)
PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.43min.