さまざまな伝説・事件がひしめくロック史においても、巨大で深い黒点となった「オルタモントの悲劇」。その顛末を伝えるドキュメンタリー映画の大傑作『ギミー・シェルター』が特別バージョンでリリース決定です。「オルタモントの悲劇」……それは“1969年12月6日オルタモント・スピードウェイ”で起きた事件。この日は1969年の北米ツアー最終日に設定されたフリー・コンサートで、“ウッドストック・フェスティバル”を意識した一大野外フェスでした。20万人とも50万人とも言われる大群衆を動員したわけですが、その最中に暴動が発生。警備を担当していたヘルズ・エンジェルスのメンバーが観客を刺殺するという事件へと発展してしまいました。もともと世紀の巨大イベントだっただけにドキュメンタリーも撮影されており、1年後の1970年12月6日に映画『ギミー・シェルター』として上映されたのです。
【超極上クオリティの日本放送バージョン】悪名と言えど、歴史的に名高い音楽映画だけに公式にDVD化もされているわけですが、本作はその公式品コピーではありません。2012年に某民放局の”THE ROCK MOVIES”で特集された日本放送バージョン。その超極上エアチェック・マスターからDVD化したものなのです。もちろん、エアチェックとは言っても2012年。すでに地上波のデジタル移行も完了しているため、放送も録画も完全デジタル。劣化ゼロで記録された画質・音質は問答無用の感染オフィシャル級です。もちろん、クオリティの話は念押しに過ぎず、本作のポイントは番組の演出。映画の導入と終わりに独自の解説コーナーが設けられ、日本語字幕が付せられているのです。まず解説コーナーですが、ここでナビゲーターを務めるのはデリコの2人。約4分の尺もあるので熱い想いをぶつけてくれる……かと思いきや、実のところ半分以上が原稿の棒読みという肩すかし。その内容は適切で“ウッドストック”との対比も分かりやすく、映画に入っていくムードづくりもばっちり。ただ、せっかくロック・ミュージシャンを迎えているのですから棒読みは勿体ない気がしますし、フリートークが深まりそうなところで尺が終わってしまうのが惜しい前説です。そして映画が始まると嬉しいのが日本語字幕。これが過去最高の徹底ぶりなのです。MCやドキュメンタリー・シーンの言葉に字幕が付くのはもちろんのこと、全曲の歌詞にも対訳が付く。しかも、対訳を付けるか否かの選択も日本語センスも絶品。中には大は小を兼ねるとでも言わんばかりに「Yeah」「Baby」「Thank you」にまで対訳を付ける番組もありますが、それではマヌケに見えてしまう。それに対して本作は感覚的な言葉を華麗にスルーしつつ、意味のある言葉はささやかな一言も逃さずに日本語化しているのです。
【音楽番組史上、最大級に親切な日本語テロップ】さらに言えば、言葉にさえなっていない日本語テロップまで大量に導入。1曲1曲に曲名・作曲クレジットだけでなく、ライヴ会場と日付も付せられている。この映画で登場するライヴシーンは前半が“マディソン・スクエア・ガーデン”で、後半が“オルタモント・スピードウェイ”になる。もちろん、映画を一度通して観れば違いは歴然なのですが、初見ではMSGをオルタモントと誤解しかねない。さらに、挿入されるドキュメント・シーンでもわざわざ「マディソン・スクエア・ガーデンのバックステージ」と表示され、「Wild Horses」や「Brown Sugar」では「(early mix)当時未発表の新曲」とバージョン違いまで解説するなど、迷いなくすんなりと観られるテロップが随所に施されているのです。その日本語テロップの威力が爆発するのが、登場人物。普通、メンバーやインタビューに応える人物に紹介テロップが入るくらいですが、本作は「イアン・スチュアート(ロード・マネージャー/ピアニスト)」「ジミー・ジョンスン(スタジオのハウス・エンジニア)」など、ちょっと映っただけで言葉のない人物にまで分かる範囲でどんどん入れて行く。マイケル・ラング(コンサート・プロモーター)に至っては「ウッドストック・フェスの主催者としても知られる」と注釈まで入る親切ぶりなのです。この威力は絶大。なにしろ。この映画は再現ドラマではなくドキュメンタリー。無言でも重要な人物が大量に登場し、無言の表情自体に深い意味がある。例えば、殺人にまで発展したヘルズ・エンジェルズも「サニー・バージャー(オークランド支部のトップ)」「ジョージ・クリスティー(サンフランシスコ支部のトップ)」のテロップがなければ、ただの汚い構成員にしか見えず、彼らが登場する現場の緊迫感が伝わらないのです。あまりにも有名な歴史的映画だけに内容については割愛いたしますが、あの衝撃の内容、シーンの意味が逐一ビビッドに伝わる大傑作です。実のところ、当店で扱う映像としては珍しく地上派放送なのでCMでのカットもあり(CM自体は丁寧に削除してありますが、番組ロゴで挿入場所は分かります)、厳密には完全版ではありません。しかし、それを補って余りあるほど分かりやすく、丁寧。いつもなら邪魔にしかならない地上派の仕事ぶりが上手く作用した希有なる大傑作バージョン。
Broadcast Date: 16th October 2012 1970 documentary film directed by Albert and David Maysles and Charlotte Zwerin chronicling the last weeks of The Rolling Stones' 1969 US tour which culminated in the disastrous Altamont Free Concert.
1. VJ Intro 2. Jumpin' Jack Flash 3. Interview 4. Satisfaction 5. Press Conference 6. You Gotta Move 7. Wild Horses 8. Brown Sugar 9. Love in Vain 10. Altamont Project 11. I've Been Loving You Too Long (Ike & Tina Turner) 12. Honky Tonk Women 13. Altamont Project
14. Street Fighting Man 15. Altamont Free Concert 16. Six Days on the Road (Flying Burrito Brothers) 17. Mick Jagger 18. The Other Side of This Life (Jefferson Airplane) 19. Hells Angels 20. Stones On Stage 21. Sympathy for the Devil 22. "Who's fighting and what for?"
23. Under My Thumb 24. Street Fighting Man 25. Gimme Shelter 26. VJ Outro PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.86min.