
本作が撮影されたのは、CDと同じくデビュー直後となる「1976年4月9日プルマン公演」。日程でいうところの「北米#2」初日にあたるワシントン州立大学でのショウを記録したマルチカメラ・プロショットです。驚くべきは、そのクオリティ。関係者流出マスターからデジタル化されているのですが、その映像美はまさにマスター・クオリティ。あまりにも自然な発色とクッキリとした輪郭が美しく、オフィシャル・リリースされていないのが罪に思えてくるほど。もちろん、カメラワークはウィルソン姉妹をばっちりとフォーカスしており、アン(当時25歳)もナンシー(当時22歳)の若々しい美しさと言ったら……。もちろん、そんな彼女たちによるショウも素晴らしい。オープニングに演奏されるインストからアンのフルート、ナンシーのアコースティック・ギターが絡み合い、そこにロジャー・フィッシャーのギターが絶妙なハーモニーを奏でていく。まだまだ大物感などありませんが、英国ロックに心酔してきたひたむきさが眩しく、華やかでもある。セットはCDと同じように『DREAMBOAT ANNIE』が中心ですが、同じではない。本編ボストン公演では演奏していない「Soul Of The Sea」が取り上げられ、『MAGAZINE』からもタイトル曲ではなく「Heartless」がセレクトされている。また、光景からうかがえるライヴの雰囲気も初期ならでは。非常に落ち着いていて、いわゆるハードロック・ライヴらしい熱狂や興奮とは少々異なるのですが、観客は楽曲を楽しみつつもバンドの演奏に意識を集中。やや「お手並み拝見」的なムードは、まだまだファンが開拓されていなかった時代だからこそのもの。そんな観客を前にしているせいか、バンドもシリアスでタイトな演奏でねじ伏せようとするかのようです。この当時のHEARTはアコースティック色も濃く、一種プログレッシヴなフォーク・ロック的でもあった初期のHEART。そんな中でもアンは「Heartless」や「White Lightning & Wine」で強烈なハイトーンを披露し、「Dreamboat Annie」ではナンシーが息の合ったコーラス・ワークを聴かせる。もちろんナンシーのギター・プレイはこの当時からすでに印象的で、「Crazy On You」においてはフィッシャーと卓越したコンビネーションも美しく叙情的。そのフィッシャーのギター・ソロも見どころ。アンのフルートがフィーチャーされる「Sing Child」やメロディアスな「Soul Of The Sea」は後半など、ジミー・ペイジに傾倒したようなソロを披露。当時からすでにバンドの定番曲だった「Rock And Roll」などのLED ZEPPELINカバーは未収録(一説によると権利上の問題で放送できなかったとも言われています)ですが、バンドのオリジナル曲で統一されたセットリストはセットの焦点も絞れており、マニアから「デビュー直後の'70年代HEARTが最も良かった」と評価されるのも当然な素晴らしいショウをじっくりと楽しめます。映像は全編で一時間に満たない長さですが、その中味は濃厚。極初期だからこそのレアなレパートリーに加え、LED ZEPPELINたフォークロックの影響をストレートにさらけ出した演奏などなど、HEARTが最もHEARTらしかった時代の57分間です。
Live at KWSU-TV Studios, Washington State University, Pullman, WA. USA 9th April 1976 PRO-SHOT
1. Intro 2. Instrumental 3. Heartless 4. White Lightning & Wine 5. Dreamboat Annie 6. Silver Wheels 7. Crazy On You 8. Sing Child 9. Soul Of The Sea 10. Devil Delight 11. Magic Man
Ann Wilson - Vocals & Flute Nancy Wilson - Guitars & Vocals Roger Fisher - Lead Guitar Michael Derosier - Drums Steve Fossen - Bass & Vocals Howard Leese - Keyboards, Guitars & Vocals PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx. 57min.