伝説バンドCREAMのリズム隊とゲイリー・ムーアが組んだ泡沫のユニットBBM。そのマルチカメラ・プロショットがリリース決定です。そんな本作が撮影されたのは「1993年11月2日ケルン公演」。ジャック・ブルースの50歳を祝うアニバーサリー・コンサートで撮影されたマルチカメラ・プロショットです。BBMはアルバム『AROUND THE NEXT DREAM』とわずか13公演のヨーロッパ・ツアーだけで歴史の闇に消えて行った幻のプロジェクト。しかし、本作はその正式始動の少し前。良い機会でもありますので、短いわりにやや複雑なバンド・ヒストリーもおさらいしましょう。まずは、その資料となる当時のスケジュールをジャック視点でまとめてみましょう。1993年・1月12日:CREAMでロックの殿堂セレモニー出演《2月23日『SOMETHIN ELS』発売》・3月21日ー27日:北米(6公演)・3月30日ー4月5日:欧州#1(3公演)・6月28日ー8月14日:欧州#2a(10公演)*8月15日:エスリンゲン公演(ムーア/ハズバンド参加)・8月17日+9月4日:欧州#2b(2公演*11月2日+3日:欧州#3(2公演) ←★ココ★《BBM結成》1994年《5月17日『AROUND THE NEXT DREAM』発売》*5月19日ー7月3日:欧州#4(13公演)《BBM解体》※注:「・」印はジャック・ブルースのソロ公演やCREAMの再結成パフォーマンス。「*」印はジャックとゲイリー・ムーアの共演公演。これが1993年/1994年のジャック・ブルース。1993年1月にCREAMがロックの殿堂入りを果たしますが、再結成はそのイベント1回限り。ジャックは完成済みだったソロ作『SOMETHIN ELS』をリリースし、ツアーに出発します。しかし、その欧州ツアー中にギターのブルース・サラセノが脱退。その代役として呼ばれたのがゲイリー・ムーアで、ここで両雄の再会が実現しました(ハッキリと共演が確定しているのはエスリンゲン公演だけですが、その前後にもショウが詰まっており、他に数公演あったかも知れません)。もともとゲイリーは80年代のセッション活動でジャックとは旧知の仲でしたが、この仕事を通じてさらに意気投合し、両名は共演するユニットの結成に向けて動き始める。ゲイリーはこの時ジャックに対してジンジャー・ベイカーの参加を熱望しましたが、ジャックとジンジャーの折り合いの悪さは当然周知の事実。それでもなお、CREAMに憧れを抱いて育ったゲイリーは諦めきれず、「是が非でも」との嘆願。その結果、ジャックの50歳アニバーサリー・コンサート(欧州#3)にジンジャーを招待。それをきっかけとしてスーパー・ユニットBBMが誕生したわけです。この「欧州#3」はジャックの公式ライヴアルバム『CITIES OF THE HEART』にもなったわけですが、本作は2日間のうち「11月2日」。つまり、本作は伝説の3人が揃った最初のステージ(「Politician」ではピート・ブラウンもゲスト参加しています)。BBMでありつつ、BBMとは名乗っていないタイミングのプロショットなのです。TV放送プロショットだけに当時から定番として知られる映像で、本作はそのベスト・マスターからDVD化されたもの。時代柄アナログ画質なのでデジタル基準の現在では「完全オフィシャル級!」と喧伝するわけにはいきませんが、当時であれば全力で叫びたい極上マスターです。そして、肝心なのはパフォーマンスの中身。BBM自体もCREAM色豊かでしたが、正式始動前の本作は、さらに濃厚。CREAMのナンバーを4曲収録しており、その総てで絶品のインタープレイが炸裂しています。CREAMから四半世紀、伝説を目指して登り詰めたギターヒーローと本物リズムセクションのせめぎ合い。本作は、それを90年代の映像テクノロジーがしっかりと収めきっているのです。恐らく、このショウに手応えを感じたからこそBBMへと発展したのでしょうが、それも納得のインタープレイです。しかも、その映像だからこそ熱演ぶりも鮮烈。常々「顔で弾く」と言われるほど表情豊かなゲイリーですが、この日はいつにも増して嬉しそう。自らの力で世界にその名を轟かせた彼ですが、伝説のリズムセクションを前にファン心理丸出しです。その後、正式に始動した彼らは前述のようにアルバム『AROUND THE NEXT DREAM』と欧州ツアーを実行。しかし、ジンジャーには自身のバンドがあり、またジャックとの関係もなお修復し難いものがあった。ツアーもキャンセルが続き。結果として実現したギグは予定された23公演中の13回のみで自然消滅してしまいました。英国ロック史の英雄が一堂に集い、「90年代のCREAM」を体現したBBM。ヴィジョンが明確だからこそ、顔ぶれの豪華最上の音楽を作り出せた希有なるユニットでした。その夕をマルチカメラ・プロショットで目撃できる貴重な映像作品。Live at E-Werk, Koln, Germany 2nd November 1993 PRO-SHOT (30:36)
1. N.S.U. 2. Sitting On Top Of The World 3. Politician 4. Spoonful Jack Bruce - Bass & Vocals Gary Moore - Guitar Ginger Baker - Drums PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx. 30min.