昭和の日本におけるビートルズの人気と位置づけが伝わってくる懐かしいテレビ映像がてリリース決定です。時は1982年、ビートルズのデビュー20周年を記念し彼らの曲のリクエスト大会を行ったスペシャル番組が放送されました。デビュー20周年という年ながらも、当時はEMIとアップルの間での金銭を巡ったトラブルが解消されない状況が延々と続いており、20周年を記念した新たなリリースなど望めない時期。せいぜいオフィシャルでデビュー・シングル「Love Me Do」を再発するのが関の山でした。こうした事情を考えると視聴者からのリクエストで番組を作るとは、なかなかのアイディアでしょうし、そうした企画で番組が成り立ってしまうのもビートルズならでは。それでいて昭和の日本におけるビートルズの位置というのもリアルに伝わってくるのが面白い。番組の中に登場する当時の芸能人、あるいは番組観覧者がリクエストに挙げるのは、「イエスタデイ」、「レット・イット・ビー」そして「ロング・アンド・ワインディング・ロード」といったポールのバラードばかり。あまりにもチャラい選曲なので、思わず日本語で表記してしまいました(笑)。当時の日本にとってビートルズは「ロック」ではなく「ポップス」という位置づけにあり、一般的な意味でロックといえばキッスやクイーンだった時代です。今と違って昭和の日本は「リボルバー」や「ホワイト・アルバム」といった作品に対する評価や認識が低く、まして「ヘルター・スケルター」などマニアックだとすら思われていたもの。さらにリクエストの中で20圏内に入っている曲、それらはすべて「赤盤」、「青盤」に入っていた曲ばかり。つまり、当時の日本ではレギュラーのアルバムよりも、それら二つのベスト盤が絶大な地位を築いていたのです。案の定、リクエスト大会の一位に輝いたのは「イエスタデイ」。今ではちょっと考えられないような結果ですが、当時はそれが当たり前でした。このことからも、昭和の日本におけるビートルズの人気がどのようなものだったのかを伺い知れる貴重な映像なのです。番組全体は当時手に入るビートルズの各種映像を駆使し、それなりに彼らのヒストリーが伺い知れる仕上がり。例えば「レボリューション」では「ジョンがスタジオの床に寝転んで歌った」と紹介されますが、実は同曲でなく「レボリューション1」でのエピソードであったことなど、情報に乏しい当時では知る由もなかったのでしょう。むしろそれが微笑ましくも映る。そしてバラード大国だった昭和の日本を反映し、あまりにも「イエスタデイ」や「ミッシェル」といった曲名ばかりが飛び交う様は微笑ましさを通り越して気恥ずかしさすら覚えてしまうほど。ですが、中間に登場する著名人のコメントになると一転して「レイン」や「ノット・ア・セカンド・タイム」といった曲が挙げられる当たりは感心させられます。さらには漫画家による、どうして「イエスタデイ」が好きであるかという理由には非常に説得力がありました。そして番組後半ではテレビ局が本領を発揮して武道館公演の映像を使い、おまけに白髪になったEH・エリックまで登場するなど、全体を通してのどかな昭和感が楽しめる映像です。
Broadcast Date: 28th September 1982 PRO-SHOT
1. Introduction 2. CM 3. Studio, etc 4. Beatles History 5. Paul Interview 6. Here Today 7. Studio 8. Ticket To Ride 9. Revolution 10. I Saw Her Standing There 11. CM 12. Studio & Shinjuku 13. A Hard Days Night 14. Beatles History
15. Strawberry Fields Forever 16. While My Guitar Gently Weeps 17. Beatles History 18. CM 19. Studio & Shinjuku 20. Beatles In Japan 1966 21. Studio 22. CM 23. Studio 24. Medley (Love Me Do / Please Please Me/ She Loves You / I Want To Hold Your Hand
25. Studio 26. Liverpool 27. All My Loving 28. CM 29. Studio 30. Get Back / Hey Jude 31. Help 32. Let It Be 33. Yesterday 34. The Long And Winding Road
PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.61min.