ビートルズのライブ史上、最高の映像との誉れ高き1964年のワシントンDC。当初はフィルムに落とされた、いわゆるキネコ・バージョンの劣化具合のせいで演奏や映像の魅力が伝わらず、どちらかと言えばマニアの間ですらあまり語られることのないライブ映像でした。ところが「BEATLES ANTHOLOGY」で本来のビデオ・バージョンが発掘されてから状況は一転。さらにはフィルムでは見られなかったフィナーレ「Long Tall Sally」まで発掘。そして今から10年前にひょっこりと全長版がリリースされて一気にビートルズのベスト・ライブ映像へと昇格したのです。10年前のリリースは世界中のマニアに大きな衝撃を与えたと共に、それを元にしたアイテムが大量に生み出されました。これらは当時ですら当時の映像圧縮テクノロジーの限界を感じさせる画質でしたが、それでも元のビデオ映像の見やすさが功を奏して大ベストセラーを記録。むしろ相当なスタンダードと化したほど。そうはいってもHDクオリティの時代に10年前の圧縮映像の粗さはいかんともしがたく、遂に見られるようになった感激をかみしめつつも、多くのマニアが「もう少し良好な状態で見られれば…」との思いを寄せていたもの。そんなマニアの溜飲を下げてくれたのが今から二年前にリリースされたDVD「WASHINGTON COLISEUM 1964」に収録されたアッパー版映像。もっとも「BEATLES ANTHOLOGY」の滑らかな画質のレベルにはまだ及ばなかったのですが、それでも従来のバージョンと比べてはっきり画質が向上した事、さらに定番ライブ映像も同時に収録していたことからあっという間にSold Out。そんな紆余曲折を経たワシントンDCのビデオ映像も一年程前にさらなるアッパー版が登場。最新テクノロジーでリリースされただけに、その画質は10年前のバージョンはもちろん、DVD「WASHINGTON COLISEUM 1964」と比べてもさらなるアッパー感が明白。今回は最新バージョンをリマスターしてリリース。特筆すべきはその画質。遂に「BEATLES ANTHOLOGY」に収録されたバージョンに匹敵する画質で名ライブ映像が楽しめるようになったのです。過去のバージョンは大なり小なりステージ後ろに映る観客を始めとした風景が粗くなりがちだったのですが、今回はそうした見苦しさが一掃。ライブ終盤に盛り上がった「I Want To Hold Your Hand」の場面ではステージの周りで遠巻きの観客が一緒に歌っていることがはっきり(=しかも演奏が聞こえている証でもある)解る。それにメンバーの動きが俄然滑らかで、着ているスーツの質感やマイクスタンドが放つ質感までもリアル。そしてリンゴの異様なハイパードラミングを始めとしたビートルズの熱演ぶりに目を奪われがちなライブ映像ではありますが、実はカメラアングルが単調だというジレンマが。ビデオカメラを設置した位置からしてメンバーの顔をクローズアップで捉えるのが不可能であり、代わりに周りの観客の方がよっぽどアップで映し出されています。おまけに「Please Please Me」からはヒキでビートルズのステージを捉えたアングルの頻度が高くなる。そもそも簡単に手に入るアッパー版をそのままDVD化したのでは芸がない。そこで今回のリリースに当たっては、ニュース用映像で断片的に残されている別アングルのフィルム映像をいくつかの場面にインサート。ビートルズのステージ登場時、あるいは先の「Please Please Me」などがこの編集によってより飽きのこない状態で鑑賞できるようになっています。これらニュースフィルム用映像は一様にビデオ映像本体よりもメンバーをアップで捉えてくれている点が魅力なのですが、何と言っても「She Loves You」の冒頭ではビデオ映像の登場によってマニアの間で大きな話題となった客席の「オーディエンス録音少女」の姿までアップで見られてしまうのです。これはホントに面白い。そんな大傑作ビートルズ・ライブ映像にカップリングされるのは、これまた1964年の定番ライブ映像であるメルボルン。こちらもビデオカメラで収録されたクリアネスが魅力で、ワシントンと違ってVHSの時代を迎えてから一気に普及。その時代から十分に見やすい画質だったのですが、こちらも今から10年前にベストバージョンが普及。しかしそれも今は昔。やはり現在はより状態の良いバージョン(PALマスター)が出回っており、今回はそれを元にリマスター。