ポール・マッカートニーは1991年に「MTV UNPLUGGED」への出演を果たしていますが、エリック・クラプトンやニルヴァーナの回と比べると意外なほど見過ごされがちなように思われます。番組自体は放送後にライブアルバム「OFFICIAL BOOTLEG」としてリリースされたものの、肝心の映像の方がソフトとしてリリースされずじまいだったことが最大の要因ではないでしょうか。番組の放送自体はテレビでしたので、アメリカでの放送から間もなくして日本にもコピーが上陸、それがブートビデオとして広く出回ったものでした。とはいえ所詮は舶来テレビ映像。向こうの人がコピーして送ってきたVHSをマスターにすれば結果として二回のダビングを経たバージョンがショップで売りに出されることになり、その段階で映像のジェネ落ち感が生じてしまうのが当時のブートビデオ・ビジネスの悲しいところ。それでも我々はありがたく見ていたものです。しかし元はMTVのテレビ映像な訳で、そうなると日本のテレビ上での放送が渇望されていたもの。そんなマニアの願いがようやく叶ったのは、アメリカやイギリスでの放送から一年が経過した1992年の夏のこと。ところが放送が地上波ではないという、微妙なハードルが設けられてしまうおまけ付きでした。ここからは私の思い出話に少しお付き合いください。当時のブートビデオ屋さんの中には「代行録画」というのを行ってくれた店があり、当然地上波でない放送の録画も請け負ってくれました。そこで1992年の夏に実現したポール版アンプラグドの日本放送の録画をお願いしたのです。もちろんS-VHSのテープ持ち込みで。これによって、マスタークオリティの映像が入手できた…としばらくは、代行録画によって手にした映像を宝物のように扱っていたのですが、そんなテープも今や20年以上の歳月を経て、すっかりカビカビ。それでも日本で放送されたバージョンだけのことはあり、21世紀を迎えるとDVD-Rでリリースされた実績がありました。それもありがたく見させてもらっていた訳ですが、先月突如としてリリースされた「UNPLUGGED: JAPANESE BROADCAST」はこれまたDVD-Rでのリリースながら、1992年日本放送バージョンを素晴らしい画質で収めていたことから、マニアの間で高い評価を受けました。それと同時に、さらなるマニアから「確かに素晴らしい画質だが、私のテープはさらに良い画質だと思う」という新たなVHSテープの提供を受ける結果にもつながったのです。こうしてマニアから提供された新たなバージョンですが、これはS-VHSテープを使って録画されたのはもちろん、何よりテープ自体のコンディションが抜群に良く、一見して「UNPLUGGED: JAPANESE BROADCAST」を凌駕するハイクオリティさにスタッフ一同圧倒されました。とにかく素晴らしい画質で、これは掛け値なしにオフィシャルレベル。確かに現行でのベストはオフィシャル3枚組DVD「ポール・マッカートニー・アンソロジー」に収められたバージョンでしょうが、そこで見られるのはたった4曲。それに今から10年前の技術でデジタル補正された画質でしたが、元々ビデオ録画である1991年のナチュラルなVHS感も魅力。そして日本放送版といえば、何といっても演奏の合間に盛り込まれたポールのインタビュー。これは「OFFICIAL BOOTLEG」のプロモーションを兼ねて91年の夏に行われたものですが、「UNPLUGGED: JAPANESE BROADCAST」リリース時にも申し上げましたように、その内容が本当に面白い。「僕もオーディエンス録音をやったことがある」、「ファン同士のテープトレードはむしろ共感できる」など、天下のポール・マッカートニーがこれほどまでブートレグに関して好意的な発言を残したインタビューは他にありません。あまりに面白いインタビューなので、91年の海外放送バージョンと違い演奏の流れが分断されたという不満を覚える人はほとんどいなかったのでは。ところが今回、同じマニアから同番組の未編集バージョンのベストコピーも提供いただきました。ポールのアンプラグド出演がマニア間で大きな話題を呼んだのは、アルバムのリリース以上に、放送から半年もしない内に全長版の映像が流出したことでしょう。インターネットもない時代によくぞ驚異的な早さで映像がリークしたものですが、同様の現象はクラプトンの回でも起きており、相当に映像の管理がゆるかったのだとしか思えません。おかげで実際の収録が二部構成で行われていたこと、第一部の序盤で演奏されたカバー曲がことごとく不採用となっていたことなどが明らかとなったのです。さらに驚くべきは、アルバムや放送でもやり直しの場面が収められていた「We Can Work It Out」がさらに何度もやり直されていて、なおかつ収録の終盤でもう一度だけ演奏されたテイクが採用されたこと、とどめはメンバーが楽器を交換してヘイミッシュ・スチュアートが歌った「Ain’t No Sunshine」までもがやり直していたという事実までもが判明。これはポールが番組内でのインタビューやMCでも力説していたように、スタジアム・コンサートではなくアコースティック・ギグだからこそできることとして、やり直しすら楽しんでいたように見受けられます。