コンサートの完全収録映像をはるかに上回るベストクオリティの映像がネット上にアップされました!Slowhand Archive Projectなる有志による制作の素晴らしいマルチカメラ編集映像です。もちろん出演者の登場前に会場のスクリーンで流されたジンジャー在りし日のインタビューやプレイシーン、それに続くクラプトンの追悼コメントからきちんと収録されています。しかもこのメモリアル映像、スクリーンをフルショットでブレなく捉えており、非常に観やすいものです。そしてバンドを捉えているアングルは、クラプトンのほぼ正面に位置するフロア席前列からのアップショットとステージに向って左45度の2階席からのアップショットがメインで、たまにフロア席前列右方向からのショットが混じります。驚くのはすべてのアングルについて前方に一切の障害物(人の頭や影等)がないことです。クラプトンのアップショットはもちろんのこと、ステージ全景、ゲストたちやハウスバンドのメンバー、バックコーラスまできちんと捉えたこの映像がクロスフェードでスムーズに繋がっており、「プロショット」と呼んでも差し支えないレベルです。そしてまた収録音声のクオリティが抜群で、極上のステレオ・オーディエンス録音なのです。本当にオフィシャル発売されてもおかしくないレベルの素晴らしい内容です。クレジットされている豪華なゲストが入れ替わり参加する様子は、このハイクオリティ映像のおかげで息を飲みながら一気貫通できます。ここで今一度、曲ごとの聴きどころを挙げていきましょう。
Introduction・・・冒頭にはクリーム時代のジンジャーのインタビュー映像や解散コンサートでのドラムソロシーンが流されます。それに続いてエリック・クラプトンとバンドが登場。クラプトンがジンジャーへの追悼コメントを述べます。ここではクラプトンはジンジャーを本名の「ピーター・エドワード」と呼び、「彼は今日、きっと会場のどこかにいるよ。(中略)彼がいなくなって本当に寂しいよ。」と言って会場を沸かせています。
Sunshine of Your Love & Strange Brew・・・70年代初期からの付き合いとなるクラプトンの友人ミュージシャン、元ピンク・フロイドのロジャー・ウォータースをベースに迎えての贅沢過ぎるステージです。ボーカルとギターソロはもちろんクラプトンがとっています。ボーカルのセカンドコーラスはバックシンガーのシャロン・ホワイトが担当しています。
White Room・・・この曲ではロジャーに加え、同じくクラプトンとは友人関係にあるロニー・ウッドがギターで、元フェイセズ&ザ・フーのケニー・ジョーンズがドラムで加わっています。ロニーはオブリガートのほか、後奏のワウワウソロも任され、見事なプレイを披露しています。後半はクラプトンがソロを引き継ぎます。メインボーカルはクラプトンで、Bメロ部のボーカルはバックコーラスのシャロン・ホワイトがとっています。
I Feel Free・・・この曲からはあのナイル・ロジャースがギターで加わります。クラプトンとの付き合いがここまで深いものだとは知る由もなかったのですが、それだけに意外な驚きがありました。あの伝説ともなった彼のギターカッティングが冴え渡ります。また、この曲からはベースにウィリー・ウィークスが参加。クラプトンとは久々の共演となります。ボーカルは、オルガンで参加したポール・キャラックが務めています。
Tales of Brave Ulysses・・・前曲からメドレー形式で演奏されます。引き続きロジャースが参加。後奏のソロを任され、ワウペダルを踏みながらハイテンションで味わい深いプレイを披露します。往時のジャック・ブルースに比べればかなり弱々しいですが、クラプトンが懸命にボーカルを務めます。そういう意味では、2005年のクリーム再結成コンサートでも聞けなかった珍しいパターンを楽しむことができます。
Sweet Wine・・・ウィル・ジョンズがギターで参加し、中間ではクラプトンと堂々と渡り合うツインリードソロを見事に決めています。このウィル・ジョンズ、あまり馴染みのない名前だと思いますが、彼はクラプトンの甥にあたる人物(クラプトンの前妻パティ・ボイドの妹のポーラとストーンズの数々のアルバムやデレク&ザ・ドミノスのセカンド・アルバムのエンジニアを務めたアンディ・ジョンズとの間に生まれた子。因みにアンディ・ジョンズは、プロデューサー、グリン・ジョンズの弟です)で、自分のバンドを率いてプロ活動をしている、今年47歳のギタリストです。彼がギターを始めたきっかけは伯父のクラプトンから励まされてのことだったそうです。こうした機会に呼んでやるクラプトンに身内思いの人の良さが表れています。
Blue Condition・・・クリームとしてはユーモラスな、ライブ向きではなかった曲です。曲前にはクラプトンが「今までステージで演奏したことのない、おかしな曲をやるよ。」とアナウンスし、会場が盛り上がります。ジンジャーが歌ったオリジナル・バージョンどおり、もったりしたリズムで演奏が進みますが、こんな曲でクラプトンが切れ味鋭いギターソロを決めているのが聴きものです。ジンジャーが会場のどこかから見ていて、「おい、こんな曲をやってくれるのかい?」と言ってそうです。
Badge・・・再びロニー・ウッドが参加。セカンドソロパートでは、ポール・キャラックのオルガンソロに続き、ロニーがギターソロをスライドでプレイしています。こうして聴くとロニーのプレイはツボを押さえたなかなかのもの。73年のクラプトンの「レインボー・コンサート」での好サポートを思い出してしまいました。ドラムには、クラプトンのお抱えドラマーでもあるヘンリー・スピネッティが加わっています(彼は81年のジャパン・ツアーでこの曲をプレイした経験があります)。
Pressed Rat and Wart Hog・・・この曲ではジンジャーの息子でドラマーのコフィ・ベイカーが参加。血は争えない、蛙の子は蛙、という格言を思い出させる見事なドラミングと親父さんにそっくりなボーカル(語り)を聞かせます。
Had to Cry Today・・・ここからはブラインド・フェイス・タイムとなります。当然、スティーヴ・ウィンウッドが参加。まずはウィンウッドはストラトを抱えてのクラプトンとのツインリード体制。オリジナル・バージョンの通りボーカルも彼がとり、ファーストソロはクラプトン、セカンドソロはウィンウッドとクラプトンのツインリードとなりますが、何と今回はここにナイル・ロジャースも加わってのトリプルリード展開となります。このままブラインド・フェイスを再結成しても良さそうなくらいのレベルの高い演奏が展開されています。
