フィッシュ時代最後の名作となった『CLUTCHING AT STRAWS』時代。そんな黄金期のツアーに同行できるテレビ番組がリリース決定です。本作は、通常のライヴ映像とは異なる。もちろん、ライヴのプロショットも登場しますが、それも素材として使用した“CLUTCHING AT STRAWS TOUR 1987”のドキュメンタリー特番なのです。80年代のBBCが制作したもので、メインとなるのはツアー・スタッフ。ロックショウがどのように行われているのか、バンドと共に移動するツアー生活はどんなものなのか。普段は見られない裏舞台が赤裸々に描かれていくのです。そんな本作は「1987年7月8日ナンシー公演」からスタート。しかし、その時点ですでにアンコールの「Incommunicado」であり、メンバーは次々と楽屋へ戻っていく(フィッシュがTシャツの汗を絞ってます:汚っ)。そこからが本作の見どころ。終演後の会場で総掛かりで巨大セットを解体し、機材を梱包してトラックに収納。そして、メンバーと同じようにツアーバスで延々と長距離移動していくのです。深夜のハイウェイを走り、白んできた時刻にスタンドに立ち寄り、眠い目をこすりつつサービスエリアで朝食(夜食?)……まんまトラック野郎なスタッフ生活が非常にリアル。言葉にすると単調なようですが、そこはBBC。番組として面白く感じられるようにスピーディに編集され、ナレーションもスタッフのコメントも挟み込んでいきます。日が昇ってもスタッフに休みはなく、パリ会場に到着したら今度は設営。会場の真ん中までトラックを入れ(!)、解体したセットを組み上げていく。そのセットがまた巨大で、目も眩む高さでネジの1つ1つまで締める姿は大工か鳶職かといった感じ。そして、いよいよサウンドチェック、ライティングチェック、コンサート開演へ。やっとしばしの休息かと思いきや、ライヴ中もミックス卓でサウンドを調整し、ライティングを動かす……。「一体いつ寝てるのさ?」と言いたくなるような八面六臂の活躍ぶりが繰り広げられていくのです。ライヴに行くとスタッフに感謝を述べるシーンにも出くわしますが、それが単なる社交辞令ではないことがよく分かる。ここまでの作業を毎日毎晩、それも迅速に繰り返し続ける。ロックバンドのメンバーはその姿を目の当たりにしているのですから、そりゃあ礼の1つも言いたくなるでしょう。このような番組が作られるほどのMARILLIONの全盛期ぶりも透けますが、それ以上に“コンサート”を作り上げる工程と仕組みが興味深い貴重なプロショットです。ドキュメンタリーというとバンドのコアファンだけが楽しめるマニア向けのように思われがちですが、本作はまったく逆。リアルでありつつ、番組として完成されていて見やすい。MARILLIONのファンだけでなく、ロックコンサートに足を運ぶ方なら誰でも楽しめる裏舞台作品です。本作を見る前と後では、コンサートの感じ方まで変わる傑作映像。
Documentaries TV Programme from French Tour 1987 PRO-SHOT
1. Intro. 2. Incommunicado (Annecy, France 8th July 1987) 3. Dressing Room/Back Stage 4. Clear The Stage 5. Move To Paris 6. Set Up at Le Zenith 7. Soundcheck 8. Band Soundcheck/Set Up(Cont.) 9. The Thieving Magpie (La Gazza Ladra)
10. Slainte Mhath (Paris, France 9th July 1987) Narrated by Steve Blacknell
PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx. 30min.