神を生み、育てた70年代UFO。その黄金時代に焦点を充てた廃盤オフィシャル映像がリリース決定です。その廃盤映像とは『HISTORY OF UFO with MICHAEL SCHENKER』。1992年に制作された公式ヒストリー・ビデオです。当時、UFOはローレンス・アーチャーを迎えて再結成しており、新作『HIGH STAKES & DANGEROUS MEN』もリリース。本作は、にわかに注目が集まってきたタイミングで制作されたわけですが、当時の音楽ビデオの宿命であっと言う間に廃盤になりました。21世紀になってからUK版ビデオ『TOO HOT TO HANDLE (1969-1983)』と同タイトルのDVDもリリースされましたが、内容が大幅に差し替えられていました。それに対し、本作は当時リリースされた日本盤レーザーディスクからストレートに復刻DVD化。オリジナル版通り約98分仕様のヒストリー作品なのです。そんな本作は、一風変わったヒストリー作品でもある。ライヴ・プロショットやプロモクリップといった貴重な演奏シーンとインタビューで構成された内容は形式的には定石通りなのですが、実際にはグッと音楽寄り。ほぼフル演奏の曲が多く、その合間に短いインタビューが差し込まれる感じなのです。そして、そのインタビューが微妙。序盤はUFOとマイケルの出逢いや言葉が通じないジャム・セッションのエピソードが面白いのですが、その後はいきなり『新たなる殺意』やマイケル脱退まで話が飛んだり、ヒプノシスやプロデューサー、さらにポール・チャップマンの話題になったりと時系列もグチャグチャ。果ては何の脈絡もなく「ところでThe Coming Of Prince Kujukuという曲は……」と、唐突にミック・ボルトン時代になったりするのです。本稿に目を留められる方なら基礎知識がシッカリされているので問題ないでしょうが、本作でUFO史を学ぼうという方はチンプンカンプンになること間違いナシです。また、語り部も微妙。登場するのは当事者3人(フィル・モグ/ピート・ウェイ/マイケル・シェンカー)と、ファンを自認する後輩4人(ジョー・エリオット/リック・サヴェージ/フィル・コリン/スティーヴ・ハリス)と、かなり手様にまとめられている。後輩1人ひとりは真摯にUFO愛や受けた影響を語ってくれて微笑ましいのですが、唐突な編集によりファッションや曲の話が雑多に飛んでしまう。その結果、あちこちに美辞麗句が散りばめられているばかりで「何となく褒めたいのは分かるけど、何を伝えたいのかサッパリ」という構成になっているのです。何だかお薦めしているのか違うのか分からなくなってしまいましたが、もちろん本作には本作なりの見どころがキッチリあります。それは、演奏シーンそのもの。実のところ、70年代ラウンドハウス公演やROCKPALASTなど、マニアにはお馴染みの映像なのですが、そのクオリティが美麗。大定番映像の数々が文字通りのオフィシャル・クオリティで楽しめるのです!そして、その定番映像とは何か。ジャケットの曲名クレジットではいつの演奏家分かりませんし、インタビューにチョットだけ挿入された曲も紛れている。ここでは、ほぼ完奏されている曲だけピックアップして整理してみましょう。マイケル・シェンカー時代・1975年12月18日ラウンドハウス公演(4曲):This Kids/Out In The Street/Shoot Shoot/C’mon Everybody・1977年6月12日ラウンドハウス公演(3曲):Lights Out/Too Hot To Handle/Let It Roll・その他(2曲):
Only You Can RockMe(PV)/Cherry(PV)ポール・チャップマン時代・1980年11月29日ドルトムント公演(ROCKPALAST2曲):Lettin' Go/Mystery Train・1979年OLD GREY WHISTLE TEST(1曲):Doctor Doctor その他・ミック・ボルトン時代:The Coming Of Prince Kujuku(PV)
・ローレンス・アーチャー時代:Borderline(Live PV)/Running Up The Highway(Live PV)/Backdoor Man このようになっています。あくまでも1曲1曲独立させて合間にインタビューも挿入される編集ではありますが、大定番プロショットがかなりの分量で公式化されている。いっそのこと、各映像をフルで収録してくれれば永久保存プレス化だったのですが……。そんな中で思わずつっこまずにいられないのが「Only You Can Rock Me」「Cherry」のビデオ・クリップ。ほとんどの映像が最高峰クオリティなのですが、この2曲に関してはダビング痕まみれで超・劣悪。それこそVHS時代のブートレッグ並でして「公式なのにコレ!?」と驚くレベル。まったく、90年代初期の映像ソフトは油断できません。ついで(?)にもう1つツッコミたいのがローレンス・アーチャー時代の3曲でしょう。冒頭で述べた通り、本作はアーチャー時代にリリースされたわけですが、実はインタビューにはアーチャーの「ア」の字も出てこない。この3曲についても解説は一切なく、『HIGH STAKES & DANGEROUS MEN』を持っていないと「誰の曲?」な状態なのです。映像自体は素晴らしく、現在では貴重な見どころですらあるのですが……。再びお薦めしているのか分からなくなってきましたが、肝心要の映像クオリティと音楽の質がとてつもなく高いのは間違いありません。その上で、怪作編集ぶりさえもが時代のエンターテインメントになってしまう1枚なのです。90年代初頭だからこそあり得た極上の、そしてチョット可笑しいオフィシャル作品。
Taken from the original Japanese Laser Disc (TOLW-3118) (97:41)
1. Too Hot To Handle 2. This Kids 3. Out In The Street 4. Shoot Shoot 5. C'Mon Everybody 6. Only You Can Rock Me 7. Love To Love 8. Doctor Doctor 9. Cherry 10. Lettin' Go 11. Mystery Train 12. Lights Out 13. Too Hot To Handle 14. Rock Bottom 15. Let It Roll
16. The Coming Of Prince Kujuku 17. Borderline 18. Running Up The Highway 19. Backdoor Man 20. This Kids PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.98min.