ご存じの通り、METALLICAは“アルバム再現ライヴ”の多いバンドでして、2006年サマーソニックでの「MASTER OF PUPPETS」完全再現を実体験された方も多いことでしょう。彼らはその後も2012年に「RIDE THE LIGHTNING」と「BLACK ALBUM」の逆順再現、2013年には「KILL ’EM ALL」の完全再現ライヴを行っています……あれ? ジャスティスは!? そう、初期5枚の再現ライヴが次々と実現していく中で、4thアルバム「...AND JUSTICE FOR ALL」だけは、スルーされ続けているのです。だからと言って「...AND JUSTICE FOR ALL」が軽視されているわけではありません。他の初期アルバムと同様、すべての曲がステージで生演奏されている。本作は、海外のコアマニアがそうしたプロショットを集め、アルバム通りの曲順で「…AND JUSTICE FOR ALL」全曲を構成したコンピレーション映像集なのです。言ってしまえば、“なんちゃって再現ライヴ”なわけですが、これがちょっとバカにできないシロモノ。まずは、各曲をご説明から始めましょう……
1. Blackened (2013) このDVDは「...AND JUSTICE FOR ALL」発売直後の1989年から2014年まで、25年間のベストテイクで選ばれています。トップを飾る「Blackened」は、記念すべき2013年の南極ライヴから。過去にもイギリスの研究者バンドが生演奏を配信したことはありますが、観客を入れたプロバンドとしては南極初のコンサートです。
2. ...And Justice for All (2008) 続くは、2008年の“ROCK AM RING”出演映像。南極から一転、大群衆の巨大なスケール感が凄まじい美麗プロショットです。凄まじいプロショットがズラリと並ぶ本作でも、カメラワーク・スペクタクル・パフォーマンスの三拍子がそろった総合点では一番かも知れません。
3. Eye of the Beholder (1989)3曲目は、「...AND JUSTICE FOR ALL」当時の“DAMAGED JUSTICE TOUR”からスペクトラム公演のプロショット。さすがに画質こそ21世紀の超美麗デジタル映像には及びませんが、まさに「…AND JUSTICE FOR ALL」時代のそのものの若きMETALLICAが眩しい!
4. One (2014) 前曲から一気に四半世紀の時空を超え、2014年のグラミー賞授賞式の記念パフォーマンス。現在までに1,333回も演奏された超代表曲ですが、本作ではただ一度きりのピアニスト“ラン・ラン”とのコラボ演奏が選ばれています。炎やライティングなど、豪華な演出を交えながら「S&M」にも匹敵する異種格闘技アンサンブルが繰り広げられる。このように、本作はただ単に「...AND JUSTICE FOR ALL」の全曲が並んでいるわけではなく、各曲・各時代の“コレぞ!”な映像が厳選されているのです。
5. The Shortest Straw (2011) こちらはスウェーデン版“THE BIG 4”からの収録。この曲に他の3バンドが出てくるわけではありませんが、これまたMETALLICA史に残る記念碑プロショットです。オフィシャル版“THE BIG 4”だけで満足されている方には、“もう1本のTHE BIG 4”をチラ見体験するちょうど良いサンプルとなるでしょう。
6. Harvester of Sorrow (1994) ジェイソン・ニューステッドの咆哮も凄まじい“WOODSTOCK ‘94”からのライヴバージョンです。「BLACK ALBUM」時代の末期にあたり、まるで日本のビジュアル系かのようなルックスのカーク・ハメットが美麗プロショットで見られます。しかし、見た目は違えどラストのギターソロはライヴ感たっぷりで、ドヘヴィに臓腑をえぐる激重サウンドはやっぱりMETALLICA!
7. The Frayed Ends of Sanity (2014)「…AND JUSTICE FOR ALL」で最後までライヴ演奏されなかった曲、その初演となる記念碑プロショットです! この日をもって「...AND JUSTICE FOR ALL」の全曲が生演奏可能となり、この映像があればこそ、本作も実現しました。本作でも一番新しい映像です。
8. To Live Is To Die (2011) プロショットが基本の本作にあって、唯一のオーディエンス映像(音声はサウンドボード)。結成30周年記念イベント2日目の記録です。ベースソロの一部などでお馴染みの曲なのですが、フル演奏されたのはこの日1回だけ。もちろん、レア度はNo.1!!
9. Dyers Eve (2009)「…AND JUSTICE FOR ALL」のラストを飾るスラッシュナンバーは、アルバムテイクを超えるアグレッションも凄まじい超美麗プロショット。美麗画質だらけの本作でも、群を抜く映像美です! それもそのはず、このテイクは「FAN CAN#6」にも採用されたもので、その映像クオリティ、演奏は驚異的。激走するリフの嵐が荒れ狂う中、ユニゾンでキメるグリスの鋭さは異常!
10. Justice Medley (1993) アルバム完全再現の後には、ボーナスとして「...AND JUSTICE FOR ALL」の曲を繋いだメドレーライヴを収録。1993年“NOWHERE ELSE TO ROAM TOUR”のメキシコ公演で、オフィシャル「LIVE SHIT」用に撮影されたマテリアルの流出映像です。公式用の撮影だけにそのクオリティは実に素晴らしく、歓声さえもオーバーダブされていない未加工ゆえの生々しさも絶品。「...AND JUSTICE FOR ALL」のエッセンスが凝縮された珠玉の名メドレーです!一度のライヴで「...AND JUSTICE FOR ALL」が再現されてはいませんが、本作はそれを逆手に取り、全10テイク全部が異なるライヴから選ばれている。その結果、「...AND JUSTICE FOR ALL」の統一感に貫かれつつ、各時代のMETALLICAを俯瞰するコンピレーションならではの楽しみにも溢れているのです。最初は「“なんちゃって再現ライヴ”なんて、おバカなマニアもいたもんだ」と思いましたが、実際に見てみるとベース入り「…AND JUSTICE FOR ALL」として聴いても良く、アルバムの視覚版として見てもカッコイイ。さらには、プロショットで綴る生演奏ヒストリーとしても面白く、各時代の代表映像のお試しにも最適という、とんでもない1本でした。将来、実際に「...AND JUSTICE FOR ALL」が完全再現されたとしても、ここまでの見応えはないかも知れません。 マニアの遊び心と「...AND JUSTICE FOR ALL」を愛する心、そしてクオリティが渾然一体となったエンターテインメント超大作。
Live compilation from 1989 to 2014, feat. full album tracks of "...And Justice For All" PRO-SHOT (72:14)
1. Blackened Carlini Dome, King Island, Antarctica 8th December 2013 2. ...And Justice for All “Rock Am Ring” Nurburgring, Germany 7th June 2008 3. Eye of the Beholder The Spectrum, Philadelphia, Pennsylvania, USA 12th March 1989
4. One “56th Annual Grammy Awards” Staples Center, Los Angeles, CA. USA 26th January 2014 5. The Shortest Straw Ullevi Stadium, Gothenburg, Sweden 3rd July 2011 6. Harvester of Sorrow “Woodstock 94” Winston Farm, Saugerties, New York, USA 13th August 1994
7. The Frayed Ends of Sanity “Sonisphere” Hietaniemi Beach, Helsinki, Finland 28th May 2014 8. To Live Is To Die The Fillmore, San Francisco,CA 7th December 2011 9. Dyers Eve Forum Copenhagen, Copenhagen, Denmark 27th July 2009
10. Justice Medley The Sports Palace, Mexico City, Mexico 1st March 1993 PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.72min.