マニアならご存知のように、本映像はオープニング「I Saw Her Standing There」の終盤からビデオの録画ボタンが押され、さらに「Till There Was You」の途中でテープチェンジ(あるいは一時停止)、ジョージの「Roll Over Beethoven」の終盤から撮影再開という状態でした。10年前のバージョンは同じステージのラジオ音源をアフレコさせてカット箇所をスチールで補って疑似完全収録としていました。今回はそうした編集を加えることなく、映像をそのままの状態で収録。その上で「BEATLES ANTHOLOGY」で見られた二曲に関しては、そちらのバージョンへと差し替えました。この編集によって「All My Loving」はジョージがハモり始めたところまでが「ANTHOLOGY」テイク、以降は今回の全長版へと切り替わる訳ですが、その違和感がほとんどない。この部分だけでも今回リリースされるバージョンのアッパーぶりを実感してもらえるのでは。それにワシントンよりもはるかにライブ映像として洗練されたカメラアングルは見応え十分。映像の仕上がりに感銘を受けたブライアン・エプスタインが当初の契約より長時間の放送を許可したというのも納得の名ライブ映像です。結果として1964年上半期のハイクオリティなビートルズ・ライブ映像の最強カップリングとなり、どちらの映像も画質と演奏内容の両方で満足度の高いものとなっている。全米を虜にすべく、リンゴを中心として全身全霊でハイパーな演奏を繰り広げたワシントンDC。全米での人気を獲得し、さらには初の主演映画まで撮り終えた後で行われ、もはや王者の風格すら漂うメルボルン。こちらの映像はツアー開始前日に体調を崩したリンゴに代わり、ジミー・ニコルを雇って決行されたツアーの終盤、遂にリンゴが復帰を果たしてファンが歓喜する中で行われたライブでもある。奇しくも彼の存在感の大きいライブ映像をカップリングしたとも言えるでしょう。そしてどちらの映像も最高の画質と状態での収録です、全力ですべてのロックファンに薦めたいビートルズ最高の64年ライブ映像集。あなたのお部屋でじっくりとお楽しみください。「WASHINGTON COLISEUM 1964」のアップグレード映像を元にファンが新たにリマスターしネット公開された現時点での最高画質決定版。既発盤と比べ、アップのシーンではスーツの布の質感やマイクスタンドの質感までクッキリ見えるレベルで画質が向上しました。 ボーナスのメルボルン公演は、今回ここに収録したものはChannel 9 Masterのネットソースとは別の枝分かれのPALマスターを使用し、Anthologyに収録されている箇所はそちらへ差し替えた本盤オリジナルの独自リマスターソースを収録。既発盤はCan't Buy Me Loveなど動きの多いシーンでは映像がカクついていますが、今回はPALソースに立ち返って再度正確に変換しているため滑らかな動きになりました。
Washington Coliseum, Washington, D.C. USA 11th February 1964 (62:30)
1. Introduction 2. Roll Over Beethoven 3. From Me To You 4. I Saw Her Standing There 5. This Boy 6. All My Loving 7. I Wanna Be Your Man 8. Please Please Me 9. Till There Was You 10. She Loves You 11. I Want To Hold Your Hand 12. Twist And Shout 13. Long Tall Sally
-Bonus Tracks- Festival Hall, West Melbourne, Australia 17th June 1964 Late Show 14. I Saw Her Standing There 15. You Can't Do That 16. All My Loving 17. She Loves You 18. Roll Over Beethoven 19. Can't Buy Me Love 20. Twist And Shout 21. Long Tall Sally 22. Trailer
PRO-SHOT B&W NTSC Approx.63min.