ロックンロールの素地であり、英国ロック隆盛の呼び水ともなったルーツ・ミュージック“ブルース”。歴史を彩った英雄達をマルチカメラ・プロショットで見られる極上映像作がリリース決定です。そんな本作に収められているのは、2009年に放送された英国BBCの特番“BLUES AT THE BBC”。海外のコア・マニアがデジタル録画したマスターをDVD化したものです。そのクオリティはまさに鉄壁。天下のBBCマスターを劣化ナシのデジタル録画したものだけあって完全オフィシャル級。有名な映像も多数ありますが、それらも史上最高峰となる映像美でたっぷりと楽しめます。肝心の内容ですが、これが実にBBCらしい。司会者コメントなどは一切なく、解説はテロップのみ。1965年から1992年の演奏シーンが約1時間ひたすら続く音楽作品然としたもの。こうした番組は1曲内でカットされる事も珍しくないのですが、本作は1曲1曲を大切にフルで見せてくれます。そして、バンド/ミュージシャンのセレクトや構成に“イギリス視点”が透けるところが面白い。全16組が登場するのですが、バランスは黒人ブルースマンとホワイトブースが半々で、演奏年ごとの時系列。ブルースに触れた衝撃と、その衝撃を受けて楽器を手にした白人たちの姿を歴史順に見ていくスタイルです。そのために黒人/白人が入り乱れるのですが、ここでは分けて整理してみましょう。
●黒人ブルースマン・戦前派:サン・ハウス(70年)・戦後派:ジョン・リー・フッカー(64年)、チャンピオン・ジャック・デュプリー(65年)、T-ボーン・ウォーカー(65年)・モダン派:フレディ・キング(75年)、B.B.キング(89年)、バディ・ガイ(91年)・ゴスペル系:ポップス・ステイプルズ(92年)
●ホワイト・ブルース ・英国:KINKS(64年)、PRETTY THINGS(66年)、ロング・ジョン・ボールドリー(68年)、PETER GREEN'S FLEETWOOD MAC(69年)、STONE THE CROWS & MAGGIE BELL(71年)、トニー・マクフィー(73年)、エリック・クラプトン(77年)
・米国:DELANEY & BONNIE AND FRIENDS(69年)※注:( )内は演奏年。……と、このようになっています。シカゴ勢がバディ・ガイだけなのは意外なものの、ポイントは幅広さ。原点のデルタ・ブルースを聴かせるサン・ハウス(晩年のカラー映像ですが)、エレキを持ち込んだT-ボーン、早くから欧州へブルースを伝えたデュプリー、ロックへ続くギター革命のB.B.キング、近代の再評価シーンを象徴するバディ、ブルースとは表裏一体だったゴスペル畑のステイプルズ……。あくまでイギリス視点なので網羅はしていないものの、ひと口に「ブルース」と言ってもさまざまなスタイルがあることがビビッドに伝わるのです。一方のホワイトブルースは、さらに英国カラーが濃厚……と言いますか、英国人しか出てこない(唯一米国バンドのDELANEY & BONNIEにしてもクラプトン人脈で選ばれたのでしょう)。もちろん、それが悪いわけではない。KINKS、ピーター・グリーン、クラプトンといった大物だけでなく、STONE THE CROWS & MAGGIE BELLやトニー・マクフィー(GROUNDHOGS)まで登場。いかにブルースが英国シーンの奥深くまで浸透し、血肉となってきたかが実感できるのです。欲を言えば、マディ・ウォーターズやサニー・ボーイ・ウィリアムソンII、ストーンズ等の映像も見たかったところですが、この辺はあまりにも定番すぎたのか選ばれていません。60年代・70年代の英国を突き動かし、引いては世界の音楽シーンそのものを形作っていった「ブルース」。本作自体が無心に浸りきれるブルース作品でもありますが、それと同時に英国ロックの“背骨”も透けてくる。そんな超極上マルチカメラ・プロショットのメイ番組。
Live Compilations from 1964 to 1992 PRO-SHOT AMAZING QUALITY
1. John Lee Hooker - Boom Boom (1964) 2. Champion Jack Dupree - Chicken Shack Blues (1964) 3. Kinks - Got Love If You Want It (1964) 4. T-Bone Walker - Hey Baby (1965) 5. Pretty Things - Midnight To Six Man (1966) 6. Long John Baldry - Stormy Monday Blues (1968)
7. Delaney & Bonnie and Friends - Poor Elijah (1969) 8. Peter Green's Fleetwood Mac - Like Crying (1969) 9. Son House - Death Letter (1970) 10. Stone The Crows & Maggie Bell - Big Jim Salter (1971) 11. Tony McPhee - Write Me A Few Short Lines (1973)
12. Freddie King - Woke Up This Morning (1975) 13. Eric Clapton - Double Trouble (1977) 14. BB King - The Thrill Is Gone (1989) 15. Pops Staples - Glory Glory Hallelujah (1992) 16. Buddy Guy - Damn Right, I've Got The Blues (1991)
PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.60min.