本作が撮影されたのは「1986年4月4日ユニオンデール公演」。本編解説のツアー日程で言うところの「北米#5」最終日で、フィラデルフィア公演の12日前にあたるコンサート。そのオーディエンス・ショットです。オープニングの「The Spirit Of Radio」、アンコール・ラストの「In The Mood」がないので完全映像とはいきませんが、それでも本編サウンドボードでは録音されていなかった「Red Lenses」「Tom Sawyer」「2112 Overture」「Temples Of Syrinx」「Grand Designs」もたっぷり楽しめる。貴重な80年代中期のライヴを約89分にわたってたっぷりと見られる映像作品なのです。もちろん本作のポイントは長さだけではない。何と言っても広々とした視野が素晴らしい。アレックス・ライフソン側の2階席からの撮影で、前列の腕や頭がまったくないポジションなのです。さらに嬉しいのはズームを多用しており、メンバー1人ひとりの見どころも大写しで見せてくれる。軽快にステージを闊歩するアレックス、シンセを駆使し、「世界一忙しいフロントマン」と呼ばれたゲディ・リー、80年代ならではのルックスが懐かしいニール・パートもばっちり見られます。もちろん、当時の大きいカメラでの隠し撮りなので、画面がブラックアウトしてしまうこともありますが、ほぼライヴ全体・ステージ全景を射影物なしで直視できるのは貴重です。サウンドもまた素晴らしい。もちろん、卓直結サウンドボードのCDとは次元の違うレベルではありますが、広々とした視界と同じく、ステージで奏でられる音が真っ直ぐに届き、楽音の芯もしっかりとず太い。その上で、本編サウンドボード・アルバムではスッポリと抜け落ちていた臨場感・現場感もたっぷりと味わえます。そして、この“体験感覚”もポイント。広々とした視野とまっすぐに音楽が届くベストシートで見るRUSH。ライヴ記録の楽しみ方はさまざまですが、大きく2つ「コンサートの疑似体験」と「生演奏の鑑賞」がある。卓直結サウンドボード「生演奏の鑑賞」の究極形を味わっていただいた以上は、今度は限りなく生々しい「疑似体験」もしていただきたい。そのためのベスト映像が本作なのです。ライヴ記録に何を求め、何に感動するのか。1人ひとり異なり、バンドによって、アイテムによっても変わる命題です。それを自分の心に問いつつ、二度と体験する機会は巡ってこないであろう“RUSHの生”をたっぷりと味わえる1本。
Live at Nassau Coliseum, Uniondale, NY. USA 4th April 1986
1. Limelight 2. The Big Money 3. New World Man 4. Subdivisions 5. Manhattan Project 6. Middletown Dreams 7. Witch Hunt 8. Red Sector A 9. Closer To The Heart 10. Marathon 11. The Trees 12. Mystic Rhythms 13. Distant Early Warning 14. Territories 15. YYZ 16. Drum Solo 17. Red Lenses
18. Tom Sawyer 19. 2112 Overture 20. Temples Of Syrinx 21. Grand Designs COLOUR NTSC Approx.89min.