歴史的名作を量産し、全世界を席巻した1971年のEL&P。その定番プロショットを極上クオリティでDVD化した1枚が登場です。そんな本作に収められているのは、実は日本のテレビ特番。2007年に某放送協会で放映された名番組“黄金の洋楽ライブ”のEL&P特集です。この番組は、定番となっているロック映像を放送するものですが、極上なクオリティと控えめながら独自な演出のセンスが素晴らしい。当店でも、名作映像・廃盤映像の数々を番組バージョンでアーカイヴして参りました。本作は、そのEL&P編なわけですが、放送の中身は「1971年2月6日+7日ブリュッセル公演」で収録された“POP MUSIC”をメインに、1977年の“ROCK POP”もカップリングしたもの。どちらもマニアにはお馴染みのプロショットですが、その極上デジタル放送版なのです。
【1971年:ベルギーの“POP MUSIC”】ますメインとなるのがブリュッセルのTV番組“POP MUSIC”からのプロショット。1971年を代表する有名映像です。EL&Pは間近く濃厚な活動を繰り返すグループでしたが、1971年はその極みでもあった。ここでは当時のスケジュールを振り返ってショウのポジションと共に、いかに強烈な1年だったかを実感してみましょう。《1月1日:デビュー作発売(北米)》《1月『タルカス』録音》・2月4日-7日:欧州#1(3公演) ←★ココ★・3月4日-4月9日:英国#1(25公演)←※公式『展覧会の絵』・4月21日-6月20日:北米#1/欧州#2(43公演)《6月14日『タルカス』発売》
・7月17日-9月1日:北米#2(30公演)《10月『トリロジー』製作開始》《11月『展覧会の絵』発売》・11月12日-12月19日:北米#3/英国#2(34公演) これがEL&Pの1971年。年始にデビュー作『EMERSON, LAKE & PALMER』が全米発売(母国では前年11月)となり、苛烈なツアーをこなしながら『タルカス』『展覧会の絵』を発表。秋には早くも『トリロジー』の製作にも着手している。当時は1年に2枚リリースすることも珍しくありませんでしたが、1971年のEL&Pはたった1年の間に歴史的な名盤4枚に関わるという、ロック史でも類を見ない濃密な時期でした。そんな中でも、この映像は序盤。2大名盤『タルカス』『展覧会の絵』の間に出演したプロショットなのです。猛烈に輝く3人を捉えた映像は、やはり強烈。「The Barbarian」「Take A Pebble」「Knife Edge」というデビュー作の必殺3曲に「Rondo」「Nutrocker」を加えたセットはプリミティヴでありながらEL&Pの要素を濃縮。演奏はあくまで荒々しく、精度を求めずデビューしたての勢いや初期衝動に溢れ返っている。もちろん、THE NICE譲りのオルガンにナイフを突き刺し、下敷きになるパフォーマンスや、KING CRIMSONと変わらぬグレッグの美声もたっぷりと楽しめます。そんな演奏と同じくらい「1971年」を感じさせるのが映像演出。ライヴシーンに炎や水面、サイケ模様、高速道路などのイメージ映像が差し込まれていくのです。ZEPの『狂熱のライヴ』のような大胆なものではなく、演奏シーンを邪魔しない瞬間的なものなのですが、そのセンスや素材が何とも70年代初期らしいのです。また、その中でも特に面白いのがオープニングの「The Barbarian」。メンバーが(なぜか普段着のまま)飛び起きて会場へ向かう小芝居から始まり、苛烈な細かいビートに合わせて(まったく無関係な人物の)小走りする足下が映される。シリアスなのか、コミカルなのか、まだロックのイメージが固まっていない当時が透けるのです。
【1977年:西ドイツの“ROCK POP”+PV1曲】そんな1971年に続くのは、一気に時代が跳んで『作品第2番』時代のテレビ出演。「Tiger In A Spotlight」「Show Me The Way To Go Home」2曲のマイムなのですが、これがケッサク。「傑作」ではなく「ケッサク」なのがポイントで、「Tiger In A Spotlight」ではスタジオセットの中に生きたトラが連れてこられ、グレッグがビビリながら歌っているのです。もちろんトラは鎖に繋がれ、グレッグも全力で平静を装っている。しかし、トラが身動きする度にチラチラと視線が泳ぎ、アクションも笑顔もめちゃくちゃ硬い。しかも、途中で中断でもあったのか曲の終盤シーンでは、トラがさらにグレッグの側に近寄っており、曲が終わった時には後ずさっている……。さすがにこれはグレッグをバカすることはできない。曲名に引っかけているとは言え、TV局側も無茶な演出を考えたものです。その2曲の後には、さらに「Fanfare For The Common Man」のクリップも収録。番組もPVもお馴染みの映像ではありますが、クオリティは極上。現代基準に照らしてみても完全オフィシャル級です。
【熱血解説や日本語字幕など、番組の独自演出付き】そんな演奏シーンだけでもお腹いっぱいですが、本作はさらに番組独自の日本語字幕や各曲の解説テロップ、解説コーナーも美味しい。MCなどはほとんどないものの、“POP MUSIC”には3人へのインタビューがあり、その内容がすべてがビビッドに分かるわけです。
それ以上なのが解説コーナー。この番組はテーマのバンドに沿った著名人を招いて語るコーナーが設けられているのですが、EL&Pの回で案内人を務めているのはコアなロック・ファンとして有名なあの方。1965年生まれの氏はリアルタイマーではないわけですが、そのプログレ愛は世間にも広く知られている。その語り口は極めて熱血。まるで元テニス選手かのように熱く熱くEL&Pを語るのです。これが本当に素晴らしい。実のところ、氏は知識面でも非常に深いわけですが、芸能一家出身だけに自分の立ち位置とキャラクターをしっかりと認識しており、あくまで情熱を前面に押し出している。「ボクは毎朝、RoundaboutとLarks’ Tongues In Aspic Part 2を弾いてから学校へ行っていたんですよ」「下敷きにされて……オルガンは掛け布団じゃないんだから(笑)」など、ジョークにも心底愛している喜びが滲み出し、万人に直感で伝わる熱気で語る。もちろん空騒ぎしているわけではなく、バンドの歴史や魅力を語るコメントには深い知識に裏打ちされて破綻がない。画面に向かって「EL&P最高だよな!」と声をかけたくなる名司会なのです。そんな氏が「現在ではソロ活動していますが、この3人じゃないとダメなんです」「何とかして再結成コンサートを見れないもんでしょうか」と語って幕を閉じる本作。2007年だからこその言葉ですが、今だからこそ重く胸に突き刺さる。そう、本作から流れ出るのは今ではもう叶わない夢の結晶なのです。世界最強、歴史上最高のキーボード・トリオだったEL&P。あの3人がもっとも眩しく輝いていた姿を極上プロショットで約75分楽しめる1枚。驚くほど綺麗な映像と、独特の日本語字幕が嬉しい一枚。
Broadcast Date: 15th September 2007 Theatre 140, Brussels, Belgium 6th & 7th February 1971 PRO-SHOT
1. Intro POP MUSIC: Belgium TV (Originaly broadcased on 13th May 1971) Theatre 140, Brussels, Belgium 6th & 7th February 1971 2. The Barbarian 3. Rondo 4. Drum Solo 5. Take A Pebble (Incl. Ballad Of Blue) 6. Piano Improvisation / Take A Pebble 7. Knife Edge 8. Nutrocker 9. VJ Talks
ROCK POP German TV 1977 10. Tiger In A Spotlight 11. Show Me The Way To Go Home 12. VJ Talks 13. Fanfare For The Common Man (PV) PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.75min.