本作が撮影されたのは「1980年12月20日ドルトムント公演」。西ドイツの名物イベント“ROCKPOP IN CONCERT”に出演した際のマルチカメラ・プロショットです。このイベントは1978年から1989年にかけ、ZDF(第2ドイツテレビ)で放送される事を前提に開催されていたフェス。開催年によって日数も異なりますが、本作の1980年は1日だけで、ROXY MUSICはDIRE STRAITSやTALKING HEADS、マイク・オールドフィールドを従えてのヘッドライナーでした。また、彼ら自身の歴史では『FLESH AND BLOOD』時代になる。まずは当時のスケジュールを振り返ってショウのポジションを確かめてみましょう。1980年
《5月23日『FLESH AND BLOOD』発売》・5月29日-7月12日:欧州(37公演)・7月23日-8月2日:英国#1(9公演)・12月20日:ROCKPOP FESTIVAL出演 ←★本作★ 1981年・1月13日-18日:英国#2(6公演)・2月4日:メルボルン公演 これが1980年/1981年のROXY MUSIC。北米侵攻の色気も見せず、最後のメルボルン公演以外はすべてヨーロッパのみ。ただし、本作のドルトムント公演は移動とステージを繰り返す「ツアー」の一環ではなく、年末に単発でイベント出演した特別公演でもありました。そんなショウはプロショットで撮影され、“ROCKPOP IN CONCERT”のあらゆるステージと同じく無数の既発を生み出してきた大定番。実際、そのクオリティは定番となるに相応しい。“ROCKPOP IN CONCERT”というと年によってはデジタル再放送が実現する事もありますが、1980年の本作はアナログ放送版。そのため、デジタル基準の現在では「完全オフィシャル級!」と喧伝する事はできないものの、当時基準だったら大声で叫んでも良い。画質的にはアナログ的な甘さはあるもののマスター鮮度は絶品で、ヨレや歪み、白線ノイズの類もほとんどなければ、発色も極めてビビッド。しかも、デジタル加工で色彩を上げているわけではないのでナチュラル。まさに、当時の放送電波が時空を超えて届いたかのような映像美なのです。そんなクオリティで描かれるのは、お洒落でスタイリッシュに生まれ変わった再始動時代のショウ。80年代の映像というと公式作『THE HIGH ROAD』が基準になりますが、本作は別ツアーですのでセットは異なる。ここでは比較しながら整理してみましょう。70年代(6曲)・フォー・ユア・プレジャー:
The Bogus Man(★)/Do The Strand(★)/Editions of You・ストランデッド:A Song For Europe・カントリー・ライフ:The Thrill Of It All(★)・マニフェスト:Trash(★)80年代(5曲)・フレッシュ・アンド・ブラッド:Rain, Rain, Rain(★)/Flesh And Blood(★)/Oh Yeah(★)/
My Only Love・カバー:Jealous Guy(ジョン・レノン)※注:「★」印は『THE HIGH ROAD』では観られない曲。……と、このようになっています。クラシックスから最新ヒット「Jealous Guy」まで幅広く取りそろえつつ、要所要所にレア曲も散りばめられた美味しいセット。前作『MANIFESTO』の「Trash」も再始動時代ならではですが、特に貴重なのは(当時の)新曲「Rain, Rain, Rain」「Flesh And Blood」。正真正銘、“FLESH AND BLOOD Tour”だけの限定曲であり、現在でも指折り数えられるほどしか演奏記録がない激レア曲なのです(その貴重さゆえ、この2曲だけが公式DVD『THE THRILL OF IT ALL』にも採用されました)。本作の後、数公演をこなして栄光の『AVALON』を生み出す事になるROXY MUSIC。そんな刹那のポテンシャルをマルチカメラ・プロショットで楽しめる大定番映像です。80年代の彼らを語る上で外す事のできない重要作。Westfalenhalle, Dortmund, Germany 20th December 1980 PRO-SHOT(60:12)
1. Intro 2. The Bogus Man 3. Trash 4. Rain, Rain, Rain 5. Flesh And Blood 6. Oh Yeah 7. A Song For Europe 8. My Only Love 9. The Thrill Of It All 10. Do The Strand 11. Editions Of You 12. Jealous Guy
Bryan Ferry - vocals, keyboards Phil Manzanera - guitar Andy Mackay - saxophone Gary Tibbs - bass (1979-1980) Michael Dawe - drums Neil Hubbard - guitar (1980-1983) David Skinner - keyboards (1979-1983) PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.60min.