YES初のオフィシャル映像作品『YESSONGS』。黄金時代を代表するあのマルチカメラ・プロショットがリリース決定です。この作品が撮影されたのは「1972年12月15日レインボー・シアター」。彼らの……いえ、シンフォニック・ロックの象徴作『危機』に伴う“CLOSE TO THE EDGE TOUR 1972-1973”の一幕です。このツアーはYESの一大全盛期というだけでなく、初来日も含めた全世界に活動の幅を広げた時期でもありました。まずは、その日程でショウのポジションを確かめてみましょう。
●1972年・7月30日-8月21日:北米#1(19公演)・9月2日-12日:英国#1(6公演)・9月15日-11月20日:北米#2(40公演)・12月15日-17日:英国#2(3公演)←★ココ★
●1973年・3月8日-14日:初来日(6公演)・3月19日-27日:豪州(5公演)・4月4日-22日:北米#3(18公演)これがシンフォニック・ロックを全世界に広めたワールドツアーの全体像。アジアや南半球へも進出したわけですが、国別に見ると意外にシンプル。米国・カナダ・英国・日本・豪州の5ヵ国のみで、大陸ヨーロッパ公演はありませんでした。そんな中で、本作のロンドン公演は伝説の初来日直前に行われたクリスマス・コンサート「英国#2」。その初日となるステージでした。
そんなショウは映画作品として16ミリのカラー・フィルムで撮影。映像ソフト『YESSONGS』としても公式リリースされたわけです。ご存じの方も多いとは思いますが、同じタイトルではあっても大名盤のライヴアルバム版とは中身が違う。曲数が少ないだけでなく、アルバム版『YESSONGS』は複数公演(6公演?)からベスト・テイクを集めているのに対し、本作は1公演のみ。「Close To The Edge」「Starship Trooper」だけがアルバム版に採用されました(ただし、この2曲も一部の演奏に差異があり、翌日“12月16日”公演テイクと編集されているのではないか、とも言われています)。また、1972年のライヴアルバムと言えば2015年にリリースされた『PROGENY』も思い浮かびますが、あのボックスの7公演はすべて「北米#2」のもの。本作との被りはありません。それにしても、この映像はまさに文化遺産。リック・ウェイクマン&アラン・ホワイトを含む“黄金の5人”のオフィシャル映像は数あれど、本作の映像は格別。平均年齢25歳2ヶ月という若々しさが眩しく、繰り出されるフレーズのキレも絶品。選りすぐりテイクで編まれたアルバム版『YESSONGS』ほどの鉄壁な演奏ではないものの、逆に1公演だからこそのワイルドなロック感、駆け抜けるような疾走感が感じられるのも素晴らしい。クリスマス・コンサートということもあり、リックのソロタイムでは「ジングル・ベル」のフレーズも飛び出します。そして、光景。ブルーを基調としたライティングはYESミュージックの幻想感を際立たせ、映画を前提にしたフィルムの質感やカメラワークにも気品がある。ところどころで、プランクトンやクラゲ(?)等のイメージ映像も挟まれますが、これもまた70年代の薫り。彼らがひときわ輝いていた1972年の時代感であり、当時のYESが放っていたバンド・イメージがリアルに伝わってくるのです。1バンドの枠を超え、ジャンル全体を象徴する最高傑作『危機』。本作は、かの大名盤を全世界に広めていったツアーの現場を目撃できる歴史的な名作映像です。ロックが真にプログレッシヴだった時代の頂点の光景。★ビデオ時代からお馴染みの定番映像の最良版
Live at Rainbow Theatre, London, UK 15th December 1972 PRO-SHOT(72:27)
1. Intro 2. I've Seen All Good People 3. Clap 4. And You And I 5. Close To The Edge 6. Wakeman Solo 7. Roundabout 8. Starship Trooper
Jon Anderson - Vocals Steve Howe - Guitar, Vocal Chris Squire - Bass, Vocal Rick Wakeman - Keyboards Alan White - Drums
PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.72min.