ローリング・ストーンズ1981年ツアーは10月のレグからいくつかの公演のスクリーン用映像が流出しています。一番有名なのは14日のシアトル、キングドームでしょうが、もう一つの10月スクリーン映像が28日のヒューストン、アストロドーム。映像だけでなく音源のリリースまで充実していたキングドームに対し、こちらは近年見過ごされがちでした。ブートビデオ時代にはキングドームと並ぶ10月スクリーン映像だったことを考えると、DVD時代に入ってキングドーム共々流出映像にありがちな粗さがアイテムを生み出さなくなってしまったのでしょうか。最初に触れたように、元がスクリーン用に撮影された映像の流出モノですのでマスタークオリティとまではいきません。しかし十分に楽しめる画質のバージョンを元にしています。今まで出回っていたバージョンは流出の段階で若干ながらピッチが下がってしまっていたことが多く、まずはそこをアジャスト。それにヒューストン映像といえば冒頭二曲での音割れという現象があります。近年、同日のビデオ・フィードを経由しないPAアウトのサウンドボード録音が発掘されてえり、それと差し替えるという選択肢もありましたが、何と言ってもキースのギターが弱めというバランスの大きな問題があった。キングドームがそうだったように、ビデオ・フィードのサウンドボードはキースのギターの存在感が魅力の一つでもある。そこで今回のリリースに当たっては音声も元の映像のものをそのまま生かすことにしました。そして映像自体がキングドームよりも見やすい仕上がりだという長所も見逃せません。同様のスクリーン映像を元にしたサウンドボード・アルバムがリリースされるレッド・ツェッペリン77年の映像もそうだったように、キングドームのスクリーン映像には曲間になると場つなぎで数分前の動きをスローモーションで流すという演出が備わっています。これが今となっては古臭さ全開なのですが、ヒューストンにはそうした装置がなく、終始ライブそのものをストレートに捉えてくれていてとても見やすいのです。さらにキングドームの映像や音源が証明していたように、10月のレグでは勢いや奔放さが輝きを放ってえり、映画「LET'S SPEND THE NIGHT TOGETHER」に採用されていた11月のメドウランズなどよりもこちらの方がストーンズらしくてイイと感じるマニアが少なくないのでは。それが81年ツアーの最定番である12月のハンプトンになるとツアー終盤に相応しい完成度へと昇格しているのですが、ストーンズならではのルーズさがこのツアーでも一番輝きを放っていたのは間違いなく10月。まずメンバーのルックスからしてハンプトンの時ほどオシャレに着飾ってえらず、誰もが知る81年ツアーのファッションで登場します。ミックに至っては黄色いタンクトップを着用していたことから、彼が上着を脱ぐと全身イエローマンと化しているほど。それ以上に特筆すべきはこの日の演奏内容。終われそうで終われない「Neighbours」はこの日の迷演としてマニアにはおなじみですが、他にも見どころの連続。同じように終わりそうで終われなかった「Let Me Go」ですが、映像で見ればミックがまだ客席を駆け回るサービスがなく、代わりに演奏中に彼がロニーにベロチュー(爆笑)を迫っています。さらに「Twenty Flight Rock」を終えたところではキースがミックとじゃれ合うという、81年ツアーのライブアルバム「STILL LIFE」の写真で見られた光景とそっくりな絡みが捉えられているのもイイ。それと同時に、よく見るとこの日のキースのファッションが奇妙であることに気付かれるはず。ショーが始まって数曲後、彼が上着を脱ぐと腰の周りにコルセットのようなものを巻いているのです。しかしそれだけではありません。この日のキースが下げるギター・ストラップで肩に当たる部分には、どれもクッションのようなモノがテープで付けられているのが判ります。しかしキングドームでのキースにこのような装備はなく、明らかにこの日の特別仕様であったのでは。恐らくキースは腰をやってしまったのでしょう。これはぎっくり腰か?とはいえ、そうしたケアの甲斐あって、ルックス的にはちょっと奇妙ながら、いつも通りのキビキビとしたステージ・アクションでギターを弾いてくれているのが頼もしい。だからこそ、この日の音声はキースの音が重要となる訳でもあるのですね。そしてこの映像は「Brown Sugar」が未収録となっていますが、えそらくビデオの掛け替えのタイミングだったと思われ、同曲の未収録が映像にて解消されることはこれからもないでしょう。この点を差し引いても10月のやんちゃで奔放なストーンズの姿を捉えたプロショット映像は見応え十分。近年見過ごされてしまったせいで存在すら知らないDVD世代のマニアにこそ、じっくりと楽しんでいただきたいストーンズらしさ全開の81年ライブのプロショット映像です。ピッチが若干速い為、修正しました。(1% - 半音の約19%速い)Houston Astrodome, Houston, TX, USA 28th October 1981 PRO-SHOT (128:17)
1. Take The 'A' Train 2. Under My Thumb 3. When The Whip Comes Down 4. Let's Spend The Night Together 5. Shattered 6. Neighbours 7. Black Limousine 8. Just My Imagination 9. Twenty Flight Rock 10. Let Me Go 11. Time Is On My Side 12. Beast Of Burden 13. Waiting On A Friend
14. Let It Bleed 15. You Can't Always Get What You Want 16. Band Introductions 17. Little T&A 18. Tumbling Dice 19. She's So Cold 20. All Down The Line 21. Hang Fire 22. Miss You 23. Start Me Up 24. Honky Tonk Women 25. Jumpin' Jack Flash 26. Satisfaction 27. The Star-Spangled Banner
PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.128min.