ニック・ロウが8月に単独で来日を果たして素晴らしい弾き語りライブを披露してくれたのは記憶に新しいところ。この時のハートウォーミングなステージをドキュメントしたマニア感涙のオーディンス・アルバム「TOKYO 2019」でした。いつもはバンドを従えてライブを行っているロウが日本だけで実現させた弾き語りショーだったのです。しかし通常ですと彼はアメリカでバックバンドを従えたライブ活動を精力的に行い、さらに前年に続いて新作EP(近年のロウはこのフォーマットを気に入っているようです)「LOVE STARVATION」をリリースし、それのプロモートを兼ねてステージに上がっていました。その活動は春から行われていたのですが、9月から再びバンドと共にアメリカをツアー。しかも日本公演からちょうど一か月後に行われたミネアポリスでのライブがYouTube上から配信されたのです。その画質のクオリティたるやクリスタル・クリアー。もうこのままフツーにライブDVDやブルーレイとして出せてしまうレベル。そしてバックを務めるのはレスラーのマスクを被ってステージに上がる、文字通りの覆面バンド(笑)ロス・ストレイトジャケッツ。近年は完全にロウのバックバンドと化しただけにとどまらず、本来インストバンドの彼らならではなロウのカバー集を出したり…といった揺るぎない関係で今年も行われているライブ活動。それを完璧なプロショットで捉えた最新ライブ映像というだけで世界中のマニアから注目を浴びることでしょう。ストレイトジャケッツを従えてからのロウは1960年代初頭のオールディーズ・チックなサウンドに傾倒していますが、ここで聞かれる演奏もそのテイストが全開。最新EPにも収められたリッキー・ネルソンのカバー「恋のレインコート」など、正にその証と呼べるレパートリーですし、他の曲のアレンジもロイ・オービソンを彷彿とさせるビンテージでポップなサウンドにアレンジされている。元々オールディーズよりな曲調だった「Half a Boy and Half a Man」などもいよいよそれっぽさが全開。そんなポップでスウィートなサウンドはすべての音楽ファンの心を捉えるに十分な親しみやすさが溢れているのです。8月の来日公演はロウ一人での弾き語りということから、今回とはセットリストがまったく異なった上、アコースティックでカントリー&ウエスタンの雰囲気が漂っていましたが、ストレイトジャケッツとのバンドサウンドも実に魅力的。おまけにライブの中間ではロウの休憩タイムかつバンドに華を持たせる時間を兼ねたストレイトジャケッツだけの演奏パートが始まります。ここで彼らが聞かせるディック・デイル直系なサーフ・インストが実に楽しい。彼らの代表レパートリーであるセリーヌ・ディオン「My Heart Will Go On」やショッキング・ブルーの「Venus」のサーフ・インスト・バージョンも見応え十分。さすがは百戦錬磨な覆面バンド。そして着替えて戻ってきたロウが加わって始まるライブ後半は名曲目白押し。日本公演の弾き語りバージョンも味わい深かった名曲「Cruel To Be Kind」ですが、やはりバンドで演奏した方が映えるレパートリーの典型。さらに極めつけは「Heart of the City」。まるでキンクスが演奏しているかのようなアレンジ(ギターソロは「You Really Got Me」のそれ)で、おまけにエンディングではドラマーがビートルズの「The End」風ソロを短く決めて終わるという展開が実にマニア泣かせ。演奏を終えた後でロウが彼を「リンゴ!」と紹介するのも納得の愉快なライブバージョンでした。このように8月の来日公演とはまるで違ったロウとストレイトジャケッツのライブサウンドが楽しめる傑作ライブ映像であり、是非とも「TOKYO 2019」と共に楽しんでいただきたい逸品。一か月でこれだけライブ演奏のスタイルが違うというのは、ロウのキャリアの中でも珍しいのではないでしょうか。とにかく画質も音質も最高も文句なし、すべてのロックファンに全力で推したい最新ライブ映像を!
Live at First Avenue, Minneapolis, MN, USA 13th September 2019 PRO-SHOT (98:21)
1. Intro 2. So It Goes 3. Raging Eyes 4. Without Love 5. You Inspire Me 6. Shting-Shtang 7. Raincoat In The River 8. Somebody Cares For Me 9. Tokyo Bay 10. Kawanga! 11. Calhoun Surf 12. Venus 13. My Heart Will Go On 14. Rock 'n' Roll Medley 15. I Love The Sound Oof Breakng Glass
16. Half A Boy And Half A Man 17. Love Starvation 18. Lay It On Me, Baby 19. Blue On Blue 20. Here Comes That Feeling 21. Cruel To Be Kind 22. Heart Of The City 23. I Knew The Bride (When She Used to Rock 'n' Roll) 24. Church Key 25. When I Write The Book
26. (What's So Funny 'Bout) Peace, Love and Understanding 27. Allison
PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.98min.