1964年のワシントン公演と並んで演奏内容の充実ぶりが際立つビートルズのライブ映像と言えば1965年のパリ公演。奇しくもワシントンと同様に白黒のビデオカメラで撮影され、当時としては見やすい画質であったという共通点もある。しかしワシントンの方がここ十年で飛躍的な画質の向上とアイテムに恵まれたのに対し、パリの方は近年において足踏み状態だったように思えます。曲順がめちゃくちゃに編集された上に「I Feel Fine」がカットされた放送バージョンはVHSブートの時代からショップで入手できるほどの定番映像ではあったものの、元がフランスのテレビで放送された映像ですので、ヨーロッパ固有のPALとNTSCという壁に阻まれて画質がイマイチなものばかりでした。しかし90年代に入るとVHSのダビング技術が向上したこともあり、それまでと比べて飛躍的に画質が向上しました。さらにこの映像は枝分かれてして放送バージョンだけでなく、曲順が編集されていない状態で最後に「I Feel Fine」が収録されているというバージョンも広まりました。後者のバージョンを手に入れたマニアも多いのでは。ところがDVDの時代を迎えるとパリ公演の映像の画質は足踏み状態となり、むしろオフィシャル「ANTHOLOGY」の中で使われた「I’m A Loser」や「Everybody's Trying To Be My Baby」の演奏シーンで最高画質バージョンが登場します。とはいっても60年代前半ヨーロッパでの白黒ビデオ映像です、ブルーレイの時代にリリースされた「1+」に採用された「A Hard Day's Night」のシーンも音声の方はテンポを整えたり間奏にスタジオテイクを重ねたりと、相当に手を加えていたのに対し、映像の方はほとんどいじられていなかったのという。よってマニアでなくとも「ANTHOLOGY」レベルの画質でパリ公演の全編を見てみたい…というのが世界中のファンの願いだった訳ですが、2020年ようやくそんな思いが叶えられる時が来ました。マニアの夢を叶えてくれたのはマニアの中のマニアであるLord Reith。今回公開してくれたのは、彼がコア・トレーダーから入手したというベターコピー。それはMPEG-1形式で渡されたとのことでしたが、確かにVHSのアナログ・ジェネレーションを経由した過去のバージョンよりもはるかに画質が良い。Lord Reithはそれを単に公開するだけでなく、ノイズの入る個所を可能な限りアジャストしてみせ、MPEG-1の欠点であるフレームレートが低い問題もフレーム補間処理でなめらかな60fpsにレストアされています。さらに「I Feel Fine」の画質や位置までしっかりとレストア。まだ同曲でノイズの入る個所があるのは惜しまれますが、全体的な画質は飛躍的向上。これぞアッパー版と呼ぶに相応しいレベル。音声も古い既発ソースまで立ち返りPyramid盤「Live In Melbourne And Paris」をベストソースとしてリマスターし差し替えられています。レストアされたオーディオもこれまたお見事!今回こうして「ANTHOLOGY」レベルの画質で遂にパリ公演が見られるようになった訳ですが、本当にこの日のビートルズは素晴らしい。メンバー全員が余裕溢れるパフォーマンスぶりを見せてくれている様を捉えてくれているのがクリアネスに長けたビデオ映像ならでは。これが二か月後のアメリカになるとスタジアムでスーパースターダムへと昇り詰める訳ですが、まだパリではまだ集客動員数が5000人にも満たない会場でコンサートができたことが大きい。メンバーがステージ上で自分たちの演奏がはっきり聞き取れている状況で演奏している様が映像の端々から見て取れますし、だからこそジョンは「I’m A Loser」を歌いながら一瞬おどけた仕草を見せることができたのでしょう。一方ポールは「Can't Buy Me Love」で曲の展開を無視して合唱する観客の盛り上がりを前に苦笑しながら歌う場面が何とも微笑ましい。そんな観客が盛り上がりまくりつつも、単なる絶叫でなく演奏を楽しんでいる様子が捉えられた最高の場面が「Baby’s In Black」。ワルツ調の演奏に合わせて体を左右に揺らす客席の一体感は他のビートルズ・ライブ映像にはない感動的な光景。そして今回のリリースに際し、ボーナスにはパリ公演の次に残されたビートルズのテレビ・ライブ映像である「BIG NIGHT OUT」のベスト・バージョンを独自に収録。こちらも「ANTHOLOGY」で一気にメジャーになったテレビ出演であると同時に、近年は画質の良い全長版がおなじみなものでもある。以前と同じように今回もタイムコード入りのバージョンなのですが、は元々画質がベストなコピーを入手した上でリマスターしたことで過去最高レベルを実現。既発盤では映像が縦に伸びていましたが、本タイトルでは正常な画面比で収録されています。さらに音声は「LIVE UPGRADES」にも収録したMasterJediリマスターに差し替えることでこちらも過去最高のベストソースに仕上がっています。こちらは渡米を直前に当時の新曲を初めてライブ演奏してみせた貴重な出演となった訳ですが、中でも「I’m Down」はジョンのVOXオルガン肘奏法がのちのアメリカと比べてなめらかに行かないのが面白い。おまけに番組のエンディングでは出演者のダンスにビートルズが付き合っているというのも貴重。このボーナス収録によって渡米前のビートルズ65年ライブ映像における最強カップリングが実現したのです。とにかくメインのパリの画質向上には目を見張るばかり。公開時に色々と手を加えられていたシェア・スタジアムとは違う、65年最高の純生ライブ映像を最高画質で心ゆくまでお楽しみください。
"Les Beatles" Broadcast on La Deuxieme chaine on 31st October 1965 from 7.30 - 8.00 pm Palais Des Sports, Paris, France 20th June 1965 (Evening Show) "Blackpool Night Out" Broadcast on ABC Television (UK) on 1st August 1965 from 9.10 - 10.05 pm
ABC Theatre, Blackpool, England UK 1st August 1965 (50:51)
"Les Beatles" Broadcast on La Deuxieme chaine on 31st October 1965 from 7.30 - 8.00 pm Palais Des Sports, Paris, France 20th June 1965 (Evening Show) 1. Introduction 2. Twist And Shout 3. She's A Woman 4. I'm A Loser 5. Can't Buy Me Love 6. Baby's In Black 7. I Wanna Be Your Man
8. A Hard Day's Night 9. Everybody's Trying To Be My Baby 10. Rock And Roll Music 11. I Feel Fine 12. Ticket To Ride 13. Long Tall Sally
"Blackpool Night Out" Broadcast on ABC Television (UK) on 1st August 1965 from 9.10 - 10.05 pm ABC Theatre, Blackpool, England UK 1st August 1965 14. Introduction 15. I Feel Fine 16. I'm Down 17. Act Naturally 18. Ticket to Ride 19. Yesterday 20. Help! 21. Instrumental Ending
PRO-SHOT B&W NTSC Approx.51min.