今や黒歴史の感も拭いきれない特異点、レイ・ウィルソン時代のGENESIS。その超極上プロショットが登場です。そんな本作が撮影されたのは「1998年1月31日カトヴィツェ公演(ポーランド)」。そのマルチカメラ・プロショットです。1996年にフィル・コリンズが脱退を表明し、「そして2人が残った」と言われた当時のGENESISは『CALLING ALL STATIONS』をリリース。再起を賭けたツアーはプロモーションにも力を入れたのかプロショットが多く残された事でも知られているわけですが、本作はその中でも初期にあたる。まずは、その状況を知る意味でも当時のスケジュールからショウのポジションを確かめてみましょう。
1997年・8月24日+26日:TV出演《9月1日『CALLING ALL STATIONS』発売》・11月17日+12月11日:TV出演 1998年・1月23日-4月5日:欧州(43公演)←★ココ★・5月30日+31日:ドイツ(2公演) これが“CALLING ALL STATIONS TOUR”の全体像。当初はアルバム発売直後に大規模な北米ツアーが予定されていましたが、チケット不振によりキャンセル。会場の規模を小さくして再度設定されるも再びキャンセルとなり、その結果、年の改まった1998年の欧州ツアーだけとなりました。本作のカトヴィツェ公演は、その中でもスタートダッシュにあたる4公演目のコンサートでした。そんなショウを記録した本作は、まさに極上のプロショット。映像自体は当時から知られる定番映像の1つですが、本作はその最高峰版。当時のテレビ放送ではなく、2011年になってデジタル再放送されたものを劣化ゼロでDVD化したものなのです。それだけに画質も音質も完全無欠なマスター・クオリティで、当時「4:3」だった画面比も「16:9」に進化。ライヴ本番から22年、放送から9年を経た現在でも「完璧オフィシャル級」としか言いようのない映像美なのです。何もかもが完璧なようですが、実は本作には唯一にして最大の欠点もある。それはフルショウではないこと。デジタル再放送は抜粋放送となっており、当日演奏された4曲「No Son Of Mine」「Turn It On Again」「Throwing It All Away」「I Can't Dance」がカットされているのです。とは言え、それでも約2時間もウィルソン時代GENESISを楽しめることには違いない。良い機会でもありますので、ここでその中身も整理しておきましょう。
プログレ時代(5曲)・フォックストロット:Supper's Ready (Lover's Leap)・月影の騎士:Firth of Fifth/Dancing With the Moonlit Knight・眩惑のブロードウェイ:The Lamb Lies Down on Broadway/The Carpet Crawlers 3人時代(7曲)・そして3人が残った:Follow You Follow Me
・ジェネシス:Home by the Sea/Second Home by the Sea/Mama・インヴィジブルタッチ:Land of Confusion/Domino/Invisible Touch CALLING ALL STATIONS(6曲)・Calling All Stations/Alien Afternoon/There Must Be Some Other Way/Shipwrecked/Congo/The Dividing Line
……と、このようになっています。当然の事ながら『CALLING ALL STATIONS』ナンバーはこのツアーでしか演奏されていないわけですし、クラシックスにしてもウィルソンによって染め変えられている。ポップなトリオ時代だけでなく、プログレ時代も幅広く、2時間でキャリアを俯瞰する名曲群の特異バージョンを楽しめるわけです。劣化ゼロなデジタル再放送マスターによって実現した「世界でも最も美しいウィルソン時代GENESIS映像」です。もちろん、今の目にも違和感の拭えない時代ではありますが、間違いなく音楽も演奏も極めてレベルが高かった。だからこそ面白く、「オフィシャル代わり」のライヴ作品も欲しくなるのです。本作は、その乾きを癒して余りある1枚。
Spodek, Katowice, Poland 31st January 1998 PRO-SHOT(UPGRADE) TVP Kultura DVB-S rebroadcast 25th April 2011
01. Land of Confusion 02. The Lamb Lies Down on Broadway 03. Calling All Stations 04. Alien Afternoon 05. The Carpet Crawlers 06. There Must Be Some Other Way 07. Domino 08. Shipwrecked 09. Firth of Fifth 10. Congo 11. Home by the Sea / Second Home by the Sea
12. Dancing With the Moonlit Knight 13. Follow You Follow Me 14. Supper's Ready (Lover's Leap) 15. Mama 16. The Dividing Line 17. Invisible Touch
Ray Wilson - lead vocals Tony Banks - keyboards, guitar, vocals Mike Rutherford - guitars, bass, vocals with: Anthony Drennan - guitars, bass, vocals Nir Zidkyahu - drums, percussion PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.115min.