英国の“THE OLD GREY WHISTLE TEST”や米国“DON KIRSCHNER'S ROCK CONCERT”と並ぶ、クラシック・ロック映像の名門番組『BEAT-CLUB』。そのギタリスト特集がリリース決定です。『BEAT-CLUB』は、まさにロック史の秘宝庫。1965年の開始以来、さまざまなバンド/アーティストが出演しては貴重なパフォーマンスを披露してきました。画期的だったのは、早くから生演奏にこだわっていたこと。番組制作の手間と予算を考えれば尺もミスも読み切れない生演奏より、レコードに合わせてマイムさせる方が遙かに安全。しかし、この番組は60年代からアーティスト達にライヴ演奏させてきたのです。それだけなら“OGWT”や“DKRC”にも言えることですが、『BEAT-CLUB』には映像処理にもこだわっていました。シンプルにマルチカメラで見せるだけでなく、アーティストのカットをサイケに変形させたり、イメージ映像を被せたり。そうした趣向は80年代のMTVで一世を風靡するPVの先駆けだったとも言え、演奏シーンだけの他番組よりも濃厚に時代感を醸してくれるのです。そんな『BEAT-CLUB』の先進精神は、ソフト化にも活かされていました。80年代のビデオデッキ普及と共に「音楽映像を買う」という需要が急拡大。まずはバンド単位のライヴ映像やクリップ集が人気を博したのですが、『BEAT-CLUB』は番組単位で持ちネタをソフト化。年代別やジャンル別など、さまざまな切り口で膨大なアーカイヴを作品化していった。これもまた、ビデオ・マガジンを先取りしていたのです。やや前置きが長くなってしまいましたが、本作もそんな『BEAT-CLUB』の映像ソフトの1つ。「ギターヒーロー」をテーマにしたプロショット集『GUITAR HEROES』を日本盤レーザーディスクから精緻に復刻した1枚なのです。ただし「ギターヒーロー」というコンセプトはくせ者で、年代によってラインナップが大きく変わるテーマです。本作の場合は、『BEAT-CLUB』がもっとも得意とする「60年代半ばから70年代初頭」。マディ・ウォーターズやB.B.キングからジミ・ヘンドリックス、ジェフベック、ロリー・ギャラガーといったクラシック・ロックに焦点が当てられています。構成はランダムで撮影年も出身国もアチコチに飛ぶタイプ。ここでは分かりやすく時系列に並べ直してご紹介しましょう。1967年(2曲) 本作で最も古いのは1967年のTHE WHOとジミヘン。本作はギタリストに焦点を充てていますので、アーティスト・クレジットはTHE WHOではなく「ピート・タウンゼンド」になっています。1967年と言えば、THE WHOは『A QUICK ONE』時代ですし、ジミは『ARE YOU EXPERIENCED』リリースの2ヶ月前。まだシングルしか出しておらず、成功の階段を昇り始めたばかりの革命児の姿を目撃できます。
1968年(1曲) この年に出演したアーティストから選ばれたのは、御大B.B.キング。当時はABC/BLUESWAY時代で、『LUCILLE』をリリースした頃。この後、ブルースの王は『LIVE & WELL』でファンク・ブルースに開眼し、「The Thrill Is Gone」で再ブレイク。その直前の姿なのです。1969年(2曲) 英国ロック革命の1969年からは、アルヴィン・リーとエリック・クラプトンの登場です。もちろん、当時の彼らは個人ではなくグループの一員。アルヴィンは勿論TEN YEARS AFTERとして、クラプトンはDELANEY & BONNIE & FRIENDSとして出演していました。1969年というだけでも美味しいわけですが、さらにつっこんでチェックしてみると、TYAは大代表作『SSSSH』発売の2ヶ月後。DELANEY & BONNIEも『ON TOUR WITH ERIC CLAPTON』が録音されるわずか1週間前という映像。まさに次々と名作が生まれいった時代。その映像を極上クオリティで楽しめるのです。1970年(4曲) いよいよ、絢爛の70年代が幕開け。本作でも一番厚く扱われており、4組が収録されています。しかも量が多いだけではなく、幅も広い。『FATHERS AND SONS』『THE LONDON SESSIONS』といった共演作が話題を呼んでいた頃のマディ・ウォーターズや名盤『JOHNNY WINTER AND』の制作を始めようとしていたジョニー・ウィンターといったブルース勢、ピーター・フランプトン&スティーヴ・マリオットが並び立つHUMBLE PIE(本作ではフランプトン名義でクレジットされています)。SANTANAも大代表作『ABRAXAS』を完成させながらも発売を待っていたという、一番オイシイ時期に出演していたのです。1971年(1曲) この年からはTASTEを解散させ、ソロとして独り立ちしたロリー・ギャラガーが出演。本作はモノクロ映像も多かったりするのですが、この頃になるとカラーの発色もギラギッラで映像処理も凝ってきている。『DEUCE』リリースの1ヶ月後に出演しており、「Used To Be」で大熱演を披露してくれます。1972年(2曲) 本作で一番新しいのが1972年。コージー・パウエルも在籍していた第二期JEFF BECK GROUPとチャック・ベリーが出演しています。ジェフは『ORANGE ALBUM』、チャックは『THE LONDON SESSIONS』のリリース1ヶ月前での出演でした。アーティスト/バンド単位で言えば、今さら感もある定番中の大定番映像ばかり。しかし、こうして時代の断面切りにすると「この人も出演していたのか!」と驚くと共に、うねりを上げて蠢いていた時代の胎動まで感じ取れるのです。ロックが最もロックらしかった60年代末/70年代初頭へ連れて行ってくれるタイムトラベル映像集。
Taken from the original Japanese Laser Disc (SM048-3221) (51:02)
1. Intro 2. Happy Jack (Pete Townshend) 3. Good Morning Little Schoolgirl (Alvin Lee) 4. Used To Be (Rory Gallagher) 5. Sad Bad Of Shaky Jake (Peter Frampton) 6. Hey Joe (Jimi Hendrix) 7. Poor Elijah / Good People (Eric Clapton) 8. Definitely Maybe (Jeff Beck)
9. Let It Rock (Chuck Berry) 10. Johnny B. Goode (Johnny Winter) 11. Heartbreaker (B.B. King) 12. Incident At Neshabur (Santana) 13. Honey Bee (Muddy Waters) 14. Highlights Of Beat Club PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.51min.