そんな未編集バージョンもマニアには当時からおなじみの映像ではありますが、DVDの時代を迎えると画質がそれに相応しいクオリティとは言えないもの、あるいは音声がモノラルに劣化してしまったバージョンまでDVD-Rレベルで出回っていました。その後、放送テイクと混ぜたベスト編集版なども登場しましたが、特筆すべきは過去のどのバージョンよりも画質が優れているということ。もちろん流出映像ですので放送版と比べたら粗い質感は否めない。それでも今回のバージョンのアッパー感、それは過去にリリースされてきた全長版映像を見たことがあるマニアなら絶対に驚かされることかと。しかも単一ソースでこのアッパーぶりというのも特筆に値します。ポール以下のメンバーが登場する前の会場から撮影がスタート、さらに各回の収録を済ませる度に出入りする彼らの姿を捉えてくれているのもドキュメントとして貴重。また放送版ではエンディング・ロールと被さってしまった「Junk」をバンドが神妙な面持ちで演奏する姿が完全に見られる点も貴重でしょう。そして何よりカットされた「The Fool」に「Midnight Special」といったカバー曲、アコースティックな編成でギターソロから「Ain’t No Sunshine」のピアノソロまで、縦横無尽な職人ぶりを見せつけるロビー・マッキントッシュの卓越したプレイも圧巻。そしてオフィシャルのアーカイブ・コレクションでアンプラグドがリリースされるであろうことは、少なくともここ5年以内にはありえません(あまりにもリリースペースが遅いので)。それどころか日本放送版がリリースされることは永遠にないはず。そんなマニアの留飲を下げてくれる日本版と完全版それぞれの映像のベストバージョンという最強カップリングが遂に!
Limehouse Television Studios, Wembley, UK 25th January 1991 PRO-SHOT(★HUGE UPGRADE!!!!!)
Disc 1 (70:53) ORIGINAL JAPANESE BROADCAST VERSION★オリジナル S-VHS録画バージョン 既発より遙かに綺麗な最高品質版 1. Be Bop A Lula 2. Interview 1 3. I Lost My Little Girl 4. Here, There And Everywhere 5. Blue Moon Of Kentucky 6. We Can Work It Out 7. San Francisco Bay Blues
8. Interview 2 9. I've Just Seen A Face 10. Every Night 11. She's A Woman 12. Interview 3 13. And I Love Her 14. That Would Be Something 15. Blackbird 16. Interview 4 17. Things We Said Today 18. Good Rockin' Tonight 19. Singing The Blues 20. Interview 5 21. Ain't No Sunshine
22. Junk PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.71min.
Disc 2 (99:17) COMPLETE VERSION 1. Intro 2. Mean Woman Blues 3. Matchbox 4. Midnight Special (Prisoner's Song) 5. I Lost My Little Girl 6. Here, There And Everywhere 7. San Francisco Bay Blues 8. We Can Work It Out (take 1) 9. We Can Work It Out (take 2)
10. We Can Work It Out (take 3) 11. Blue Moon Of Kentucky 12. I've Just Seen A Face 13. Every Night 14. Be Bop A Lula 15. She's A Woman 16. And I Love Her 17. The Fool 18. Things We Said Today 19. That Would Be Something 20. Blackbird (incl. false start) 21. Hi Heel Sneakers
22. Good Rockin' Tonight 23. Singalong Junk 24. Ain't No Sunshine (take 1) 25. Ain't No Sunshine (take 2) 26. We Can Work It Out (take 4) 27. Singing The Blues PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.99min.PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.170min.(TOTAL)