Presence of the Lord・・・ウィンウッドがオルガンに回り、クラプトン作の名曲が演奏されます。ボーカルは69年当時とは異なり、クラプトンがファーストコーラス、ウィンウッドがセカンドコーラス、ギターソロ後のサードコーラスは二人のデュエットとなっています。クラプトンのワウワウソロも久々に聴けます。
Well Alright・・・メンバーはそのままでウィンウッドがオルガンをプレイ。ソロではシンセサイザーをプレイしています。このアレンジは2008年のクラプトン&ウィンウッドのジョイントコンサート時と同じです。
Can't Find My Way Home・・・ウィンウッドが名唱を聴かせる名曲を披露。ソロはクラプトンが決めます。バックを務めるナイル・ロジャースのお気に入り曲なのか、えらくノリノリな様子で、オフマイクで歌いながらギターをプレイしていました。
Do What You Like / Toad・・・ジンジャーの十八番とも言うべきドラムソロのためのナンバーでした。ここでは息子のコフィがここぞとばかりに親父さん顔負けのドラムソロを披露しています。これがジンジャーへの一番の追悼になったのではないでしょうか。息子の成長ぶりに喜ぶジンジャーの顔が見えるようです。ドラムソロ後のエンディングをToadのフレーズに繋ぐという構成です。
Cross Road Blues・・・アンコールは出演者全員による演奏となっています。第4のドラムキットにはケニー・ジョーンズが座り、ヘンリー・スピネッティはそのキットのシンバルのみを叩きました。ギターソロはクラプトンからロニー・ウッドへ回され、クリス・スティントンのピアノソロを挿んでウィル・ジョンズのギターソロへ。再びクラプトンの歌の後はウィンウッドの歌とオルガンソロへ。そしてナイル・ロジャースのギターソロへと回されます。そしてクラプトンのラストコーラスへ。ところが歌い終わったクラプトンが何と「Everybody Solo!(みんなソロを弾いて)」と声を掛けます。ステージ上の4人のギタリストが向かい合い、各々ソロを重ねるという凄い展開に。そして大団円。アンコールに相応しいナンバーでした。
以上のような、豪華ゲストによる信じられないようなシーンが展開されています。2CD「A TRIBUTE TO GINGER BAKER: LONDON 2020」をお楽しみいただけた方、また、聴いてみたいと思われている方、どなたもが楽しめる映像であることは間違いありません。この映像の登場をもって、ジンジャーへのトリビュートを真に我々が共有できたという思いを抱きます。
EventimIM Apollo, London, UK 17th February 2020 AMAZING SHOTS & EDIT!!!!!
1. Introduction 2. Sunshine of Your Love (with Roger Waters) 3. Strange Brew (with Roger Waters) 4. White Room (with Roger Waters, Ronnie Wood on guitar & Kenney Jones on 3rd drum kit) 5. I Feel Free (with Nile Rodgers, Paul Carrack on organ & vocals)
6. Tales of Brave Ulysses (with Nile Rodgers) 7. Sweet Wine (with Paul Carrack on organ & Will Johns on guitar ) 8. Blue Condition 9. Badge (with Ron Wood, Henry Spinetti on 3rd drum kit) 10. Pressed Rat and Wart Hog (with Kofi Baker on drums & vocals)
11. Had to Cry Today (with Steve Winwood & Nile Rodgers on guitar) 12. Presence of the Lord (with Nile Rodgers on guitar, Steve Winwood on organ & vocals) 13. Well Alright (with Steve Winwood on organ & vocals & Nile Rodgers on guitar)
14. Can't Find My Way Home (with Steve Winwood on organ & vocals & Nile Rodgers on guitar) 15. Do What You Like / Toad (with Steve Winwood, Ronnie Wood & Nile Rodgers; with drum solo by Kofi Baker) 16. Cross Road Blues (with everyone & Roger Waters on cowbell) 17. Outro
Eric Clapton - guitar, vocal, Paul Carrack - organ, vocal, Chris Stainton - piano, Sonny Emory - drums, Steve Gadd - drums, Willie Weeks - bass, Katie Kissoon and Sharon White - back chorus Steve Winwood - guitar, organ & vocal, Roger Waters - bass, Nile Rodgers - guitar,
Ronnie Wood - guitar, Kofi Baker - drums, Kenney Jones - drums, Henry Spinetti - drums, Will Johns - guitar COLOUR NTSC Approx.104min.